プジョー308SWグリフ(FF/4AT)【試乗速報】
ハッチよりネコっぽい 2008.09.18 試乗記 プジョー308SWグリフ(FF/4AT)
……389.0万円
プジョーの中核モデル「308」シリーズに、7シーターワゴン「SW」が追加された。このクルマ、「ネコ好き」にはたまらないかも……。
単なるバージョンアップ版にあらず
これはもう「お家芸」といってもいいかもしれない。「プジョー308SW」に乗ってそんな感想を持った。
308SWはれっきとしたニューモデルである。しかしじっくり観察すると、2002年にデビュー以来、世界レベルでは6年間で90万台を売り、日本ではハッチバックと同等のシェアを獲得するほどの人気を獲得した前作「307SW」のバージョンアップ版といえなくもない。
ガラスルーフの7人乗りワゴンというコンセプトは共通。2/3列目シートがすべてセパレートで、折り畳みと取り外しが可能であることも同じだ。プラットフォームもキャリーオーバーしていて、ハッチバックよりホイールベースを100mm伸ばしたという点も一致する。トランスミッションが4段ATであることも不変だ。大きな違いは、2リッター自然吸気のエンジンが1.6リッター直噴ターボに変わったことぐらいかもしれない。
でもそれゆえに、熟成のうまみを感じる。オールニューのモデルでは、この味は出せないはずだ。たとえばユーティリティでは、全幅の拡大を生かし、2列目の中央席の幅が左右と同じになった。3列目は依然として「+2」の域を脱していないが、それをふまえて外したときの持ち運びがしやすい形状になっている。ガラスハッチが追加されたことも前作との違いだ。バージョンアップの好例を見ている感じがする。
それでいてスタイリングは、いまにも獲物に飛びかかりそうなフロントマスクに合わせて、リアウィンドウとコンビランプをサイドに回り込ませて矢印を描き、前進感を強調している。「207」や「407」のSWと同じデザインモチーフを導入したわけだが、これだけでかなり軽快になった印象だ。
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フランス車のガラスルーフはひと味違う
自慢のガラスルーフは、ウィンドスクリーンの傾きが強まったためにフロント側は後退した印象だが、リア側が伸ばされたおかげで、旧型より27%拡大している。今度は3列目でも、風のないオープンエアモータリングを堪能できるようになったというわけだ。
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ちなみにこのガラスルーフ、赤外線を86%、紫外線を99%カットする。試乗した日は夏のような陽ざしが降り注いでいたが、全然ジリジリしなかった。これはフランス車全般にいえること。ガラスルーフは全部同じと思っている人もいるだろうが、そういう人もプジョーと国産車を乗り比べれば、遮熱性の違いを肌で感じ取れるはずだ。
車重は前作307SWより100kg、ハッチバックより200kgほど重い。そのため右足の動きに対する反応はそんなに鋭くはないけれど、発進の瞬間を除けば全域過給といえる特性なので、スロットル操作でトルクを調節できるターボの性格を生かせば、1.5tを超えるボディを自在に加速させることができる。ターボならではの懐の深さは、自然吸気2リッターを積んでいた307SWにはなかったもの。ひとことでいえばラクして速いエンジンなのである。
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老舗が生み出す芳醇の香り
乗り心地は車体の重さがいい方向に働いているのか、307SWや308ハッチバックよりしっとりしている。2台よりもおとなになったな、という印象だ。そのぶん電動油圧式ステアリングを切ったときの反応はおだやかだが、15%アップしたねじり剛性、25mm低められた車高、ワイドになったトレッドのおかげで、ロードホールディングは確実にアップした。
コーナーの途中でアクセルを動かしても挙動変化が出たりすることはなく、ペースを上げてもスルッとコーナーを抜けていってしまう。たしかにプラットフォームは307SWの発展形だが、ワイドトレッドやネガティブキャンバーといった308で導入された技が確実に結果に反映されているという印象だ。
ガラスルーフの7シーターワゴンは、僕の記憶する限りプジョーだけしかない。そのプジョーが、既存の技術を熟成させるという手法で生み出した308SWは、ユーティリティからハンドリングまで、あらゆる部分がレベルアップしていた。
時代が時代だけに、こういうモデルチェンジがあってもいい。100年以上の歴史を持つ老舗らしい熟成のネコ足を、ガラスルーフからの心地いい光とともに堪能することができた。
(文=森口将之/写真=郡大二郎)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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