トヨタ・プリウス Gツーリングセレクション レザーパッケージ(FF/CVT)/G(FF/CVT)【試乗速報】
おもしろくなってきた!! 2009.05.26 試乗記 トヨタ・プリウス Gツーリングセレクション レザーパッケージ(FF/CVT)/G(FF/CVT)……349万6800円/302万6450円
10・15モード燃費はなんと38.0km/リッター! 発表からわずか1週間で、予約も含め約10万台もの受注があったという噂の新型「トヨタ・プリウス」は、はたしてその人気に見合うクルマなのか? 試乗会初日の“とれたて”インプレッションをお伝えします。
「プリウス」が「インサイト」を一歩リード
たった今、新型「トヨタ・プリウス」の試乗会(初日)から戻りました。異なる仕様の「プリウス」をとっかえひっかえ乗った印象を書かせていただきますが、何が知りたいって、やはり焦点は「ホンダ・インサイト」とどっちがいいの? という部分だ。
結論から書くと、乗り心地のよさや静かさなどの快適性、後席の広さという実用性、それに余裕ある動力性能などをトータルで考えて、「プリウス」に軍配をあげる。しかもそういった実用面だけでなく、「プリウス」には“新しいモノ”にふれる喜びもある。それは、液晶テレビが初めてわが家に来た日のウキウキ感にも似ている。
ホンダとしては、189万円からという「インサイト」の低価格をウリにするつもりだった。けれども、「プリウス」の最廉価版が予想よりはるかに安い205万円に設定されたことで、目論見は外れた。しかも189万円の「インサイト」にVSA(横滑り防止装置)やサイドエアバッグなどの安全装備をオプションで装着すると、軽く200万円オーバー。いっぽう205万円の「プリウス」には、その2つに類する安全装備は標準で付いている。つまりは、「インサイト」の価格での優位性にも「?」が付く。
ただし「プリウスの勝ち」よりも、「プリウスのリード」という表現のほうが正確かもしれない。「プリウス」対「インサイト」のバトルは今後50年、100年にわたって世界中で繰り広げられる、長い長い物語のほんのさわりにすぎないからだ。1回の表、先攻のトヨタが打者一巡の猛攻で5点を先取したぐらいの感じだ。解説席に冷静沈着な古田敦也さんが座っていれば、「まだ8イニングありますから」と楽勝ムードにクギを刺すに違いない。
いいカーオーディオを奮発したくなる
2代目の先代「プリウス」をよくご存じの方が新型をごらんになったら、あまり変わっていないという印象を抱くかもしれない。外観のデザイン、インテリアの造形、そしてハイブリッドシステムのメカニズムにいたるまで、基本的なコンセプトは先代を踏襲しているからだ。ただし、実際に座って、乗って、使ってみると、クルマとしての魅力が大きく増していることがわかる。
「POWER」ボタンを押すと、「ピ」という電子音とともにハイブリッドシステムが起動する。アクセルペダルを踏むと、エンジンはお休みしたままモーターの力だけでスーッと発進する。この瞬間、だれもが新しい乗り物だと感じるはずだ。このEV(電気自動車)走行は従来型でも経験できたけれど、モーターの最高出力が50kWから60kWに向上したことから、新型「プリウス」のほうが余裕のある加速を見せる。エンジンの排気量が大きくなったような感触だ。
バッテリー残量に余裕があれば、アクセルペダルをそっと踏んでいる限り55km/hまでEV走行を続けられる。距離にすると、最高で2kmのEV走行が可能だ。EV走行時の車内は驚くほど静かで、あたりまえだけれどエンジンの振動もないからすこぶる快適、いままでのクルマとは明らかに違う。もし「プリウス」を買うならば、高音質カーオーディオを奮発してもいいかな、と思う。
バッテリーが底をついたり、速度が上がってより一層のパワーが必要になると、ここでようやくエンジンが眠りから醒める。エンジン始動時に音やショックを感じることはないから、気がつくと、いつの間にかエンジンとモーターと一緒に働いているということになる。目覚めがいいタイプのエンジンなのだ。ここから先は、エンジンとモーターが抜群のコンビネーションで互いを助けながら、加速したり高速での走行を行うことになる。その連携はあまりにスムーズで、運転していても気付かないくらいだ。
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パワーアップで燃費も向上
先代との明らかな違いは、高速走行時に静かになったこと。開発のまとめ役を務めた大塚明彦チーフエンジニアによると、静かになった理由は3つ。まず、ボディの空力性能が上がったこと。これにより、風切り音が減った。次に、ノイズや振動を吸収する素材を適切に配置したこと。そして、エンジン排気量を1.5リッターから1.8リッターに拡大したことだ。パワーに余裕が出たおかげで、エンジン回転をそれほど上げずに高速走行ができるようになった。
