アルファ・ロメオ・トナーレ ハイブリッド インテンサ(FF/7AT)
まだ伸びしろがある 2026.02.22 試乗記 2025年の大幅改良に、新バリエーション「インテンサ」の設定と、ここにきてさまざまな話題が飛び交っている「アルファ・ロメオ・トナーレ」。ブランドの中軸を担うコンパクトSUVの、今時点の実力とは? 定番の1.5リッターマイルドハイブリッド車で確かめた。カタログモデルとは異なる装い
2025年秋以降、アルファ・ロメオは「INTENSA(インテンサ)」という特別仕様車が順次上陸している。具体的には、同年9月のトナーレを皮切りに、11月には「ジュリア」「ステルヴィオ」、そして2026年1月には「ジュニア」にも登場した。これで国内でも、事実上の“フルラインナップ・インテンサ”が完成したことになる。
日本では、ひとまず限定の特別仕様車という扱いのインテンサだが、いわゆる歳末セールのお買い得モデル的な位置づけではない。イタリア本国では2025年2月にまとめて発表された、由緒正しいバリエーションなのだ。今回の試乗車であるトナーレのインテンサをご覧いただければお分かりのように、インテリアやエクステリアの足もと(ホイールとブレーキキャリパー)などの要所をブラックで統一して、さらにそこにゴールドやタンのカラーアクセントをあしらうのが、インテンサの特徴である。
日本仕様のトナーレには1.5リッターターボのマイルドハイブリッド(FWD)と同プラグインハイブリッド(4WD)という2種類のパワートレインがあるが、インテンサが用意されるのは前者のみだ。これはほかのインテンサも同様で、基本的に各車種の売れ筋モデルに設定されると考えればいい。実際、ジュリアやステルヴィオのインテンサは2リッターのガソリンターボ車、ジュニアのそれはマイルドハイブリッドの「イブリダ」に設定される。
トナーレ ハイブリッド インテンサの装備内容をさらに吟味すると、電子制御サスペンションと20インチタイヤ、パドルシフトなどが標準装備となっている。ということは、インテンサのベースは、従来のトナーレで上級モデルだった「ハイブリッド ヴェローチェ」と考えるのがよさそうだ。
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シフトセレクターがロータリー式に
というわけで、インテンサ仕様のトナーレの試乗となるが、トナーレとの対面は、個人的にはプラグインハイブリッドが追加された(参照)2023年秋以来である。スポーツ風シートは体をおさめるとホールド性は高い。また、メイン部分のシート表皮がアルカンターラになるインテンサは、少なくともこの季節には適度にぬくもりがあって心地よい。
双眼鏡を思わせるメーターフードも、いかにもアルファ……とか思いつつ、スタートさせようとしたら、シフトセレクターが丸いロータリー式(回転式)になっていて驚いた。
ここはもともと一般的なレバー式だったはずなので、調べてみると、イタリア本国では2025年にこれまでで最大の改良がトナーレに実施されており、そのメダマのひとつがロータリー式シフトセレクターらしい。さらに調べると、トナーレの日本仕様は、すでにインテンサ以外もロータリー式シフトセレクターに変更されていた。また、2025年9月付の最新カタログを見ると、標準のトナーレでも、以前にあった「TI」がラインナップから落とされて、ヴェローチェのみになっていた。トナーレにも、いろいろと手が入っているらしい。
トナーレで「ハイブリッド」と称されるパワートレインは、1.5リッターターボにモーターを内蔵した7段DCTを組み合わせる。気温やバッテリーの充電残量などの条件がそろっていれば、エンジンを停止した“EV(電気自動車)状態”での発進も可能だが、日常の上品なアクセルワークでも、車速20km/hくらいでエンジンが始動し、そこからはエンジンメインの走行となる。
車速70~80km/hまでなら、低負荷巡航や減速でけっこう頻繁にエンジンが停止する。ただし、モーターは最高出力20PS、最大トルク55N・mと限定的な性能なので、「EV状態で自在に走りまわる」というほどではなく、一般的にはやはりマイルドハイブリッドに分類されるタイプといっていい。
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乗り味に感じるシャシーの設計年次
現在のステランティスには、旧グループPSA(プジョー・シトロエン)が開発した1.2リッターターボがベースのマイルドハイブリッドがあり、アルファ・ロメオでもジュニアはそれを搭載するが、トナーレが使う1.5リッターターボは、旧フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)系。さらにいうと、リアにパラレルリンク式ストラットサスペンションをもつトナーレのプラットフォームも旧FCA系で、いうなれば、ジープの「レネゲード」や従来型「コンパス」、フィアットの「500X」などと血統を共有する。
あくまで穏やかに発進させて、加速も減速もゆったりとした教科書どおりの運転であれば、このマイルドハイブリッドはエンジントルクの出入りも滑らかで、まずまず快適だ。モーター性能は限定的とはいえ、55N・mという最大トルクは軽自動車のエンジンレベルではあるので、エンジンとモーターがフル稼働すれば、かなり力強い。ただ、ストップ&ゴーを繰り返したり、市街地で先を争ったり……といったイレギュラーな乗りかたをすると、ちょっとギクシャクしがちなのは、旧PSA系と旧FCA系の両方のマイルドハイブリッドに共通するクセでもある。
