インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)
究極のセルフカバー 2026.02.06 試乗記 アメリカの老舗、インディアンモーターサイクル(以下、インディアンMC)の基幹モデル「チーフ」シリーズに、新機種「チーフ ヴィンテージ」が登場。このマシンが、同社のラインナップのなかでも特別な存在とされている理由とは? ミッドセンチュリーの空気を全身で体現した一台に、米ロサンゼルスで触れた。新生インディアンのトリを飾る一台
最後のピースがそろった。インディアンMCが、2026年1月22日に米ロサンゼルスで発表した新型車、チーフ ヴィンテージがそれだ。ここで言う“最後”とは、終わりを意味するのではなく、新生インディアンMCとしての、地固めの完了を意味する。
2021年、インディアンMCは大型クルーザーシリーズ、チーフの誕生100周年に合わせて、新型チーフシリーズを発表(参照)。熟成を重ねた排気量1896ccの挟角49°空冷4ストロークV型2気筒OHVエンジン「サンダーストローク116」を、スチールパイプを中心に構成したシンプルな新型フレームに搭載した。また2024年には、インディアンMCが言うところのミドルクラスクルーザー、新型「スカウト」シリーズを発表(参照)。排気量1250ccの挟角60°水冷4ストロークV型2気筒DOHCエンジン「スピードプラス」を、やはりスチールパイプをメインとした新型フレームに搭載した。
このチーフとスカウトは、インディアンMCの歴史を象徴するモデルであり、まさに基幹モデルとしてブランドを支えてきた。その主要モデルを刷新し、競争力の強化を図ったのだ。加えて、クルーザーセグメントのドル箱に成長したパフォーマンスバガーの市場には、ハイパフォーマンスな水冷Vツインエンジンと高剛性のアルミフレームを設(しつら)えた「チャレンジャー」シリーズを投入。「パースート」などのファミリーモデルも追加した。最新の技術と新しい開発哲学によってつくり上げた新規車両も合わせ、モデルラインナップを全方位で堅固なものとしたのである。
そして、この変革の最後を飾るのが、今回紹介するチーフ ヴィンテージなのだ。
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全身で体現した“ミッドセンチュリー”
チーフ ヴィンテージが変革のラストピースたる由縁は、その発表によって新生インディアンMCの新たなモデルラインナップが完成したことに加え、同車がインディアンMCのアイコニックなディテールとスタイルを、現代によみがえらせたものであることが大きい。
インディアンMCのデザイン責任者であるオラ・ステネガルド氏は、発表会で「その構想は2021年に発表した新型チーフの開発初期からあった」と説明。125年にわたるクルーザースタイルのトレンドを盛り込んだ新型チーフシリーズの開発を進めながら、同時にチーフ ヴィンテージのようなモデル、すなわち1940年代から1950年代にかけてのインディアン・チーフを範としたモデルも成立するようディテールを整え、それがファミリーに加わっても解釈に齟齬(そご)がないよう、各ラインナップのスタイルを整えたという。
また、歴史あるチーフのディテールとスタイルを現代によみがえらせることは、アメリカンプロダクトの黄金期を現代によみがえらせることに等しいとも付け加えた。1930年代の大恐慌を経て、復活への希望を体現するようにアメリカで発展したアールデコ様式。多様な素材の開発やその加工技術、成型技術の発展によって具現されたモダンなデザインは、後にミッドセンチュリーと称されるようになる。チーフが採用したV型2気筒エンジンと、豪華で流麗なボディーラインのコントラスト、デザインと機能を融合したサドルシート、風になびくスカートのようにエレガントにタイヤを包むスカートフェンダー、そのフロントフェンダーに鎮座するヘッドドレスの装飾……。これらチーフを象徴するディテールは、ミッドセンチュリーを代表する工業デザインとしても知られている。
そして、世界最大級の自動車博物館「ピーターセン・オートモーティブ・ミュージアム」でのブランド創立125周年記念エキシビションに展示され、ロサンゼルス随一のツーリングスポットであるマリブビーチ&マリブキャニオンで試乗に供された新型チーフ ヴィンテージもまた、まさにミッドセンチュリーを具現したバイクだった。
優雅さと軽快感を両立させるディテールの妙味
これまでもインディアンMCは、「チーフ クラシック」や「ロードマスター」「スプリングフィールド」など、スカートフェンダーを装着したクラシックスタイルのクルーザーをラインナップしてきた。しかしチーフ ヴィンテージは、新型チーフシリーズのプラットフォームをベースとすることで、グッとコンパクトに、そして軽快になった。車体重量はチーフシリーズでは重い327kgだが、スタンドから車体を起こすときも、実際に走らせてみても、その数字を感じさせないほどバランスがよく、車体を軽く感じたのである。
視覚的にも、通常は重々しさを感じさせるスカートフェンダーは、前後ともにタイヤの外周部を覆う中央部を細くデザインし(彫りの深い形状だが、なんと一度のプレスで型抜きしている!)、そこにブレーキ系や駆動系を避けるように左右2枚のサイドパネルを溶接して成型している。これによって細く筋肉質なフェンダーを実現し、それが車体をコンパクトに見せているのだ。
エンジンの意匠も工夫が凝らされている。シリンダーヘッドカバーは他のチーフシリーズと共通ながら、シルバーのペイント仕上げによって存在感が増しており、同色に仕上げられたプッシュロッドチューブとの相乗効果で、エンジンが大きく見える(=車体が小さく見える)のだ。
フローティングシートの存在も大きいだろう。1940年代のチーフに採用されていたスプリング式のサドルシートをもとに、座面の形状や素材、そこに仕込むシートフォームを吟味し、宙に浮いたような近代的解釈のサドルシートを製作。座り心地も、丸1日走り回ったテストライドでも不満は感じられないくらい、よくできていた。それでいながら車体から離れたように装着されたこのフローティングシートによって、燃料タンクやリアフェンダーの美しさが際立ち、特にリアまわりは軽快なイメージに仕上がっている。
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走りの基本は他のモデルと同じだが……
前後サスペンションユニットやそのセッティングは、「チーフ ボバー」や「スーパーチーフ」などといった前後16インチホイールを装着する兄弟モデルと同一で、また出力特性が異なる「スポーツ/スタンダード/ツアー」の3つのライディングモードのプログラムも、他のチーフと共通だ。
しかし、リアタイヤ幅は他のモデルよりも細い150サイズとなっており、これが軽快なハンドリングに寄与しているという。実際、同じ前後16インチでも、180サイズのリアタイヤを装着するチーフ ボバーやスーパーチーフより軽快に感じる。また、リアのホイールサイズの変更によってフェンダーを支えるリアフレームも細身となっているが、アタッチメントステーの追加で装着できるリアサイドバッグを含め、チーフシリーズのすべてのアクセサリーも装着可能だ。
単なる懐古主義に浸ることなく、アメリカの歴史ともリンクする自らのヘリテージを深掘りし、次なるヘリテージを目指して完成したのが新型チーフ ヴィンテージだ。新しい技術と考え抜かれたディテールで構成された、新生インディアンMCを象徴するモデルである。日本に上陸した際には、インディアンMCの歴史をそのディテールに感じてほしい。
(文=河野正士/写真=インディアンモーターサイクル/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2441×887×1175mm
ホイールベース:1626mm
シート高:686mm
重量:327kg
エンジン:1890cc 空冷4ストロークV型2気筒OHV 2バルブ(1気筒あたり)
最高出力:--HP(--kW)/--rpm
最大トルク:156N・m(15.9kgf・m)/3300rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:338万円~348万円

河野 正士
フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。
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