先代モデルに比べて、走行時のしっかり感が明らかに増したこともドライバーとしては嬉しい。先代モデルはステアリングホイールから伝わる感触が頼りなく、路面が滑りやすいのかどうかの情報が、いまいち曖昧だった。けれども新型「プリウス」は地に足が着いている感じがするから、自信を持ってドライブすることができる。
コーナーを曲がる時のダイレクト感も増した。先代は、ステアリングホイールを回して少し時間が経ってから曲がり始めるようなタイムラグを感じたけれど、新型はそうした“時差”がなくなった。電動パワーステアリングやサスペンションのセッティングの見直しを図ったとのことで、スポーツ走行に向いているとは言わないまでも、クルマとドライバーとの距離がグッと縮まった感はある。
ブレーキング時の違和感も大幅に減少した。というか、違和感はゼロになった。減速時のエネルギーを回収してバッテリーに蓄える回生ブレーキの機能があるため、先代までの「プリウス」のブレーキの踏み応えはムニョムニョとしたものだった。また、時としてブレーキを踏む力とブレーキの利きが比例しないキモチ悪さも感じた。けれど、新型は力を込めてペダルを踏めば、踏んだぶんだけブレーキの利きも強くなる。あたりまえと言えばあたりまえだけれど、「プリウス」のブレーキシステムの複雑さを思えば、普通に作動するのは立派なことなのだ。
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後席に座るとびっくりする
ここまで、新型「プリウス」を走らせた印象をまとめてみると、まず発進から高速まで、パワーに余裕が出て静かになった。乗り心地も従来型よりしなやかになっている。ステアリングホイールの手応えやブレーキの感触などが自然になったことも嬉しい進化だ。「ハイブリッド車としては……」という前提を抜きにして、クルマとしてひとつ上のステージに上がるモデルチェンジだと言える。
室内に目を転じてはっきりわかるのが、後席が広くなったことだ。頭上と足元、どちらのスペースもはっきりと拡大した。身長180cmの筆者が前席のシート位置を合わせてから後席にまわっても、リラックスした姿勢で腰掛けることができる。ポイントは、ボディ全長が15mm伸びたことにあるという。全高は変わらないけれど、ボディが伸びたことで屋根の一番高い部分が後ろ側に移動した。そして前席シートの骨格を薄くしたこととの相乗効果で、後席のスペースに余裕が生まれた。
前席の居住性は従来型と変わらない。センターメーターも踏襲している。ただし、従来型ではセンターコンソールのモニターに表示された「エネルギーモニター」(エンジンとモーターがどのように動いているかを表示)や「燃費履歴画面」など、エコドライブを支援するグラフィックがセンターメーター内に引っ越した。慣れるまでは見にくいし、慣れてからは細かな文字やグラフ、絵柄がゴチャゴチャしてわずらわしい。この点は、アクセルペダルの踏み加減を色で表示して直感に訴える「インサイト」方式のほうが好ましく思えた。
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強い人こそ優しくなって
新型「プリウス」はやはりたいしたもので、すでに発注した10万人(!)の方もおおむね満足するだろう。ただ、冒頭にも記したように、ゲームは始まったばかり。「インサイト」のハイブリッドシステムにも、あまり手を加えずに小型車にポンと付けられる利点がある。たとえばハイブリッドシステムを備えた軽自動車や、ライトウェイトスポーツカーなども期待できる。
ゲームの参加者は、トヨタとホンダだけじゃない。たとえば中国の一部の地域では電話よりもケータイやインターネットの普及が早かったように、何らかの技術革新があれば、ハイブリッド車を飛び越えて、EVが世界を制する可能性だってある。すると、自動車メーカー以外もこのゲームに加わるだろう。どんなストーリーになるのかはわからないけれど、いよいよおもしろくなってきた。ワクワクだ。
何が起こるかわからない、と思っていたところに「トヨタがハイブリッド技術のGMへの供与を検討」というニュースが飛び込んでくる。
もちろん会社とは儲けを追求して生き残りを図るものなのだろうけれど、差し迫る環境問題を乗り越えるには、自動車メーカー同士、そして自動車メーカーとユーザーが力をあわせることも必要ではないか。
先代「プリウス」を「インサイト」と同じ189万円で売るというのは、商売としては当然の作戦なのだろう。けれどもずっとクルマに乗り続けたい者としては、ケンカはやめて、と思う。エコのために争わないで、と切に願うのです。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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