BMW X5 Mコンペティション(4WD/8AT)/X6 Mコンペティション(4WD/8AT)
ザ・スーパーカーキラー 2020.03.26 試乗記 フルモデルチェンジしたBMWのSUV「X5」「X6」に“M”印の高性能バージョンが登場。625PSものパワーを発生する新型は、いわゆるスーパーカーとはまた違った新鮮な速さを味わわせてくれた。速いSUVのパイオニア
最新のBMW X5(G05)と同X6(G06)にMハイパフォーマンスモデルの「X5 M」および「X6 M」を追加することが発表されたのは、2019年のロサンゼルスモーターショーだった。X5およびX6のMモデルとしては第3世代となる。
思い返せば、近年のこのSUVブームの背景には、さまざまなマーケティング要素やコンシューマーの嗜好(しこう)の変化に加えて、ハードの進化という重要な側面もあった。
要するに背の高いSUVが“フツウ”にドライブできるようになった。硬派なクロカン4WDが好んで用いるフレーム架装ボディーではなく、乗用車と同じモノコックボディーを採用することで、まるで“視界が高いだけのセダン”のように走るという新たな魅力をSUVに与えたのだ。乗り味が変わらないのなら、見晴らしがよくて相対的にデカいヤツに乗っている気分に浸れたほうがうれしいに決まっている。その端緒となったのが初代X5であり、BMWは特にSAV=スポーツ・アクティビティ・ビークルなどと呼んで新ジャンルであることを強調したものだった。
X5はまるで「5シリーズ」のようにワインディングロードを駆けぬけた。さらに衝撃的だったのは第2世代のX5および初代X6(SAVのX5に対してBMWはSAC=スポーツ・アクティビティ・クーペと呼ぶ)からはMハイパフォーマンスモデルが設定され、今度は「M5」のようにサーキットを駆けぬけたのだった。視線の高いぶんだけライントレース性に優れドライブが別次元に楽しいという、これまた高性能モデルの新たなジャンルを開拓したというわけだ。
初代X5デビューのあと、ポルシェをはじめプレミアムブランドがこぞってスポーツカーのようなSUVを開発し、果てはスーパーカーブランドまでがSUV市場を主戦場としつつあることは承知のとおりだ。
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あのスーパーカーも置き去り
「SUVだからといって開発手法に特別なことなど何もない。クルマはクルマ。セダンやクーペと同じように開発するまで」。そう言ってX5 M&X6 Mのシャシー開発エンジニアは胸を張る。それは、高性能かつ乗用に適したSUVにおける先駆者としての矜持(きょうじ)でもあるだろう。
ハード的に見れば、今回のX5 MとX6 Mの2モデルに差異はない。グレード設定も最近のMモデルの流儀にのっとって、スタンダードモデルとさらに高性能な「Mコンペティション」の2グレードをそれぞれに用意する。
旧型からのパフォーマンススペックの進化には驚くほかない。スタンダードグレードの4.4リッター直噴V8ツインターボですでに旧型比+25PSの600PSに達し、コンペティショングレードでは625PSを発生するに至った。最大トルクはいずれも変わらず750N・m。これに8段MステップトロニックATとM専用チューンのxDrive(4WDシステム)を組み合わせて、約2.3tもの巨艦を0-100km/h加速3.8秒で走らせる(X6 Mコンペティションの場合)。どれほどすさまじいかというと、例えば、5リッター時代の「ランボルギーニ・ガヤルド」よりも優れたダッシュ力である。その性能、スーパーカーキラー、だ。
単なるスポーティーなSUVではなく、とてつもない高性能を秘めているであろうことは、スタイリングからも容易に想像がつく。サーキット使用でも十分な冷却性能を得るべく大きく開いたフロントバンパーグリルに、巨大なタイヤとブレーキを仕込むため張り出したフェンダー、そしてリアエンドのスポイラーに左右合計4本出しのテールパイプなどなど、ベースとなったSUVとの差は明白だ。
勇気のないスーパーカーオーナーは、ミラーに映ったこの顔にご用心、である。
ハードな乗り心地にショック
BMWの「X」シリーズ(SUV)のうち、ミドルサイズ以上のモデル(「X3」から「X7」まで)はメインマーケットであるアメリカのサウスカロライナ州スパータンバーグ工場で生産されている(ほかに中国や南アフリカ)。昨年(2019年)のアメリカにおける生産台数は41万台以上で、全生産台数の実に約6分の1を占めた。それゆえX系の国際試乗会はアメリカで開催されることが多い。
今回の試乗会はアメリカが新型コロナ禍に見舞われる直前にアリゾナ州スコッツデールを起点に開催された。X5 MコンペティションとX6 Mコンペティションをじっくり試す。
この2モデルの中身は全く同じだと言った。スタイリングの違いから、X5 Mのほうが15kgほど重いという程度。車重2.3tもあるSUVにとっては誤差といっていいだろう。にもかかわらず、走りのテイストには明白に違いが見られた。結論から言うとX5 Mコンペティションのほうが断然乗りやすかったのだ。
先に試したのはX6 Mコンペティションだった。体を抱きかかえるようにサポートするシートに早くも気分は戦闘モードである。モードといえば、ドライブモード選択の操作がいっそう分かりやすくなっていた。まずはすべてがコンフォートとなっていることを確認して、スコッツデールの街中を走りだす。
第一印象は「めちゃくちゃ硬い」だった。ひょっとして足まわりのモードだけがスポーツプラスになっていたか? とあらためて確認しなければならなかったほど。間違いなくコンフォートに入っていた。これまで試した高性能SUVのなかでも、スパルタンさにおいては最高の部類に入りそうだ。特に40km/hくらいまでの実用低速域において路面からの突き上げがゴツゴツと顕著である。アメリカの舗装路は硬く荒れているとはいえ、それを差し引いても硬い乗り心地だと言わざるを得ない。
もっとも、速度が上がっていきさえすれば、硬いアシのダンピングが利き始め、フリーウェイを走るころには乗り心地が少しはマイルドに感じられるようになった。とはいえ、これに毎日乗るのは酷だな、と思ったのもまた事実である。
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ラフな道でも思いのままに
X6 Mコンペティションが誇る625PSのピークパワーを少しでも味わえるようにとイベントチームが用意してくれたのは周囲にまるで人家のない荒涼とした大地を、アップダウンを繰り返しながら縫うように走る占有道路だった(いつもはサーキットだが)。もちろん舗装は街中よりもさらに荒れていた。車高の高いクルマで走ることを推奨すると入り口にも書いてある。SUV以外は入ってくるなよ! という意味だ。