電子制御ダンパーがソフトになる「Natural」モードにしておけば、整備された路面では乗り心地も適度に柔らかで快適なのだが、路面によっては強めにドシバタしたり、低偏平タイヤ特有のゴツゴツした感触が伝わってきたりする。スポーツモードにあたる「Dynamic」ではフットワークはあからさまにハードになるいっぽう、車速が高速特別区間の120km/hくらいになると、フラットに落ち着いてくる。
いずれにしても、どちらのモードでも路面の得手不得手がけっこうはっきりしていて、不得手な路面ではかなりクセが強い。トナーレ自体のデビューはまだ新しいのに、こうした部分にプラットフォームの設計年次を感じてしまうのも事実だ。
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少しの工夫で印象は変わる
……といいつつも、トナーレは動力性能もシャシー性能も、絶対的にはことさら不足はない。なのに、こうして細かい味わいにとやかくツッコミを入れたくなるのは、これがアルファ・ロメオだからである。日本のカーマニアにとって、アルファは今もちょっと特別なのだ。
ついでにいえば、日本のカーマニアにとって、アルファの乗り味にクセがあること自体はマイナスではない(本当か?)。むしろ、1.5リッターターボのエンジン音があまりに事務的なのが、アルファとしてはいただけない。これをスピーカー音で軽く演出してくれるだけでも、アルファ的価値観での印象はずいぶん好転するだろう。
またシャシーの味つけにしても、ゴリゴリ系のハードなフットワークに軽めのステアリングの組み合わせとなるDynamicモードの調律は、一考の余地ありだ。それとは対照的に、ロールをある程度許容するソフト気味のシャシーに、アシストをあえて抑制したダイレクトなステアリングフィールを組み合わせてくれたりすると、かつて「アルファスッド」の吸いつくハンドリングに感動した中高年カーマニアは涙を流して喜ぶ……かもしれない。
いずれにしても、3種類あるアルファSUVのなかでも、輸入車だとBMWの「X1」や「アウディQ3」、国産車だと「マツダCX-5」や「ホンダZR-V」に近いサイズのトナーレは、もっとも客層の間口が広い。アルファの再躍進のためにも、トナーレはもっと濃厚にアルファらしくあってほしい。
それにしても、インテンサのオシャレ番長っぷりはステキというほかない。筆者も含めた旧来的カーマニアは、イタリアといえば鮮やかな(イタリアン)レッドのイメージがあるけれど、実際はこういうシブい色づかいのセンスこそイタリアの真骨頂。イタリアで走っているクルマに鮮やかなカラーは少なく、伝統的にダークカラーが人気らしいし……。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=ステランティス ジャパン)
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テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・トナーレ ハイブリッド インテンサ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4530×1835×1600mm
ホイールベース:2635mm
車重:1600kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:160PS(117kW)/5750rpm
エンジン最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1700rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)/6000rpm
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)235/40R20 96V XL/(後)235/40R20 96V XL(ブリヂストン・トランザ6)
燃費:16.6km/リッター(WLTCモード)
価格:649万円/テスト車=665万7350円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション ETC2.0車載器(5万3500円)/ドライブレコーダーV263A(5万9950円)/プレミアムフロアマット(5万3900円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1939km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:401.6km
使用燃料:34.8リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.5km/リッター(満タン法)/13.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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