第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.03.03 エディターから一言四駆にこだわるランボルギーニ
ランボルギーニの他のミドシップ系スーパースポーツと異なる個性のひとつが「四駆」です。その歴史は意外と古く、クライスラー傘下にあった1993年にまでさかのぼります。
通常のリアミドシップレイアウトとは180度異なる、左右席間にトランスミッションを配してその背後にエンジンを置くいわゆるカウンタックレイアウトをベースに、当時の先端技術となるビスカスカップリングを用いたセンターデフを介して前輪に最大25%の駆動力を配分する。時の「ディアブロ」に追加された四駆グレードはビスカストラクションの頭文字をとって「VT」と名づけられました。
その後の「ムルシエラゴ」「ガヤルド」「アヴェンタドール」「ウラカン」と、基本的にランボのスポーツモデルは四駆を前提に開発されてきました。カスタマーレーシングとの関連性もあってか、折につけ現れるガヤルドやウラカンの二駆モデルは、そのすがすがしい走りが印象的でしたが、さりとて軸足は四駆。それは「レヴエルト」&「テメラリオ」の現世代でも変わりません。
それどころか、その四駆はパワートレインの電動化に伴い、前2輪を独立したモーターで駆動するという進化を遂げています。つまり、レヴエルト&テメラリオは都合3つの駆動用モーターを持ち、プロペラシャフトを廃したプラグインハイブリッド車(PHEV)の四駆という先端的な一面も持ち合わせたスポーツカーというわけです。返す返すも「NSX」は早すぎた……というのは個人の感想ですが。
この複雑な四駆システムは当然ながらパフォーマンスのためにしつらえられています。自然吸気のV12を積むレヴエルトでは1015PS、ツインターボのV8を積むテメラリオでは920PSとシステム総合出力は破格。システム最大トルクは発表されていませんが、ともに恐らく1000N・mの大台をうかがう、もしくは超えるところにあると察せられます。動力性能は言うに及ばず、前側のモーターの同調や差動が旋回能力にも大きく関与するなど、運動性能の側にもちょっと異次元の感があるのは過去のサーキットドライブで体感したところです。
タイヤの準備は万全ながら……
と、ドライのオンロードではただただその速さにあぜんとさせられる新世代ランボですが、果たしてそれ以外のステージで四駆の能力はどう生かされているのか……を確認するのが今回のお題。その素性が最も端的に表れるのが低μ路ということで、試乗のステージは冬の北海道でした。車両はなんならレヴエルトよりも瞬発力の高いテメラリオ。装着するスタッドレスはランボルギーニの純正指定となるブリヂストンの「ブリザックLM005」です。欧州では秋冬期にウインタータイヤ装着を義務化している地域もあり、実需としてこういう用意があるのでしょう。ちなみにこのタイヤ、日本でもディーラーやブリヂストンの直販店などで調達可能だそうです。
それにしてもタイヤ的には万全とはいえ、この手のクルマで冬の北海道の公道を走る機会はめったにあることではありません。大丈夫かなあとそろりそろり路上に歩を進めると、まあ驚くほど雪が見当たらない。道路管理が行き届いているおかげで除雪が進んだところに折からの高温もあってか、車窓越しの景色は北国とは思えないほどです。前入りしたカメラマンは運よくいかにもなシチュエーションが押さえられたようですが、あっという間にクリアになったとのことでした。
まあお天気ばかりはどうにもならないので、途中で雪場でも見つけられれば……と走り始めてみればそこはさすがに北海道。モニター越しに確認するタイヤの温度がなかなか上がらないことに気づかされます。高速道路を法定速度で巡航している状況ではほぼ10℃台で20℃台に入れるのも難しい。オープンホイールのF1などはモロかぶりの走行風によって一生懸命温めたタイヤもあっという間に冷えてしまいますが、冷却や空力特性が考え尽くされたスポーツカーもこういうシチュエーションではヌケが良すぎるのかもしれません。
日本のブリザックとは異なる性質
いくら路面がドライでも、この温度状況をサマータイヤでカバーするのは難しい。そこでウインタータイヤの登場となるわけですが、ことスタッドレスとなると、テメラリオの火勢の前に腰砕けになってしまうのではという懸念があります。
が、そこはランボルギーニ純正指定品。操舵応答はカッチリしていて旋回時の踏ん張りもにわかにはスタッドレスとは思えないほどです。縦方向のグリップ力はどうかなと機をみて試しにパワーを乗せてみましたが、ヨレや抜けの印象もなく、電動四駆の高いレスポンスにもしっかり応えてくれていました。
もちろん920PSの全開を担わせるのは荷が重いのかもしれませんが、常識的に接するぶんには期待以上のフィードバックをみせてくれます。同じブリザックでもアイス路面でのガチ止めに重きを置いた日本の銘柄とは狙いが異なることは頭に入れておく必要がありますが、想像以上に走れるタイヤであることは間違いなさそうです。
そして低μ環境で一番気を使う発進時のグリップコントロールについては、むしろPHEVであることの利が感じられます。モーター走行ならではの緻密なトルク配分とそれを引き出しやすいアクセルペダルのしつけによって、歩くような速度域でもしっかり駆動をコントロールできるわけです。ちなみにレヴエルト&テメラリオのモーター走行時はFF状態ですが、前後重量配分は約44:56とミドシップの割には前寄りの荷重設定となっていることもあって、トラクションがスカスカという感じではありません。こうなるとテメラリオの雪上での難敵は轍(わだち)くらいということになるのかもしれません。
テメラリオ級のクルマをお求めになる方々というのは、恐らく一台に何もかもを託すようなことはないでしょう。それこそ普段乗り&雪道用に「ウルス」をお持ちになっていてもなんの不思議もありません。でも一方で、このクルマでスノートラックとか走ると楽しいんだろうなあ……と運転しながらあらぬ妄想でニヤついてしまったのもまた事実でして、そんな方向へと誘える魅力をきちんと備えているのが今のランボの電動四駆の実力ということになるのでしょう。
(文=渡辺敏史/写真=ランボルギーニジャパン/編集=藤沢 勝)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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