BMWアクティブハイブリッド7 L(FR/8AT)【試乗記】
怪力ハイブリッドリムジン 2010.07.07 試乗記 BMWアクティブハイブリッド7 L(FR/8AT)2010年7月に、いよいよデリバリー開始となるBMWのハイブリッド高級車「アクティブハイブリッド7 L」。BMWは、モーター付き原動機をどうチューンしたのか? 日本の路上で走らせた第一印象をお届けする。
ライバルと手を結び
「アクティブハイブリッド7」。「7シリーズ」に登場したハイブリッド・モデルである。「メルセデス・ベンツSクラス」に続いて、BMWもガソリンハイブリッド戦線に参戦! と書けばキナくさいが、実はこの2台、モーターや駆動用バッテリーなどのハイブリッドコンポーネントを共同開発している。「Sクラス」と「7シリーズ」といったら、言うまでもないガチンコライバルだが、ガソリンハイブリッド好きの日米市場で戦うという共通利益の下で手を結んだ呉越同舟(ごえつどうしゅう)のグリーン フルサイズセダンといえる。
15kW(=20ps)の電動モーターをエンジンと変速機との間にインストールしたハイブリッドシステムの基本は同じだが、アクティブハイブリッド7の性格というか、目指すところは、Sクラスとはおもしろいほど違う。Sクラスがアトキンソンサイクル化した3.5リッターV6を使うのに対して、こちらは「750i」用の4.4リッターV8ツインターボをベースにし、しかもその直噴ユニットを407psから449psにパワーアップしている。
モーターと合わせると、なんと70kgmを超す特大トルクを受け止めるために、変速機も「760i」(V12)用の8段ATにバージョンアップした。それらの結果、動力性能の伸びシロは明確で、0-100km/h加速は750i(5.2秒)をしのぐ4.9秒。「M3」並みだ。間違いなく世界最速のハイブリッドである。"アクティブ"という形容詞にとくに大きな意味はないが、強いて言うなら、「750i」よりさらにアクティブに走れるハイブリッド7ということだろう。
高性能「モーターボ」搭載
看板に偽りなし。アクティブハイブリッド7は、「750i」よりなるほどさらにアクティブなフルサイズセダンである。日本仕様は今のところロングホイールベース版の"7 L"のみ。車重2270kgに達するリムジンだから、静かで快適なことはもちろんだが、リムジンにあるまじき豪快さも顔をのぞかせる。
最も特徴的なのは、発進時の強力なトルク感である。グワっと出る最初の立ち上がりがスゴイ。低回転から最大トルクが出せるモーターのアシスト力を"見せつける"ような味つけである。どんなに注意深くアクセルを踏んでも、のけぞるようなスタートをきるため、少々やりすぎの感も覚えたが、高性能"モーターボ"的なハイブリッドとわかって求める人には期待通りかもしれない。
スピードが乗ってからの加速も「750i」以上である。とにかくエンジンそのものがパワフルなので、一旦走り出すとモーターの影は薄い。実際、ドライバー以外の乗員にハイブリッドと気づかれることはないはずである。パワーで言えば、449psのエンジンに対して、モーターはわずか20psなのだからそれも当然だ。その点、279psエンジンのSクラスハイブリッドは、中間加速でもモーターのアシスト感をもう少し感じることができる。
止まってから気付くこと
「あ、エコカーだったんだ!」と思わされるのは、アイドリングストップしたときである。といっても、エンジン停止/再始動のワザはよくチューニングされている。もともと室内の静粛性は高いから、アイドリングストップ中であることを示すタコメーター内の点滅サインを見なければ、それだって気づかないドライバーもいるかもしれない。
ただ一点、違和感を覚えたのはステアリングだ。アイドリングストップでエンジンが止まる(あたりまえだ)と、ステアリングのアシストもきれて、"ノンパワステ"になっている。ステアリングホイールを45度以上きれば、アクセルペダルを踏まなくてもエンジンがかかるが、いまどきそんな重いハンドルを回すことはないので、やってみるとギョッとする。信号が青になってすぐ曲がるときなど、まず右足を踏んでエンジンを再始動させる習慣をつけたほうが心臓にはよろしい。
ハイブリッドカーではとかく問題になるブレーキのチューニングはメルセデスSクラスより上である。Sクラスハイブリッドは停止直前に空走感があって、ブレーキの効きが悪いと感じることがある。7シリーズにそうした欠点はなく、2.3トン近い巨体をいつでも確実に止めてくれる。これは大きな優位点だと思う。
まずパワーありき
逆に弱点をあげれば、多少、ゴルファーフレンドリーでなくなったことだろうか。コンパクトなリチウムイオン電池をエンジンルームに収めたSクラスに対して、7シリーズではトランク内に置いた。そこをゴルフバッグで満杯にさせる実用性よりも、お家芸のイーブンな前後重量配分を優先させたのだろう。車検証の前後軸重を見たら、このハイブリッドリムジンも見事に50対50だった。
1420万円の価格は「750iL」の90万円高である。日本では緑色の印籠(いんろう)のようなハイブリッドカーだから、新車購入補助金と併せると、最大97万円の官製値引きが付く。短い試乗だったので、約4割向上をうたう燃費については確認できなかったが、なによりまずパワーありきのハイブリッドであることは間違いない。
(文=下野康史/写真=荒川正幸)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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