フォード・エクスプローラー エディバウアー プレミアム アピアランス(4WD/6AT)【試乗記】
変わらぬ安心感 2007.12.24 試乗記 フォード・エクスプローラー エディバウアー プレミアム アピアランス(4WD/6AT)……535.0万円
2008年モデルが発表された「フォード・エクスプローラー」。ニューモデルを試す前に改めて現行モデルを再検証。エディバウアーの特別限定車に試乗した。
08年モデルは「V8エディバウアー」に
本来はアメリカ向けとして開発された、ヨーロッパのプレミアムブランドのSUVが、日本でも人気を獲得している。それも悪路とは無縁の大都市で。上質な仕立てや快適な走りを備えつつ、セダンやミニバンにはない遊びの雰囲気も持っているという、「ちょいワル」や「隠れ家」に通じる微妙な立ち位置がウケているのかもしれない。
それと較べると本家アメリカのSUVの人気はいまひとつだ。でもそれはブランド主義、ドイツ車中心という現在のマーケットの嗜好によるもので、クルマのレベルが低いわけではない。むしろヨーロピアンプレミアムSUVにはない、SUV本来の良さを残していると、元オーナーのひとりとして感じている。「フォード・エクスプローラー」に乗って、そのことを思い出した。
エクスプローラーは先ごろ2008年モデルが発表されたばかり。取材はその前に行われたので、ここで紹介するのは07年モデルの「エディバウアー」だ。
ちなみに08年モデルは、「XLT」との2車種構成であることは同じものの、そのXLTはフルカラーボディになり、アルミホイールのデザインを一新。室内ではステアリングオーディオコントロールがついた。エディバウアーは「V8エディバウアー」という名前になり、ゴールドカラーのサイドステップ、運転席シートメモリー、助手席パワーシート、フロントシートヒーターなどを追加。両車種に共通する変更点としては、センターコンソールボックス内にAUXジャック・電源ソケットを装備したことなどがある。
充実装備で使いやすい室内
現行型は06年モデルでビッグマイナーチェンジを実施した。そのときにクロームメッキ仕上げのフロントグリルを手にして存在感を高めたけれど、プロポーションはオーソドックスだ。個性が薄いととる人もいるだろうが、僕はそうは思わない。
フォードは1960年代からSUVを作り続けている先駆者。長い経験がこのカタチに結実したという感じがする。キャビンに乗り込んでも、スタイリングのために広さや使いやすさが犠牲にされてないことを知らされる。
キャビンは、マイナーチェンジで悪い意味でのおおらかさが消え、国産車や欧州車と対抗できる上質感を手に入れている。豪華というわけではないけれど、快適装備・安全装備はひととおり揃っているし、スイッチやグリップが使いやすい位置にあることも印象的。道具として突き詰めてある。前席の座り心地はアメリカ車としては張りがあるものの、形状が適切なので疲れない。ステアリングにテレスコピックがつかない代わりに、ペダルが電動で前後に動くから、ポジションに不満を持つ人はごく少ないはずだ。
後ろのシートにも道具感は貫かれている。2列目の広さは文句ないし、フレームに穴を開けてドライブシャフトを通すという独創的な設計のおかげで、3列目も大人が過ごせる空間を持つ。しかもアレンジしやすい。ヘッドレストはどちらもヒモを引っ張るだけで前に倒れ、2列目は荷物を積むために低く畳む方式と3列目への乗り降りのために前に畳む方式が選べる。下開きにも横開きにもできる昔のステーションワゴンのテールゲートを思い出した。こういう部分にアメリカ人は手を抜かないものである。
上品な走り
XLTが4リッターV6、エディバウアーが4.6リッターV8というエンジンに変更はない。今回乗ったエディバウアーの車重は2.2トンを越えるが、なにげにATは6速だったりするから、加速に不満はない。しかも静かでスムーズ。アメリカ車というといまだにドロドロ音を響かせるものと決め付けている人がいるかもしれないが、それはいまや一部のヨーロピアンプレミアムSUVに当てはまる言葉。酸いも甘いも知り尽くしたフォードのエクスプローラーは、もっと上品に速度を上げていく。
エクスプローラーはボディとは別体のラダーフレームを持ちながら、サスペンションは4輪独立懸架というめずらしい構造をとる。その結果、オンロードの乗り心地はサスペンションとフレームの両方でショックをやわらげる感触になる。大きな入力では足元がブルブル震えることもあるが、ダイレクトな衝撃はこない。今回は走らなかったが、オフロードではこれが絶妙な緩衝材になってくれるのだろう。オフロードといえば、4WDモードにセンターデフロックやローレンジを持っていることも強みになる。
それに旧態依然としたシャシーではないことは、高速道路での直進安定性にすぐれるだけでなく、山道で予想以上に素直に曲がってくれることでわかる。状況に応じて前後の駆動力配分を変えてくれるオート4WDのおかげで、グリップレベルが高いのに加え、4輪独立サスペンションがしなやかに動いて良好な接地性を生み出していることが、安心感として伝わってくる。
ステアリングの切れ味は素直ではあるものの、一部のヨーロッパ製SUVのようなセダンやワゴン並みの鋭さはなく、重さや背の高さを実感させる、おだやかな切れ味に終始する。でもそれは、自分がマスの大きな乗り物を動かしていることを知る意味で、正しい味つけだと思う。
それを含めて、エクスプローラーには自然体を感じた。機能的なボディをあらゆる状況で快適に移動させるという設計思想は昔から不変で、ライバルが一気に増えようとも一切のブレがない。ヨーロッパ生まれのプレミアムSUVが個性を競うなか、スタンダードナンバーのような安心感を抱かせてくれる。これもまたひとつの個性ではないかと思った。
(文=森口将之/写真=高橋信宏)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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