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【スペック】全長×全幅×全高=5210×1900×1485mm/ホイールベース=3210mm/車重=2290kg/駆動方式=FR/6リッターV12DOHC48バルブターボ(544ps/5250rpm、76.5kgm/1500-5000rpm)/価格=1920.0万円(テスト車=1954.3万円/スタースポークスタイリング251アロイホイール=9.0万円/マルチファンクションスポーツレザーステアリングホイール=3.3万円/セラミックフィニッシュ=9.5万円/サイドビューカメラ=7.3万円/USBオーディオインターフェイス=5.2万円)

BMW760Li(FR/8AT)【試乗記】

いまのBMWのすべて 2010.01.21 試乗記 島下 泰久 BMW760Li(FR/8AT)
……1954.3万円

BMW最上級モデルの特上グレード、「760Li」に試乗した。BMWが持てる技術をフルに注ぎ込んだフラッグシップサルーンは、果たしてどんなクルマだったのか?
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「軽やか」なビッグセダン

2009年3月より日本へ導入されている現行「BMW7シリーズ」の一番の特徴は、その走行性能だ。BMWの特徴が“走り”だなんて、改めて記すまでもないことだと言われてしまいそうだが、実際に7シリーズのそれは近年のBMWが辿ってきた変化の集大成的な仕上がりであり、またブランドのフラッグシップにふさわしい内容を持っていると断言できる。
そこに体現されているのはサイズを感じさせない走り。このセグメントで走りに「軽やか」なんて言葉を使いたくなるのは、このクルマぐらいのものである。

それを具現するために、7シリーズにはBMWが誇る技術のすべてが注ぎ込まれている。アルミ素材の多用による積極的な軽量化ばかりでなく、後輪操舵を連動させたインテグレイテッド・アクティブ・ステアリング、シャシーやエンジン、DSCなどの制御を複数のモードに切り換えられるダイナミック・ドライビング・コントロール等々、挙げていけばキリがないほどだ。

落ち着いたエクステリアに、質の高いハンドリング。そんなイメージは過去のものとなり、近年のBMWは見た目にせよ走りにせよ、あるいは操作系等々まで含めて、きわめてダイナミックでアグレッシブな方向へと舵を切った。現行7シリーズはそのひとつの完成形であり、また次の時代への幕を開くものだと言っていいだろう。そして、そうしたあり方は驚くべきことに、いや当然と言うべきか、シリーズそしてブランドの旗艦である「760Li」でも、まったく変わることは無かったのである。

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味わい深い12気筒

幅広のグリル、各部のV12ロゴ、左右2本出しのマフラー等々を与えられた外観は、それほど強く違いを主張するものではない。オーナーならわかる、というぐらいのものだ。ドアを開けるとスカッフプレート上のV12ロゴが透過照明で強調されていて、これまたオーナーだけに密かなよろこびをもたらしている。
インテリアも、ダッシュ上面までナッパレザーが張られ、ウォールナットウッドのトリムに象嵌細工が施されているなど、仕立ては特別。しかし華美なところはなく上質で洗練された雰囲気だ。

エンジンを始動すると、目覚めたV型12気筒ユニットが遠くでウーッと唸る声がかすかに聞こえる。この時代に、いやこの時代だからこそ、BMWはV型12気筒を大胆に進化させた。排気量5972ccの直噴ユニットは、新たにツインターボ化。最高出力は先代の99ps増しとなる544ps、最大トルクも同じく15.3kgm増しの76.5kgmに達する。ATも最新の8段へと進化。ブレーキエネルギー回生システムも備わる。

1500rpmという低回転で最大トルクの76.5kgmを発生させる特性だけに、動力性能は際立っている。2290kgにも達する車重をものともせず、発進や加速は軽やか。8段ATのおかげで、巡航中のエンジン音もごく低く抑えられている。
それでいていざ鞭を入れれば、6000rpmを超えてもなお至極スムーズに回転を上昇させ、それに伴ってリニアにパワーを増していく感触を楽しめる。その時のツブの揃った味わいは、さすが12気筒だ。

怒濤のトルク以外、基本的に特性からターボらしさはほとんど感じさせないのだが、ときおり意に反して急に飛び出そうとすることがあるのが、あえて言えば、のネガ。スペック上、悪化している10・15モード燃費もやはりネガか……と思いきや、豊かなトルクと8段ATのおかげで、特に巡航燃費は思った以上に良さそうである。

打てば響く「走り」

フットワークにも相変わらず感心させられる。鼻先にV型12気筒が載っているはずなのに、感触は750Liあたりを走らせている時とほとんど差がない。電子制御式スタビライザーの“ダイナミック・ドライブ”を標準装備とするだけに、むしろ軽快とすら感じられたほどだ。それでいて快適性も上々。特にダイナミック・ドライビング・コントロールをコンフォートにセットすれば、しっとりと上質なタッチを味わえる。

760Liの走りをして近年のBMWの到達したひとつの究極だと評したのは、こうして最先端の装備を数々投入することによって、ドライバーの意識を先回りしたかのような、まさに打てば響く感触を実現しているからだ。一方で、それが味わいを薄くしている部分も無いとは言わない。アクセルを踏み込み、トルクの湧き出すまでの一瞬のタメを味わう、なんて要素はもはや薄い。切れば切った分だけ曲がるフットワークは、一方で先代にはまだ残っていた大型サルーンらしい、たおやかな挙動を過去の話とした。しかし良くも悪くもそれが今のBMWであり、760Liもその例に漏れないということ。あとは好き嫌いの問題となるだろう。

BMWのフラッグシップに対する期待を、760Liは高い完成度によってほぼ完璧と言っていいほどに満たしている。これぞ今のBMWの哲学とテクノロジーのすべてを知ることのできるモデルである。

(文=島下泰久/写真=高橋信宏)


BMW760Li(FR/8AT)【試乗記】の画像 拡大

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(撮影協力:TOYO TIRESターンパイク)
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島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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