第55回:続・直撃「BYDラッコ」! 背が15cmも高いのに航続距離が「サクラ」&「N-ONE e:」超えってマジか?
2026.02.03 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ 拡大 |
「BYDラッコ」の開発担当者を再直撃!
今年、ニッポンの新国民車たる「N-BOX」をはじめとした国産軽スーパーハイトワゴンの牙城を揺るがすと目される脅威の“日本専用ガイシャ”「BYDラッコ」! 日本に投入される初の海外産軽電気自動車(BEV)であり、同時に初の両側スライドドア付き軽乗用BEVでもあるが、それが年間1万台売れても元が取れない新作プラットフォームを使うだろうことや、中国ならではの衝撃のスピードで開発されているのは以前に直撃したとおり(前回の記事)。
と思ったら先日の東京オートサロン2026でさらなる追加情報が。認証値ではないものの、搭載電池はほぼ20kWhと30kWhの2種類で、それぞれWLTCモードで200km&300km程度走るという。しかもコイツがほぼ同じ電池量で一充電走行距離が180kmの「日産サクラ」、295kmの「ホンダN-ONE e:」をズバリ超えるのだ。
軽ハイトワゴンより背が高くて重めのスライドドア付きスーパーハイトワゴンのほうが一充電走行距離が長いってどういうこと? そんだけBYDの電池がスゴいってこと? BYDオートジャパンの田川博英さん(商品企画部担当部長 CKプロジェクトリーダー)に素朴な疑問を再びバシバシぶつけてきましたっ!
拡大 |
なぜ航続可能距離が日本の軽BEVより長いのか?
小沢:さて、元日産のエンジニアの田川さん、ジャパンモビリティショー2025では新型ラッコへの直球質問にバシバシ答えていただきありがとうございました。
田川:日産日産言いすぎです(笑)。
小沢:スイマセン。で、実はさっきの発表で驚いたんですが新型ラッコ、今回ざっくり搭載電池量と航続可能距離が判明したわけですけど、日本の軽BEVとガチじゃないですか! 電池容量は2種類で小さいほうが約20kWhで、大きいほうが30kWhも積んでいる。
田川:数値の認証はこれからなので多少ずれると思います。それから日産さんやホンダさんをベンチマークしたというより、お客さまの使い方に応じて、2種類持っておこうと。BYDの電池の技術でいうと、軽は床面積に限界があるのでこのサイズに落ち着いたっていうのが正しいと思うんですが。
小沢:とはいえ電池容量もそうですが、それ以上に一充電走行距離が驚きで、小さい20kWhが200km! 大きい30kWhが300km!! 具体的には日産サクラが20kWhでWLTCモード180kmだから超えてるんですよ。より背が高いラッコのほうが! ついでに30kWhのほうもN-ONE e:より微妙に長い。
田川:だから正確にはラッコの電池搭載量は20kWhちょいぐらいだと思います。実際はサクラより少し多く積んでいる。“だいたい”20kWhで200とホニャララkm、30kWhで300とホニャララkm走るぐらい。
小沢:それでもすごいんですけど。要するに容量が小さいほうでも航続距離200kmを実現できる?
田川:開発チームには「200kmは絶対超えてくれ」って言ってます。サクラさんより距離は長くするつもりで。
小沢:それってやっぱり衝撃なんですけど。全高にしろサクラが約1.65mで、ラッコは約1.8mじゃないですか。15cmは高いだけでなく、ボディーの面も立っていて、フロントウィンドウもデカくて立ってて明らかにラッコのが空力は悪い。車重だって100kg以上は重くなりますよね? スライドドアにドアレールまで付いてるんで。それでいて航続距離がヒンジドアの軽超えって…もしや電池がすごいんですかね、BYDの?
田川:電池もそうですし、電池をマネジメントする能力もあるんだと思います。BYDはやっぱりBEVをいっぱいつくっているので。
小沢:もしや日産の軽づくりやサクラを知ってる田川さんからみても、そこにはやっぱりアドバンテージがあると?
