トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)
納得の力作 2025.10.21 試乗記 「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。カーマニア待望の「GRスポーツ」
2020年7月のタイでの発売を皮切りに、翌2021年9月に国内発売されたカローラ クロスは、現行カローラシリーズでは最後発で、内装もほかよりちょっと安普請だった。しかも、それまでのカローラでは全車ダブルウイッシュボーンだったリアサスペンションが、クロスではシンプルなトーションビーム(FWD車のみ)に変更されていたこともあって、当初のクロスは、どこか、新興国市場向けの廉価商品っぽかったのは否定しない。
こうして最初は“主流じゃない感”がただよっていたカローラ クロスだが、フタを開けてみれば大ヒット。今や日本でもカローラ全体の半分以上を占める。しかも、現在は日本にアジア、北米、中南米、アフリカ、中東でも販売中で、欧州では、実質同クラスの「C-HR」(の2代目)と並行販売されるカローラ クロスは、すっかりカローラの大黒柱である。
そんな大黒柱が安普請のままではマズいということか、あるいは望外のヒットで開発予算が増えたのか、“クロス”の市場投入後の改良メニューは、ほかのカローラより明らかに手厚い。国内デビュー後で初となる2023年の改良では、高減衰接着剤や高剛性アクスルベアリングの採用、サスペンションの低フリクション化と再調律などがおこなわれたと思ったら、国内2度目となる2025年5月の改良ではさらに大きく手が入って、カーマニア待望のGRスポーツも追加されたわけだ。それが今回の試乗車である。
同じGR物件でもガチ勢といえる「GRヤリス」や「GRカローラ」などの開発は、基本的にGRカンパニーの専門部隊が担当する。しかし、今回はGRカンパニーのシェフでもある「凄腕技能養成部」の大阪晃弘さんの助言を得ながら、直接的な開発作業はベースモデル=カローラ クロスのチームが手がけたという。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スポーツモデルは排気量がデカい
カローラ クロスそのものの改良については渡辺敏史さんの試乗リポートにも詳しいが(参照)、シャシー面ではサスメンバーやアーム、スタビリンクなどの製造時の締結剛性を引き上げている。それは2023年の改良で向上したポテンシャルを、より引き出す方策のようだ。
そして、今回試乗したのはGRスポーツなので、お約束の大開口「ファンクショナルマトリクスグリル」が、いつものようにフロントエンドの低い位置に配される。インテリアでは、全カローラ クロス共通の真新しいセンターコンソールに加えて、ステアリングホイールとフロントシートがGR専用品に……というところまではすぐに気づく。しかし、実際は細部のメッキパーツ部品がほぼすべて専用ダーク調となっている。
とはいえ、今回のGRスポーツ最大のニュースはパワートレインだ。1.8リッター直4ハイブリッドに一本化されたベースのカローラ クロスに対して、GRスポーツは専用の2リッター直4ハイブリッドとなる。ただし、パワートレインのハードウエア自体は特別なものではなく、エンジンやモーター類のピーク性能は、たとえば「プリウス」のそれと同じだ。
もっとも、単純にパワートレインを乗せ換えただけでもなく、国内向けトヨタ初の新「SPORT」モードが組み込まれるのは、今回のGRスポーツならでは。ちなみに、ベースのカローラ クロスでは、同じスイッチを切り替えたときは「POWER」モードになる。
いずれにしても、これまでのようなハイブリッドと純エンジン車の併売ラインナップだと、プラグインでもなければ、1車種に複数のハイブリッドが用意される例はまれだった。しかし、ハイブリッドのみとなったカローラ クロスでは、1.8リッターが標準で、高性能版のGRスポーツが2リッターとなるわけだ。こういう「スポーツモデル=排気量デカい」という方程式に、なんかふに落ちる気分になる昭和世代は筆者だけではないだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
コンプリートカー然としたモディファイ
この新しいSPORTモードでは、走行中はエンジンが回りっぱなし。そして、速度に応じて一定以上のエンジン回転をキープする制御となるようで、アクセル操作に対して即座にパワーが供給できる準備を整える。さらに、パドル操作による6段の疑似変速も組み込まれている。
実際、GRスポーツはベースより明らかにパワフルで、SPORTモードではなるほどレスポンシブ。排気量拡大による動力性能の余裕もあってか、普段使いのNORMALモードでも、加減速のリニア感が高まっていて乗りやすい。
GRスポーツは4WDのみ。最高出力41PS、最大トルク84N・mのリアモーターは、2023年以降のカローラ クロスにも共通するもので、制御ロジックにも特別なものはない。それでも、雪道など以外では4WDとほぼ気づかせなかった初期モデルと比較すると、ドライのワインディングロード走行でも、リアトラクションで安定性を後押しする感覚が少しある。
まるごと載せ替えられたパワートレインはさすが性能アップも如実ではあるが、GRスポーツの真骨頂はやはり、コンプリートカー然とした車体やシャシーのモディファイだ。
まず、足もとは19インチの「ヨコハマ・アドバン フレバV701」だ。GRファンなら、これが銘柄・サイズとも、かつての「C-HR GRスポーツ」と同じタイヤだと気づくだろう(参照)。
