トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)

まだ買える伝説 2025.10.14 試乗記 今尾 直樹 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
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余命1年余りでの改良

A90型スープラ最終進化型のステアリングを握ったのは、東名高速の足柄SAからだった。室内のタイトさにあらためて驚いた。これぞ骨太の本格スポーツカー! 直前まで広々とした軽自動車に乗っていた、ということもある。着座位置がことさら低く、窓の面積が小さく感じる。後方の視界は限られ、さながら穴倉に入ったごとくで、気を引き締め直さないといかん。と思う。

左足でクラッチを踏み込む。3ペダルの6MT仕様だからだ。このペダル、グイッと重くて、足ごたえがある。なんたる剛性感! 2025年春に一部改良が施されたA90型スープラRZ、すなわち直6モデルの、将来希少となるであろう6MTは手ごわそう……というのが第一印象だった。個人的にA90の6MTは初体験ということもあった。

もちろん筆者のいちばんの興味は、2025年3月に発表された一部改良でA90スープラ最終型がどうなったか? ということにあった。2019年に17年ぶりの復活を遂げたスープラは、2026年春の生産終了が発表されている。これにあわせてトヨタは国内150台限定の特別仕様車“A90ファイナルエディション”を発売するのと同時に、RZグレードの一部改良を施した。余命1年ちょっとしかないにもかかわらず、である。

この異例ともいえる一部改良の理由は、豊田章男会長のA90スープラの発売時だったかに述べたことばから推しはかることができる。トヨタがスポーツカーをつくるのは、「伊勢神宮の式年遷宮みたいなもの」と豊田会長は言った。20年ごとに社殿を新しくする式年遷宮同様、トヨタは技術を継承するためにスポーツカーをつくり続ける、と。であるなら、A90スープラの最終進化型は次のA100スープラ、あるいはスープラとはまったく別の、次世代のスポーツカーの方向性を示唆している……と考えられるではないか。

国内では2019年5月に発売された5代目「トヨタ・スープラ」。先代のA80型の販売終了から17年を経ての復活だった。
国内では2019年5月に発売された5代目「トヨタ・スープラ」。先代のA80型の販売終了から17年を経ての復活だった。拡大
A90型が画期的だったのはBMWとの共同開発だったこと。「Z4」の兄弟車にあたり、マグナ・シュタイヤーのグラーツ工場でそろって生産されている。
A90型が画期的だったのはBMWとの共同開発だったこと。「Z4」の兄弟車にあたり、マグナ・シュタイヤーのグラーツ工場でそろって生産されている。拡大
今回の試乗車は3リッター直6ターボエンジン搭載の「RZ」グレード。デビュー当初の最高出力は340PSだったが、1年後の2020年に387PSに引き上げられている(限定車“A90ファイナルエディション”では441PSにまで到達)。
今回の試乗車は3リッター直6ターボエンジン搭載の「RZ」グレード。デビュー当初の最高出力は340PSだったが、1年後の2020年に387PSに引き上げられている(限定車“A90ファイナルエディション”では441PSにまで到達)。拡大
フロントフェンダー上部までカバーするため、ボンネットは巨大だ。
フロントフェンダー上部までカバーするため、ボンネットは巨大だ。拡大