フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン(FF/7AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン(FF/7AT) 2009.05.01 試乗記 ……341万4000円総合評価……★★★★★
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」が、6代目に進化した。コンパクトハッチバックの代名詞的存在――その最新型は、どんなクルマに仕上がったのか?
大成功!
ゴルフらしさという基本コンセプトを変えることなく新しさを実現した、外観デザインの変貌ぶりは見事。それ以上に、従来のコンポーネンツを使いながら、各部にファインチューニングを施し、一段と走行感覚に磨きをかけたのには驚きを禁じえない。
見た目では、コストを上げた様子は見当たらないのに、走らせると、そこかしこから上質な感じが伝わってくる。35年間で2600万台以上を販売してきたベストセラーカーのモデルチェンジとしては、大成功と思う。
唯一改善されなかった箇所として、アクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏むとエンジンがストールしてしまう点が挙げられる。例えば、ブレーキペダルを踏んでの停車状態から「さぁ出よう」とサッとペダルを踏み替えるとき、両ペダルに足がかかるシチュエーションはありうる。そんなとき、靴の一部がアクセルペダルに触れただけでも律儀にエンジンはストールしてしまう……また新たな事故を招きかねないか、心配である。
アウディとフォルクスワーゲンにとって、過去に起きたAT車のブレーキペダル踏み違いによる事故が未だにトラウマとなっているのはわかるが、せめてリカバリーをもっと速やかにする必要がある。
この現象はツインチャージャーよりもシングルチャージャーの方が程度は軽く、エンジンストール後の繋がりもよりスムーズだ。この点では廉価モデル「TSIコンフォートライン」のほうがオススメである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」は1974年に誕生した、コンパクトハッチバックの代名詞的存在。現行モデルは6代目にあたり、2008年10月に本国でデビュー。日本では、2009年4月に発売された。
先代モデルのプラットフォームを引き継いだボディサイズは、ほぼ変わらず。環境性能をはじめ、静粛性や上質感を高めたとされる。
日本では、1.4リッター直噴ユニットをターボで過給する「TSIコンフォートライン」と、ターボ+スーパーチャージャーを備える「TSIハイライン」の2種類がラインナップ。ともにボディ形状は5ドアで、ハンドル位置は右となっている。
(グレード概要)
試乗車は、上級グレードの「TSIハイライン」。ターボとスーパーチャージャーを併用する“ツインチャージャー”ユニットは、160ps/5800rpmと24.5kgm/1500-4500rpmを発生する。すでに先代の「ゴルフ」で導入済みのエンジンで、新型では出力が10ps落とされている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
スッキリとしたインストゥルメントパネルのデザインは、豪華さや迫力こそ乏しいが、シンプルで見やすい。数字の表記やレイアウトには好感がもてる。センターコンソールの空調やオーディオなどの配置も常識的ではあるが、それだけに完成度は高い。自動車界の“世界標準”としてまとまりは上々。今後はこれくらいのレベルが★3つの評価基準となるだろう。
(前席)……★★★★
サイズ、形状、座り心地とも良く、各調整機構も完備しており、コストパフォーマンスは高い。座面の後傾斜角も十分で、長距離長時間のドライブにも適応している。空間的にも広々としており、足元は言うにおよばず頭上の空間も十分。レバー式サイドブレーキやT型のATシフトレバーはややクラシックな趣きではあるが、操作性を突き詰めていけば、やはりコレが正解。むりやり新奇なものに移行する愚を犯していないのは好ましい。
(後席)……★★★★
シートそのものは座面の前後寸法がやや短かったり、スクエアな車内空間のせいか囲まれた安堵感のようなものは少ないが、開放的で明るい雰囲気は好感がもてる。背面の後傾斜角も寝過ぎておらず、お尻が前にずれるのを防ぐ。乗り心地としては前席よりやや上下Gが大きいが許容範囲だ。フロアの構造のせいで靴の踵の置き場が気になる。FF車だがセンタートンネルの出っ張りも少し見受けられる。
(荷室)……★★★★
きちんとしたスクエアな空間でフロア内側の面積も十分、おおむね使いやすい大きさ。ハッチゲートはバンパー高から開くがフロアはもっと低い。エンブレムの裏側に設置されたリアビューカメラの作動音がトランクから聞こえてくることもあるが、後席でもこもり音の類は低く抑えられ、リアサスやタイヤからの遮音も十分だ。リアシートの背を倒せば広大な荷物スペースとなる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
ツインチャージャーで160psを発生する1.4リッター直噴エンジンは、高性能と経済性の両方を兼ね備える。7段となったDSG変速機は発進時にエンジンを過回転させることもなく、アイドリングから即座に加速体制に入る。したがって発進の振る舞いは静かで優雅。このエンジンとギアボックスは新型ゴルフのもっとも個性的で魅力的な部分であり、これが世界標準となると、追従するライバル達に要求される努力も大変なものとなろう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
新型ゴルフの改良点のなかで、乗り心地の向上は地味ながら嬉しい項目のひとつ。サスペンションのストローク感や動きのスムーズさが改善されて、特に小ストローク域で乗り心地が良くなった。この動きに伴って初期ロールの発生が素直になり、大きくは傾かないものの、外輪にスッと荷重が移り、そのトレッドの広さを実感する。こういった一連の挙動は厭味のない操舵感と操縦安定性を与えてくれる。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2009年4月21日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年型
テスト車の走行距離:6308km
タイヤ:(前)225/45R17(後)同じ(いずれも、ミシュラン PRIMACY HP)
オプション装備:RNS510+ETC+Media-in+リアビューカメラ=29万4000円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:298km
使用燃料:26.7リッター
参考燃費:11.16km/リッター

笹目 二朗
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。