ドイツ・ニュルブルクリンクあたりでの走行をイメージして、エンジンと4WD、ブレーキはスポーツプラスにセットし、残りのシャシーとステアリングはコンフォートのままというドライブモードセットとした。ちなみに他の最新Mモデルと同様、好きに組み合わせたドライブモードを2つまで記憶させ、ステアリングホイールの赤いMレバー(1と2がある)で即座に呼び出すこともできる。ドライブモードのセットアップだけでなく、サウンドや変速時間など車両上で選択可能なものすべてを組み合わせて記憶させることもできる。
またこのモデルからは「Mモード」というセッティングスイッチも用意されており、これを使えば運転アシストやヘッドアップディスプレイなどを状況に応じて変更することができる。モードには「ロード」と「スポーツ」があり、今回試乗したMコンペティションには「トラック」も追加設定されている。要するにサーキットで運転支援はないだろう、という話だ。それにしても、ネーミングが悪い。Mモードとくればもっと攻めた走りのセッティングをイメージしてしまう。
荒れ放題のワインディングロード。けれども果敢に攻め込んだX6 Mコンペティションのドライブフィールはまるで、水を得た魚ならぬ“ハコネを得たスポーツカー”、だった。V8エンジンが豪快なサウンドをまき散らす。爆裂音を伴うシフトダウンもさることながら、キレ味の鋭いシフトアップも大いに愉快だ。パワートレインが右足の動きにレスポンスよく反応する。そして、踏めば踏むだけ利いて重さを感じさせない制動フィールと、何よりも、左右の後輪にトルクを最適に分配する「アクティブMデファレンシャル付き4WDシステム」がもたらす精緻で洗練されたステアリングフィールがあるからこそ、荒れたワインディングロードにおいてこの大きなSUVをまるでスポーツカーのように走らせることができたのだ。
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“6”と“5”ではずいぶん違う
BMWらしい正確なステアリングフィールに背が高いゆえの優れた視認性も手伝って、前輪を思った位置へと確実にもっていける。そのあとはアクセルペダルをひと踏みすればいい。そこからはスーパーカーも顔負けの強力な加速フィールを楽しむことができる。“高いところでぶっ飛ぶ感覚”には、地面すれすれで感じる速さとはまた別種の楽しさとスリルがあった。
もう少し実用速度の領域で乗り心地がよかったなら。そう思いながらX5 Mコンペティションに乗り換えて、驚く。確かに硬いが乗り心地そのものははっきりとベターだ。そのうえ運転もしやすい。X6から「X4」に乗り換えたくらいのコンパクトさを感じた。
おそらくフロントスクリーンのサイズと形状の差がもたらす視覚的な違いだろう。X5 Mコンペティションのほうが当然ながらAピラーが立っていて背も高い。フロントスクリーンがX6 Mより大きく広がっているのだ。それゆえX6 Mよりも相対的に幅の狭いクルマに乗っているように感じる。けれどもどうやらアシのセッティングも違うように思えた。ドライブモードを全く同じ条件にして試してみても、X5 Mのほうが断然しなやかに動くし、アシに心地よいタメもある。だから運転しやすい。
試乗を終えてすぐに冒頭のエンジニア氏に尋ねてみた。回答は、「ハードもトレッドも同じ。違うのは電子制御のソフトだけだ。モデルのキャラクターが違うから、わずかにチューニングを変えてある」ということだった。例えて言うならX5 MはM5で、X6 Mは「M8グランクーペ」だということだろう。
「で、どうだった、新しいMのSUVは?」。そう聞かれたので正直に告白した。「M5の存在をほとんど忘れそうになったよ」。
くだんのエンジニア氏と同席したプロダクトマネージャーは苦笑した。
「“ほとんど”と言ってくれて少しホッとしたよ」。Mの責任者はそう言って顔をほころばせた。
(文=西川 淳/写真=BMW/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
BMW X5 Mコンペティション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4938×2015×1748mm
ホイールベース:2972mm
車重:2310kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:625PS(460kW)/6000rpm
最大トルク:750N・m(76.5kgf・m)/1800-5800rpm
タイヤ:(前)295/35 ZR21 107Y/(後)315/30 ZR22 107Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:12.8-13.0リッター/100km(約7.7-7.8km/リッター、欧州複合モード)
価格:1859万円/テスト車=--円
オプション装備:
※価格は日本仕様のもの。
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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BMW X6 Mコンペティション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4941×2019×1693mm
ホイールベース:2972mm
車重:2295kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:625PS(460kW)/6000rpm
最大トルク:750N・m(76.5kgf・m)/1800-5800rpm
タイヤ:(前)295/35 ZR21 107Y/(後)315/30 ZR22 107Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:12.5-12.7リッター/100km(約7.9-8.0km/リッター、欧州複合モード)
価格:1899万円/テスト車=--円
オプション装備:
※価格は日本仕様のもの。
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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