田川:ただ日産さんも……他社さんのことをうんぬん言うわけではありませんが……「リーフ」をずっとやられてるんで相当なマネジメント力だと思います。単純に容量とかの差なのかと。
小沢:あと電池のSOC(ステートオブチャージ)、どこまで電池容量を使い切っちゃうか? みたいな考え方の違いもあるかと。日本メーカーは安全マージンを多めにとるじゃないですか。
田川:そうだと思います。
小沢:本質的なパフォーマンスの差はそれほどないかもしれないけれど、BYDのほうがいろいろ攻めてる可能性があると。
田川:そうですね。
小沢:あと電池の種類ですけど、BYDは同じリチウムイオンでも自慢のリン酸鉄イオンを使ってるじゃないですか。安くて体積あたりのエネルギー密度は低いけど、非常に安定度が高くて燃えにくくて安全。
田川:はい。
小沢:だから逆に同じ狭い軽のフロアに積むことを考えると、電池量はBYDのほうが少なくなっちゃうと思うんです。なのに実際はラッコのほうが多く積んでる可能性がある。これってどういうことですか? やっぱり独自のブレードバッテリーのパッケージ能力が効いてる? よりフロアが狭くなるスライドドア付きのクルマなのに?
田川:あの、前も同じお答えしていますけど、詳しいことは僕には分かりません(笑)。
小沢:でも田川さん、ドアを開けて実車のフロアを見てるじゃないですか。なんかスゲー工夫とかしたりしてません? ブレードバッテリーならではの特殊形状とか?
田川:他社さんはもともとガソリン車の軽のフロア構造をそのままにしながら載せているのに対し、ラッコの場合は最初からBEVを前提にスライドドアのフロアを設計しているのと、それからBYD独自の「セルトゥボディー」という構造。バッテリーを床の部材として使うっていう発想でイチから設計をしているので。分かりませんけれどもそのあたりはパッケージ効率に効いているのかという気はします。
小沢:サクラもN-ONE e:も一応エンジン車がベースですからね。ちなみに実車のラッコのフロアは結構高いですか?
田川:それが全然……。本当に地面から床まで他社さんとも全く変わらない高さで。
小沢:でもさすがに普通のN-BOXとか「スペーシア」よりは高いですよね?
田川:いえいえ全然。ほぼ同じぐらい。
小沢:えー! そう考えるとBYD、やっぱりBEVのノウハウがたまってそうですね。
田川:まあ、マフラーにしろプロペラシャフトにしろBEVには必要ありませんから。
乗り心地は軽スーパーハイトワゴンの次元を超えている!?
小沢:最後に走りですけど、田川さん、テスト車にはすでに乗ってらっしゃいましたよね?
田川:2025年の9月に深センでは乗っていますけれども。
小沢:どんな感じでした?
田川:路面のいいところでは他社さんのBEVとそれほど大きな違いはないですが、やっぱり静かだし、トルクがすぐに立ち上がる。BEVならではのよさはもちろん持っています。それから乗り心地というか、悪い路面を走ったときのボディーのしっかり感とかフロアの剛性感に関してもよさがあるので、そこは自信をもってオススメできます。
小沢:乗り心地は、エンジン車の軽スーパーハイトワゴンよりもいい?
田川 はい。すごくよくできていると思います。
小沢:ぶっちゃけN-BOXとか、それこそ「日産ルークス」よりも?
田川:乗り心地はちょっと次元を超えるぐらいにいいと思います(笑)。
小沢:そっか。やっぱりそこはBEVなんですね。重くてフロアがしっかりした本格BEV。
田川:路面の悪いところにいくと、特にその違いが分かっていただけると思います。
小沢:そこはやっぱりBEVのアドバンテージですね。ついでに加速とか静かさももちろん?
田川:エンジン車とは全然別物です。
小沢:じゃ、実用性や質感に関してはほとんどネガはないのかもしれないですね。僕は電池を搭載するぶん、どうしても狭くなると思ってたんですけど、それもないとなると、航続距離を除けば、静かさや走りはBEVのほうがいいのは間違いないし、あとは本当に価格の問題だけかも?
田川:そこは本当に皆さまが心配されるように価格ですとか、使い方によっては航続距離も心配かもしれないですし、あとは弊社は販売ネットワークをまだまだ拡大途中なので、やっぱり近くにお店がないんだよな……なんていうご心配はおかけしちゃうかもしれません。
小沢:とはいえ実車のクオリティーはヘタすると総合力でエンジン車の軽スーパーハイトワゴンを超えますね?
