つまずきを糧に成功をつかみ取れ! 新型「CX-5」に宿るマツダの変革と覚悟
2026.05.29 デイリーコラムクルマ自体もクルマづくりの姿勢も違う
2026年5月21日の発表(参照)に合わせて公開された、3代目「マツダCX-5」の試乗記(参照)で、僕はこれまでのマツダのクルマに対する向き合い方とは、ちょっと違う雰囲気を感じたと書いた。「つくり手の気持ちが前のめり気味だったこれまでのマツダと比べると、一歩引いた立ち位置でクルマをつくっているような感じがする」と。
これは、主には実車に触れての印象だったが、実はそれだけではない。試乗会において、最初にプレゼンテーションを行った上席執行役員の佐賀尚人さんは、「つくり手の独りよがりにならないよう、『お客さま起点・視点』を最優先に物事を考えてまいりました」と語っていたのである。続いての説明でも、商品概要、デザインと並ぶ3本柱のひとつとして、マーケティング・販売が掲げられたことが印象に残っている。CX-5は、グローバルで28%、国内では25%と、いずれもマツダの乗用車販売ではトップの販売比率を占めており、そのことから、試乗記でも触れたリーズナブルな価格、わかりやすいグレードやパッケージオプションの構成などが重視されたのだ。
試乗の合間には、若手を含めたエンジニアによる技術説明の時間も設けられていた。マツダの報道関係者向け試乗会ではおなじみのプログラムなのだが、これも過去の例とは異なり、まずはこちらが試乗の感想を聞かれるなど、以前よりインタラクティブな場となっていた。なので僕は、実車に触れて感じたシャシーについての印象を伝えるとともに、プレゼンテーションや試乗を通して不思議に感じたポイントを聞いてみた。
新型「CX-5」の走りが今後のマツダの軸になる
新型CX-5のサスペンションは、ダンパー減衰の初期応答を極限まで早めたうえで、バネレートを低めに設定している。これまでのマツダのクルマづくりでは、あまり耳にしなかったような内容だったので、「なにかきっかけになる車種や出来事があったのか?」と尋ねたのだ。エンジニアの口から出たのは「CX-60」「CX-80」という車名だった。
2022年にCX-60が発表されてから4年、今もメディアやユーザーの間で賛否両論が巻き起こっているラージ商品群のシャシーについては、社内でもいろいろな意見があったという。新型CX-5は、それを踏まえてチューニングがなされたとのことだ。加えて、あのしっとりしなやかな方向性の足まわりに関しては、より以前から研究開発が進んでいたものの、CX-60/CX-80には間に合わなかったこと、今後はCX-60/80もこの路線にそろえていきたいとも述べていた。
新型CX-5とCX-60は車格や価格がオーバーラップするので、後者は今の味つけのまま完成度を高めていき、異なる選択肢を提示するという考え方でもよいのではないかと感じたけれど、自動車会社はクルマが売れてナンボである。2025年の国内登録台数ランキングで、マツダ車のトップはCX-5であり、CX-60は5番目、CX-80は間に「ロードスター」を挟んで7番目だった。9年目を迎えていた2代目CX-5が、より新しいCX-60の倍以上売れていて、CX-60はオープン2シーターのロードスターとほぼ同じ台数だったという現実は直視すべきだろう。CX-60のキャラクターをCX-5に寄せ、CX-5はさらにユーザーの間口を広げるという方向性は、説得力がある。
新しいCMに感じるマツダの未来像
それにしてもおどろいたのは、取材後に明らかになったプロモーション戦略だ。新型CX-5の発表会で、同じ広島県生まれの綾瀬はるかさんをブランドアンバサダーに起用することを発表し、テレビCMにも出演することになったからである(参照)。
2012年に初代CX-5がデビューして以降、マツダのプロモーションは「スカイアクティブテクノロジー」や「魂動(こどう)デザイン」をアピールする内容がメインで、俳優や歌手など、有名人のCM起用はなかったと記憶している。それに広島県出身の有名人なら、もっと硬派な人もいる。読者の方々も何人かを思い浮かべることができるだろう。でもマツダは綾瀬さんを起用してきた。
すでにテレビでは、綾瀬さんが出演する新型CX-5のCMをひんぱんに見ることができる。これまでのマツダとはひと味違う、爽やかな映像と音楽。自動車業界でも「変われない日本」を痛感するシーンが散見されるなか、ここまで軌道修正してきたマツダには、未来があると感じたのだった。
(文=森口将之/写真=向後一宏、webCG/編集=堀田剛資)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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