第334回:親でもここまではしてくれまい
2026.04.27 カーマニア人間国宝への道名前が長すぎて覚え切れない
先日、サファリ・ラリー・ケニアで勝田貴元選手が勝ったと思ったら、次のクロアチア・ラリーも連勝! 信じがたい快挙である。優勝マシンはもちろん「GRヤリス ラリー1」! ヤリスすげえっ!
勝田選手の連勝を予感していたかのように、この3月、トヨタは市販版「GRヤリス」のマイナーチェンジを行った。その目玉は、「Aero performance package(エアロパフォーマンスパッケージ)」の登場、ではなく、それって2025年の秋からあったのか? この分野にトンと疎いので、よくわからなくなってしまいました。
とにかく、市販版GRヤリスのエアロパフォーマンスパッケージ(6段MT車)に、ちょい乗りすることができた。正確には「トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ」。長すぎてとても覚えられない……。
思えば最近、新型フェラーリの名前もぜんぜん覚えられなくなっている。若いアイドルたちの名前がまるで覚えられないのと同じ症状だ。私の脳は斉藤由貴や菊池桃子で止まっている。
フェラーリは、「458イタリア」までは覚えているが、その先はあやふやだ。接点がなくなったということですね。涙。
もちろん私は、GRヤリスとも接点がないので、長い名前が覚え切れないのだが、そんな私がこんな貴重なマシンに試乗できるなんて、自動車ライターになってヨカッター。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
縦引きパーキングブレーキがすごい!
で、今回試乗したトヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージがどうだったかというと、すごかった。それ以外に言葉がない。
ただし、GRヤリス(の速いヤツ)は出たときからすごかったので、さらにどれくらいパフォーマンスが上がったのかは、よくわからなかった。わかるのは、見た目がさらにオタッキーになったことと、パーキングブレーキが縦引きになったことだ。
中高年カーマニアとしては、パーキングブレーキではなく「サイド」と呼びたいが、それがほとんど直立していて、手前に引くとかかる。上に持ち上げるより、はるかに力を入れやすい。うおおおお、すげえっ!
こんなことまでやってくれるトヨタという会社は、カーマニアにとってもはや神。かつてのカーマニアの神・スバルは、ロクにMT車すら出してくれなくなっているのに、トヨタはMTはもちろんのこと、縦引きパーキングブレーキまで用意してくれる。親でもここまではしてくれないだろう。
ところで市販版GRヤリスをベースとしたマシンって、どこかのモータースポーツで活躍しているのだろうか? WRCでGRヤリス ラリー1は大活躍しているが、身近なGRヤリスの活躍については、寡聞にして知らない。GRヤリスが出たときは、「遅いヤツ(1.5リッター直3+CVTの「RS」系)のほうしか全日本ラリーに出られない」という話だったけど、そのままなのか。
調べてみたら、今は全日本ラリーやスーパー耐久シリーズにちゃんと出てるし、WRCの「ラリー2」クラスにも出てるらしい(こちらはプライベーター向けの参戦車両で価格は4000万円以上とか)。なーんだ、いつの間にか活躍してるんじゃん!
なのになぜ、かつての「ランエボ」や「インプ」みたいには、盛り上がらないのだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
人生最高の超絶ドライビング体験
私は若いころ、こういうラリーのベースマシン的なモデルに超憧れた。具体的には、「アウディ・クワトロ」系と「ランチア・デルタ インテグラーレ」系である。あれはものすごくカッコよかった。スーパーカーよりぜんぜんカッコいいと思っていた。
当時のスーパーカーは実用性ゼロ、値段も高すぎて雲の上だった。しかしラリー車は実用的かつ現実的でありながら公道でメチャ速い。『サーキットの狼』でいえば、公道グランプリのチャンピオンって感じで、真のヒーローだった。
なのになぜ、GRヤリスの人気は、一部マニア以外にあまり広がらないのか。
これは個人的な思いですが、WRCがつまんなくなったから、ってのはあるんじゃないか?
