BMW X5 M(4WD/6AT)【試乗記】
1500万円に値する 2009.10.30 試乗記 BMW X5 M(4WD/6AT)……1551万7000円
BMWのハイパフォーマンスバージョン「M」が、「X5」に登場。スペシャルチューンを施された重量級SUVは、どんな走りを見せるのか?
見違える成長ぶり
2000年に「X5」が新登場したときには、いかに北米市場を重視するとはいえ、この大きく重いクルマをBMWは本気で作るつもりなのだろうかと疑問だった。付き合いで流行にのった、単なる帳尻合わせの車種みたいで、米国生産車ゆえのおおらかな仕上げの粗さも目についた。肝心の4WDの部分も、「323ix」しか経験のなかったBMWにとって、チューン不足は否めなかった。しかし年月を経て、数もこなしてきた結果、今では見違えるほどに洗練されてきている。
「X6 M」は、まさにBMWらしさの最右翼だ。SUVの“S”たらんとする意思がはっきり確認できるモデルと言える。今回試乗した「X5 M」はリアシートの実用性に加えて、この大きく重いクルマにBMWらしいスポーツ心を満載している。どこがどうMなのかは、写真を見ただけではわからないだろうが、実際の路上で体験すると納得する。
このX5 Mは1500万円クラスの高価格車であるが、実用的なアシであればこの半値以下で買える。単にオフロード用の4WD実用車が欲しければ、「メルセデス・ベンツGクラス」でも「トヨタ・ランドクルーザー」でも買えばいい。その差額分に値する満足度があるかどうか? 答えはイエスだ。
重さを忘れる身のこなし
今回は泥遊びなどをせず、本格的なオフロードでの実力は確認できていないが、この種のクルマでも走行路の大部分はオンロードであるから、一般道での実用性も大事だ。
このX5 M最大のセールスポイントである動力性能、これは555ps/6000rpm と69.3kgm/1500-5650rpm の数値を引き合いに出すまでもなく、BMW生産車中最大のパワーを誇るだけあって、2.4トンの自重を感じさせない圧倒的な加速を実現している。もちろんMモデルならではの6段ATの変速レスポンスなども大きく貢献している。
箱根新道など急勾配と曲折の連続道では、長い大型輸送車などが低速であえいで登っており、追い越し可能な区間は極く少ない。一方、対向車は高速で下ってくる。そんな状況のなかで一瞬のうちに追い越しできる能力は安全にも繋がる。またこの高性能に見合ったブレーキ能力も安心材料である。さらにピッと意思通りに切れるステアリングや、タイヤのグリップ力にも支えられたコーナリングの安定感も、この種のクルマのレベルを超えている。この分野も「ポルシェ・カイエン」の出現で大きく評価軸が変わってしまったが、BMWの迎撃は見事と言え、前後横方向にピッと即座に対応するレスポンスの良さは、まったく重量を感じさせない小気味よさがある。
微低速部分のマナーもよろしい。4.4リッターの大排気量はこうした重量級にこそ必要不可欠で、1000rpm前後の低回転でもムズがることはない。発進後すぐに2速に入れていいし、60km/h以下でも6速に送り込むことは可能だ。都内でクルマを受け取って横浜の自宅に帰りついたとき、ドライブコンピューターの燃費が7km/リッター台であったことに驚く。ついでに燃費について記せば、箱根・伊豆の山道を走って都内まで戻った291kmの総平均で、6.1km/リッターという数字は、重量と走りっぷりを考えれば望外の好成績と言えるだろう。
快適にして快感
最新の電子機器デバイスもぬかりはない。面白いものではトルク配分が矢印で表記される画面があるが、コーナリング中にみると後輪の外輪に多くのトルクをかけて、アンダーステアを軽減していることがわかる。
この試乗は同時に某国産4WDも比較に借り出しているが、その走りたるや、スポーツカーと商用車の違い以上のものがあった。ともに後輪駆動ベースの4WDではあるが、X5 Mは単に後輪配分を大きくしているだけではなく、左右輪間のトルク配分にも積極的で、重量級4WDにありがちのアンダーステア+アンダーステアの特性をここでも軽減させる対策が施されている。誤解をおそれずに言えば、ステア特性だけに着目するならば、FRのBMWより面白い。最近のBMWは旋回中心をずーっと後方にもってきて、パワーステアリングのギア比を小さくすることによって、前輪の切れの良さがあたかもニュートラルであるかのように錯覚させているが、それはFF車の特性に近づけているだけだ。将来の展望として、「7シリーズ」などを4WD化していく布石なのかもしれないが。
X5 Mは特化したモデルながら、普段の一般道の乗り心地も良好。良路は重量級らしくフラットな姿勢を維持、突起などのハーシュネスは、20インチの極太タイヤの容量がもたらすエンベロープ特性で包み込んでしまう。これらはただ見かけだけのパーツ装着ではない。ボディ剛性の高さやサスペンション取り付け部の強化にとどまらず、サスペンションアームの十分な長さや剛性がしっかり採られているからに他ならない。
高い運転席からの視界、本革の丁寧な仕上げの内装やシート、しっかり作られた車体、強靱な足回りなどなど、単なるSUVとしてだけでなく、パーソナルユースの普段のアシとしても使える。ある種のセダンより、またヘタなスポーツカーより、1500万円クラスの乗り物としては、快適にして快感かもしれない。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

笹目 二朗
-
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.9.2 BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――BMW M235 xDriveグランクーペ編
2026.9.4webCG Movies元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんが、BMWのコンパクトスポーツセダン「2シリーズ グランクーペ」に試乗。そのステアリングを握った印象を動画でリポートします。 -
NEW
北米産の800万円級SUV「トヨタ・ハイランダー」「日産ムラーノ」「ホンダ・パスポート」で一番“買い”なのはどれか?
2026.9.4デイリーコラム特例により国内導入されることになった北米生産のジャパニーズSUVは、3車種ともにサイズと価格帯が接近している。では、そのなかで最も“買い”なのは? それぞれの仕様を見比べてみた。 -
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。




