トヨタ・クラウンマジェスタGタイプ Fパッケージ(FR/8AT)【試乗記】
これぞニッポンの技 2009.04.28 試乗記 トヨタ・クラウンマジェスタGタイプ Fパッケージ(FR/8AT)……926万5000円
日本人の好みや指向を徹底的に研究して造られたクルマ「クラウンマジェスタ」。“グローバル化”という言葉に翻弄されない国内専用モデルの魅力とは? 最上級グレードを試した。
人間を楽にするツボ
このページを見てくださっている読者の皆さんの多くは、もしかしたらヨーロッパのクルマが大好きなのではないか。だとしたら「トヨタ・クラウンマジェスタ」なんぞ、「どうよ?」と思うかもしれない。とにかく「ニッポン」してるクルマだから。料理でいうなら和食。お客さんの喜びそうなものを彩り良く詰め込んだという点では、老舗の料亭の特製松花堂弁当みたいなクルマなのだ。
でも、それこそがマジェスタの最大の魅力でもある。日本の平均的なクルマ生活の形、つまり道路が混んでいて速度も高くなく、あまり遠出も多くない中で、何より安楽さと便利さを最優先させてある。乗用車の役割は人間を楽にすることだから、どんな人が乗ってどう走りたいのか、徹底的に観察し抜いたところが凄い。
乗った印象を総括すると、まずリアシートがとても広い。クラウンよりホイールベースを75mm延ばしたぶん全部をリアシートにあげた結果、のうのうと脚を投げ出すどころか組んでも前に当たらない。電動でリクラインさせると、デレッとだらしなく寛げる(その場合、お尻が前にずれそうだが)。
最高級グレードの「Gタイプ Fパッケージ」(これのみ4人乗り)では、リアの左側だけ電動で足乗せ台(オットマン)も出てきて、旅客機のファーストクラスのようにゆったりお休みモードにもできる。普段は軽く見ていても、いざ使ってみると快適で、なるほど、こういうクルマは誰かに運転してもらうものだと思ったりする。
静かさピカイチ
それに、静かだ。もともと静粛性では定評のある4.6リッターのV8(1UR-FSE、つまりレクサスLS460と同じ、ただし4WDは4.3リッター)だが、やたら遮音を効かせた不気味な感じではなく、エンジンらしい響きの快い部分だけを耳に届ける、いわば「聞かせる静けさ」が巧く演出できている。もっとも、普通に走る範囲では、ことさらエンジン音を味わうチャンスは少ない。軽く踏んでせいぜい2500〜3000rpmほども引っ張れば、あとは8段ATが勝手にシフトアップして、どこまでもス〜ッと滑るように行ってしまうからだ。
もちろんクルマの性格からしてマニュアルモードなど余興にすぎない。たぶんユーザーのほとんどは、生涯Dレンジしか使わないだろう。ちなみにトップギア(8速)での100km/hはわずか1500rpmにすぎず、これでは音など気になるわけがない。
いや、だからこそ褒めたいのがクルマ全体の静粛性。エンジンが静かだと、相対的にほかの音が聞こえやすくなるものだが、風切り音もロードノイズも非常に効果的に締め出されている。それも重量を増さないよう、必要最低限の遮音材で実現したというから、まさに殊勲賞ものだ。
乗り心地は柔らかいが、けっしてグニャグニャすぎるわけでもない。さりとて堅固な芯を秘めているわけでもなく、意地悪く言えば少し前の時代っぽい。そこで不思議なのは、よく観察すると確実にフラットに車体を支えてくれて、大きな凹凸を通過しても、フワッと来る上下動をしっかり吸収し反復しない。これはこれなりに程良いまとまりだろう。
マジェスタの存在理由
ハンドリングは基本的に大味。普通に走れば普通だからまったく問題ないし、とても扱いやすいが、緊急回避的な状況では、ドライバーの動きに対しクルマの反応が少し遅れ気味。ちょっと元気に攻めると、どうしてもコーナリングのラインが膨らみ気味になる。ここはコンマ何秒か早め多めに切り込むのがコツ。もっとも、これは上級バージョンの話で、ベーシック級のAタイプにスポーティな味付けを施した「Lパッケージ」だと、予想以上にシャッキリ鋭く曲がってくれる。
どちらもタイヤサイズは同じ(235/50R17 96V)だが、のんびりエコ仕様(ヨコハマdB675)とキビキビ仕様(BSトゥランザER23)の性格付けにも原因があるかもしれない。これは優劣の問題ではなく、マジェスタをとう使いたいかで選ぶべきものだ。
もちろん日本の、しかもトヨタの、それもこんな高価格車だから、ここに紹介しきれないほど装備も充実している。メーターの文字の大きさやコントラスト、ナビ画面のサイズなども充分で老眼に優しい。想定したユーザー像を正確に理解している証拠だ。
それならクラウンで充分という声も聞こえそうだが、そこにマジェスタならではの存在意義もある。クルマ界には「上下」を意識する階級意識があり、特にオーソドックスなセダンでは根強い。その中でクラウンが支持されているのは、何より「トヨタ」だから。成功してはいるが、無用に背伸びしていない記号として、トヨタはレクサスより信用されている。でもクラウンは圧倒的な多数派だから、それより「上」で、しかも「トヨタ」という選択肢として、マジェスタを選ぶ理由がある。でも作る側としては、クラウンより上級だがレクサスを超えることは許されないわけで、すごく苦労したに違いない。
(文=熊倉重春/写真=郡大二郎)
拡大
|
拡大
|
拡大
|

熊倉 重春
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。


