今のWRCは、映像を見てもあんまりおもしろくない。クワトロやインテグラーレのころは、観客はコースのすぐ脇に鈴なりだったし、その横をとんでもないスピードでブッ飛ばすラリーマシンたちは、ものすごくカッコよく、見ていて最高にスリリングだった。
私は過去2回、本物のWRCを観戦したことがある。1989年の1000湖ラリー(フィンランド)と、2002年のニュージーランドラリー(ニュージーランド)である。当時のWRCは、観客のすぐ横を全速でドリフトしまくっており、それを見るだけで震えがきた。
フィンランドでは、ラリー終了翌日、本物に近いコースで、サインツの「セリカ」とバタネンの「ギャラン」のナビシートを体験(取材です)できた。彼らは100mも空を飛び、空中でコーナリングしていた。あれは人生最高の超絶ドライビング体験だった。
しかし2004年のラリージャパン(北海道)は幻滅だった。あんな誰も見てないせまーい林道をブッ飛ばしたって、迫力もクソもない。観客はバスで護送され、コースからちょっと離れた安全な場所に押し込められて見るしかなく、まるで北朝鮮ツアーだった。今のWRCは、ほぼ全戦がそんな感じじゃないか?
いつの間にか話がWRC批判になってしまいましたが、「いまどき危険な競技はムリ」ってのもわかりますし、勝田選手の連勝は素直にうれしいです。GRヤリスの縦引きパーキングブレーキ最高!
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一/車両協力=トヨタ自動車)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第346回:EVかいわいで辰巳かいわいへ 2026.10.12 清水草一の話題の連載。日産の「サクラ」と「アリア」、そしてホンダの「スーパーONE」と、国内メーカーがリリースする3台のEVに立て続けに試乗した。三者三様の走りを味わい、リアルに感じたことをカーマニア目線で報告する。
-
第345回:10秒ごとの快感 2026.9.28 清水草一の話題の連載。実に16年ぶりのフルモデルチェンジとなった日産の新型「エルグランド」が狙うのは、圧倒的な強さを誇るトヨタのミニバン「アルファード」と「ヴェルファイア」の牙城だ。早速、首都高でエルグランドの走りを確かめた。
-
第344回:アンパンマンよりばいきんまん 2026.9.14 清水草一の話題の連載。メルセデス・ベンツの新型「CLAシューティングブレーク」が気になってしかたがない。理由はその特徴的なフロントフェイス。左右の目玉(ヘッドランプ)がつながったデザインがたまらない。果たして実車の印象は?
-
第343回:おやじ、涅槃で待つ 2026.8.31 清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない?
-
第342回:どうしてこんなに高いんですか 2026.8.17 清水草一の話題の連載。BYDが日本の軽自動車市場に向けて独自開発した電気自動車「ラッコ」が上陸した。早速、愛車「ダイハツ・タント」の後継として検討すべく、近所のディーラーで試乗することに。果たしてその印象は?
-
NEW
第61回:「あえてのフツウ戦略」に脱帽! 「スズキeスカイ」の若きチーフエンジニアを直撃!
2026.10.23小沢コージの勢いまかせ!! リターンズスズキの軽乗用EV「eスカイ」が注目を集めている。小さなバッテリーにして一充電走行距離310kmを誇る電費のよさはもちろんのこと、スズキらしさ全開ともいえる価格設定もまたスゴい。若きチーフエンジニアの杉山達樹さんにその秘密を聞いた。 -
NEW
第878回:スタッドレスタイヤなのにドライとウエット性能を強化? 「ミシュランX-ICE SNOW+」の走りを試す
2026.10.23エディターから一言2026年8月に発売された「ミシュランX-ICE SNOW+」は、氷雪路でのパフォーマンスはそのままに、ドライ/ウエット路面での性能向上を目指したという最新スタッドレスタイヤだ。冬道のさまざまな路面状況において安心感を提供するという、その走りを報告する。 -
NEW
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】
2026.10.23試乗記マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。 -
NEW
「マツダRX-7」の復刻部品を生産!? ミクニの挑戦は旧車オーナーの福音となるか?
2026.10.23デイリーコラムミクニが「マツダRX-7」向け復刻部品の開発検討を開始した。古い自動車部品の供給は、なぜここまで困難を極めるのか? ミクニの挑戦は世のロータリーオーナーにとって福音となるか? 日本の自動車文化に潜む課題と、その解決に挑む企業と人をリポートする。 -
自動車開発の“ここだけの話”が聞ける!? 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.10.22From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その話がライブで聞けて質問もできる公開収録を、11月5日(木)の夜、19時半から実施します。 -
2028年までに復活! 名車「シトロエン2CV」の現代版はその名に値する一台か?
2026.10.22デイリーコラムパリモーターショー2026の会場で大注目を集めた「シトロエン2CVコンセプト」。あの「2CV」の復活とあって多くのファンが目を輝かせるが、それは名車の名を継ぐに足る一台なのか? オリジナルの2CVに乗る今尾直樹が魅力に迫る。








































