第337回:「ルーチェ」に比べればタダ同然
2026.06.08 カーマニア人間国宝への道BEVとしてごく常識的で万人受けの方向性
担当サクライ君よりメールが届いた。
「今度、『日産リーフB5』(リーフの安いほうで、一充電走行距離469km)にご試乗いただけます。こちら、ご興味はいかがでしょう」
私はまだ新型リーフに乗ったことがなかったので、「もちろん乗る乗る~」と返信した。考えてみると、トヨタのBEV「bZ4X」にも未試乗だ。誰も声をかけてくれないのだから仕方ない。
新型リーフについては、「非常に良くなった」という評判を聞いている。たぶんそのとおりなのだろう。BEVに関しては、世間の評価を見ればそれで十分、という気持ちになるが、せっかく乗れるのだから、目を皿のようにして試乗せねば。
当日。サクライ君はほぼ無音でやってきた。暗くてよく見えないが、リーフの外観はBEVとしてごく常識的で、万人受けの方向性である。
思えば「フェラーリ・ルーチェ」の外観もごく常識的だが、全世界でたたかれている。その理由が「まるで日産リーフだ!」というものだったりするのだから、リーフは哀れなのか光栄なのか、どっちなのだろう。
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何も感じないくらいよくできている
走りだすと、実に常識的かつ万人受け的にいいクルマだ。加減速も乗り心地もきわめて洗練されていて、どこにも引っ掛かりがない。目を皿のようにしても、何も感じないくらい快適である。
なるほどそうか。BEVは進歩すると、こんなふうに何も感じなくなるのか。家庭用冷蔵庫のような、完全なる縁の下の力持ちになっていくんだな。
そういえばトヨタのbZ4Xも、「何も感じないくらいよくできている」らしい。もうこのクラスのBEVは、自動車ライターの評価なんかぜんぜん必要なさそうだ。私に試乗の声がかからないのも当然だろう。
私とサクライ君は、何も感じずに首都高を走る。早く完全自動運転が実現しないかなぁと思いながら走る。そこで思い出した。
オレ:そうだ、「プロパイロット」を試さなきゃね。
サクライ:そうですね。日産自慢の装備ですから。
私はステアリングホイールのプロパイロットスイッチをONにした。新型リーフは、実に滑らかに前車に追従して走る。速度コントロールは大変スムーズだ。
しかし、しばらくして気づいた。
オレ:このクルマ、ぜんぜんステアリング操作してくれないよ。
サクライ:えっ、おかしいですね。プロパイロットなのに。
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レーンキープ機能がOFFになっていた理由
何度かプロパイロットを入れたり消したりしてもダメ。どうしちゃったんだろうと思いつつよく見たら、レーンキープのボタンがOFFになっていた。
勇んでレーンキープボタンをON。いよいよハンズオフドライビングのスタンバイが完了である。
ところが、新型リーフのステアリングさばきは実に緩慢。まったく頼りない。ハンズオフどころか、これなら私の「プジョー508」のほうがまだちゃんと曲げるわ! というレベルである。国産の最新BEVのADASが、7年落ちのフランス車に負けてるなんてありえない。
これはドライバーの根性が足りないせいか? と思い、カーブでステアリング操作を我慢するが、簡単に車線を越える。隣のサクライ君は「あわわわわ」「コエーコエー」と騒いでいる。
オレ:サクライ君、これ、「プロパイロット2.0」付いてないんじゃないの?
サクライ:えっ、そんなことありますかね。
オレ:いやー付いてないよこれはきっと!
サクライ君はスマホで検索した。
サクライ:……リーフではプロパイロットが標準装備で、プロパイロット2.0は全グレードでオプションでした。
オレ:やっぱり!
結論。プロパイロット(いわゆる1.0)のステアリングアシストは、7年落ちのフランス車より性能が低く、気に障るようなムダなアシストも頻発する。だからレーンキープ機能がOFFになってたのね! 納得。
追伸:この翌週、プロパイロット2.0付きの「リーフB7」に試乗したところ、首都高でも問題なくハンズオフできました。しかしセットオプション価格約50万円はキツー! フェラーリ・ルーチェに比べればタダみたいなもんだけど。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG、フェラーリ/編集=櫻井健一/車両協力=日産自動車)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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