そのうえで、今回は前記の各部の締結剛性を引き上げたシャシーをベースに、リアバンパーブレースによる車体剛性強化、車高の10mmローダウン、コイルスプリングのレートアップ(前が+12%、後ろが+16%)、そしてダンパーでは減衰力変更してリバウンドスプリングを追加した。さらには、フロントロアアームブッシュを高硬度化して、リアダンパーには「ピストンバンド」を適用するなど、昨今のGR=トヨタらしいマニアック仕立てとなっている内容である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
仕立てそのものが進化している
これらに専用チューンによって、カローラ クロスGRスポーツは、ベース比でヨーが10%早く立ち上がり、ロール量は8%低減しているとか。ただ、クルマが転がりだして最初に気づかされるのが、あからさまにタイトで正確になったステアリングだ。引き締められたバネやダンパーで姿勢変化が抑制されているおかげでもあるが、高硬度のフロントロアアームブッシュが効いているのだろう。
GRスポーツの走りの所作は、ベースより明らかに水平で俊敏であるいっぽう、路面によってはブルブルとした振動が発生するのも事実。それでも乗員の目線が大きく揺すられず、高速でも肩の力が抜ける直進性がさらに引き上げられている。旋回時のロールも明らかに減少しているが、と同時にアクセルやブレーキのわずかな入力でも、すみやかに荷重移動する濃厚な接地感も好印象だ。
今回は、たとえばロール剛性強化策も一般的なスタビライザーのレートアップではなく、あえてダンパーにリバウンドスプリングを組み込んでみたり、あるいはリアダンパーにのみ、横方向の力が加わったときの摩擦力で制震するピストンバンドを追加したりしている。こうして、普段はアシを積極的に動かしながら、必要なときにはしっかりコシを出す……的なノウハウが、トヨタやGRでは年々積み重ねられて、クルマの仕立てがどんどんうまくなっているように感じられるのは頼もしい。
いずれにしてもGRスポーツだけに乗っていると、すこぶるタイトな走りに加えて、「カローラ クロスは全車、このアシでいいのでは!?」と思ってしまうくらいの快適性と自然な手応えに感心した。ただ、ベースであるカローラ クロスの最上級グレード「Z」あたりにあらためて乗ってみると、適度にゆるいステアリングに、ふわりと柔らかに上下するシャシーはホッとさせるものがあり、これはこれで捨てがたかった。さすがはカローラの新しい屋台骨、どれも力作である。
(文=佐野弘宗/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一/車両協力=トヨタ自動車)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1825×1600mm
ホイールベース:2640mm
車重:1500kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:152PS(112kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4400-5200rpm
フロントモーター最高出力:113PS(83kW)
フロントモーター最大トルク:210N・m(21.0kgf・m)
リアモーター最高出力:41PS(30kW)
リアモーター最大トルク:84N・m(8.6kgf・m)
システム最高出力:199PS(146kW)
タイヤ:(前)225/45R19 92V/(後)225/45R19 92V(ヨコハマ・アドバン フレバV701)
燃費:23.3km/リッター(WLTCモード)
価格:389万5000円/テスト車=440万7600円
オプション装備:ボディーカラー<ブラック×アッシュ>(5万5000円)/ナノイーX(1万1000円)/ステアリングヒーター(1万1000円)/ハンズフリーバックドア<挟み込み防止機能、停止位置メモリー機能、予約ロック機構>(7万7000円)/LEDリアフォグランプ<右側のみ>(1万1000円)/ブレーキキャリパー<レッド塗装[フロント&リア]、GRロゴ[フロント]>(5万5000円)/アダプティブハイビームシステム[AHS](5万1700円)/トヨタチームメイト<アドバンストパーク>+パーキングサポートブレーキ<周囲静止物>+ブラインドスポットモニター[BSM]+安心降車アシスト[SEA]+パーキングサポートブレーキ<後方接近車両、後方歩行者>+パノラミックビューモニター<床下透視表示機能付き>(12万2100円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W、非常時給電システム付き、デッキサイド左側、外部給電アタッチメント付き>(4万5100円)/デジタルキー(3万3000円) ※以下、販売店オプション GRフロアマット(2万7500円)/アームレスト<スライドタイプ>(1万3200円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1221km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(5)/山岳路(4)
テスト距離:349.0km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.0km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。


















