田川:そうなるようにいろいろな準備をしなきゃいけないと思ってますね。はい。
拡大 |
内装はシンプルなファブリックも選べそう
小沢:一方、今回もまた内装はモビリティショーと同じで外から窓越しに見られるだけですが……やっぱりクオリティーは高いなと。シート表皮もファブリックは全然使ってないようで。
田川:これは上級グレードなので合皮ですけど、布仕様もご用意するつもりでおります。ステアリングもこれは革巻きですけど、ウレタン仕様もあります。
小沢:センターディスプレイもかなりデカい。
田川:10インチ、正確には10.1インチです。
小沢:クオリティーの高さもそうですけど、とにかく自分のYouTubeのコメントを見てても他のBYD車と視聴者さんの反応が違うんですよ、ラッコは。悪口が少ないし、自分は乗らないけど奥さん用に……みたいな話が自然に出てくる。今までのBYDのSUVは他の欧州BEVが競合だったけど、軽自動車クラスだと、価格が合えばソク欲しい! みたいな。ぶっちゃけブランドにこだわらない感じがある。今までBYDの購入は考えなかった人でも軽だったら違う。見て乗ってちゃんとしてれば買っちゃうみたいな。客の判断基準が変わってる感じがあるんです。
田川:そうですね。ファーストカーでBEVは厳しいけれど、セカンドカーなら一回使ってみようかなとか。そういうお客さまがいっぱい来てくれることを私も期待しています。軽はやはりお客さまが明確に違っているので。
小沢:ってなわけで、BYDラッコ、続ガチ直撃ですがさらに脅威的な存在である気がしてまいりました。田川さん、今回もありがとうございました。次回また実車で、もしや深センなどでよろしくお願いします。
田川:とんでもないです。こちらこそありがとうございました。
(文と写真=小沢コージ/編集=藤沢 勝)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第61回:「あえてのフツウ戦略」に脱帽! 「スズキeスカイ」の若きチーフエンジニアを直撃! 2026.10.23 スズキの軽乗用EV「eスカイ」が注目を集めている。小さなバッテリーにして一充電走行距離310kmを誇る電費のよさはもちろんのこと、スズキらしさ全開ともいえる価格設定もまたスゴい。若きチーフエンジニアの杉山達樹さんにその秘密を聞いた。
-
第60回:BYDオートジャパンの社長を直撃! いま日本で「ラッコ」を買う正義とは? 2026.8.27 中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がついに日本上陸を果たした。やっぱりというか期待どおりというか、その低価格と装備の充実ぶりに不躾・小沢コージも大変驚いた。BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長を直撃し、いろいろ聞いてきた。
-
第59回:待望の2代目「日産キックス」は「ヴェゼル」や「カローラ クロス」に勝てるのか!? 小沢コージが嗅ぎまわる 2026.7.9 日産が満を持して「キックス」の新型を発表した。新世代の「e-POWER」を搭載したほか、各部の質感もデザインも先代モデルから大幅に進化しているが、大事なのはライバル車に勝てるかどうかだ。小沢コージが開発リーダーを直撃した。
-
第58回:ええ? 燃費でも「アルヴェル」に勝ってるだとぉ…… スクープ! 激白新型「エルグランド」のホントの話 2026.6.10 日産の立て直しという大命を抱いて発売される新型「エルグランド」。自らが創出したジャンルでありながら、トヨタに好き放題にされてしまっているのが現状だ。日産はどんな武器を手に失地回復に挑むのか。小沢コージが開発トップを直撃!
-
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃 2026.4.18 小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。
-
NEW
思わずなでたくなってくる 丸いデザインのクルマ特集
2026.11.1日刊!名車列伝最近のクルマのデザインは、シャープなラインが特徴だったり、造形そのものが複雑だったり……。今月は、つるりと丸い、シンプルなエクステリアが印象的な世界の名車を日替わりで紹介します。 -
NEW
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】
2026.10.31試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。 -
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日
2026.10.30デイリーコラム中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。 -
メルセデスのトップからのまさかの転身 BMW日本法人の上野金太郎社長にインタビュー
2026.10.29デイリーコラムメルセデス・ベンツ日本からビー・エム・ダブリューのトップへ。いわば巨人の四番から阪神の四番のような異例の転身を遂げた上野金太郎社長。両ブランドの文化や製品の違い、今後の販売戦略などについて話を聞いた。 -
ボルボEX90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(後編)
2026.10.29あの多田哲哉の自動車放談ボルボの新世代EV「EX90」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが試乗。ちょっと気になったところと、クルマとしての魅力を感じたポイントについて熱く語る。 -
写真で解説する「メルセデス・ベンツ・エレクトリックGLC」
2026.10.28画像・写真メルセデス・ベンツの新たなフル電動SUV「エレクトリックGLC」がデビュー。2026年10月28日に国内での注文受け付けがスタートした。一体どんなクルマなのか、その見どころを写真とともに解説する。




