日産エクストレイル20X(4WD/CVT)/25X(4WD/CVT)【試乗速報(前編)】
日産のツボ(前編) 2007.09.13 試乗記 日産エクストレイル20X(4WD/CVT)/25X(4WD/CVT)……302万300円/332万4800円
世界中でじつに80万台を売り上げたという売れっ子SUVが、7年ぶりのフルモデルチェンジ。メーカーの期待を背負う2代目に、『webCG』のコンドーと関が試乗した。
フルモデルチェンジ?
コンドー(以下「コ」):「エクストレイル フルモデルチェーンジ!!」って……。ドコが新しくなってんの?前のと、ぜんぜん変わってへんやん。
関(以下「せ」):バリバリのキープコンセプトですから。2000年10月に生まれた初代は、ヒット商品。日産いわく、「苦しいときに会社を助けてくれた孝行クルマ」なんですよ。変える必要ないわけで。
コ:せやかて、CMでも「フルモデルチェーンジ!!」て叫んでるやん。コレっていう違いはドコよ?
せ:ズバリ、荷室拡大でしょう。ホイールベースはほぼ不変ながら、全長だけが約14cmアップ。引き出し付きのラゲッジスペースは、シートを倒さずとも最大容量603リッター。ちなみに先代は410リッターで、現行の兄弟SUV「デュアリス」と同一容量です。
コ:よう覚えたな。そういわれてみれば、旧型に較べてお尻がちょっと重そうに見える。それと、Dピラーとリアクォーターガラスの輪郭が「く」の字になった。
せ:それ、「X-トレイル」の「X」がモチーフなんですよ。前後のバンパーにもそこはかとなく「X」の輪郭が盛り込まれ……
コ:ちょっと無理ないか? とにかく、初代のイメージは変えたくないって? 人気者ならではの悩みやね。
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せ:ほかに見えないところでは、樹脂製だったフェンダーがオーソドクスな鉄製になりました。将来的に海外各所で生産する際、樹脂より鉄のほうが作りやすいと。
コ:とにかく、外見より中身ってわけや。冒険を避けたともいえるけど、これも賭けやな。
せ:流行のクロスオーバー型SUVには「デュアリス」がいるので、こちらは本格オフローダー路線一直線だ、と。ふたを開けてみれば、すでに受注は7000台以上で、予定の3倍を数える好調ぶりだそうですよ。
コ:じゃ、さっそく「孝行クルマ」の乗り味を試してみよか。
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エクストレイル=高級車
コ:このシート、本革?
せ:エクストレイル自慢の「防水シート」。相変わらず合皮です。ビニール然としていた先代からだいぶ質感が変わり、シートバックと座面に蒸れにくい防水透湿素材「セルクロス」が使われました。
コ:それでもこれ、めっちゃムレるで。水を通さへんいうても、自分の汗で濡れてたらしゃあないやん。
せ:オプションでファブリックシートも選べます。
コ:ちゃんとあるんかい! それに防水スプレーかけたほうがええわ。「ムレムレ標準」はキビシイ。
せ:これが標準仕様なのは、日本だけ。国ごとにニーズが違うんですね。
コ:外国じゃ、防水のほうがオプション扱い? みなさん、ファブリックのほうが断然いいですよ。
せ:欧州の主流は本革シートです。エクストレイルの主要価格帯は、かの地じゃ3万ユーロ(約480万円)。高級車なんですから。
コ:「かの地」って……生の言葉で初めて聞いたわ。
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コ:内装は、適度にタイト感のあるデュアリスとは対照的。ツートーンで明るいし、ダッシュボードの両端がシートから離れてるのも広々感があって好ましい。……あれ? 前のはセンターメーターが特徴やったん違う?
せ:ナビゲーションの画面位置が見やすいように上がったため、居場所を失いました。ご時勢というか。
コ:メイン市場である欧州では「メーターはドライバーの前にあるべき」という考えも根強いらしいね。
せ:メーター径の大きさでは、ライバル不在だそうですよ。
コ:大きさ自慢やったらNEW「MINI」が最強やん。モデルチェンジでますます巨大化した。センターやけど。あと、観音開きの保冷庫はなくなった?
せ:カップホルダーもインパネ両サイドに移動しました。保温保冷能力は、ひきつづきバッチリです。
コ:ところで、車内に声がやたら響かへん? ものすごいライブ感。マイクでエコーかけてるみたいや。
せ:直立面のドンガラで、床まわりが防水性のカタい樹脂素材だからでしょう。ちなみに、天井も防水です。
コ:カーペットの有無で、ずいぶん違うもんな。あ、ダッシュ上半分は柔らかいゴム素材で覆われてる。なるほど、それなりに上質な感じするね。さすがヨーロッパで3万ユーロ!
せ:さっきもいったように、アチラの内装はシート地など異なるようですけど……ちなみにボディペイントは、引っかき傷が復元する「スクラッチシールド」加工です。オプションにて、お値段下がって3万1500円。
コ:赤、青、黒の3色に対応。 こういうの、うれしい!
2リッターで十分
コ:さて、2リッターの「MR20DE」エンジン。特別速くはないけど必要十分。低速でもトルキーや。
せ:2000rpmで最大トルクの90%を発生するエンジンですから。デュアリスもそうですが、CVTの静かさも印象的です。
コ:2.5リッターのもあるけど、チョイ乗りだとそれほど差を感じない。前は、280psのがあったやろ?
せ:2リッターターボは、トルクアップに対するコストパフォーマンスが悪く、廃止。新型の2.5リッターは、実質2リッターより15万円高で済みます。
コ:でも、動力性能はそれなりの差でしかないなぁ。高速よく使うとか、荷物たくさん積むとか、使用環境に応じて余裕を買うってとこか。
せ:2リッターで十分と思います。財布の余裕は、豊富なオプション装備に。
コ:そんなにトバしてるわけでもないのに、前のクルマがどんどん道をゆずってくれはる。ミラー越しの姿が、威圧感あんのかな?
せ:……投影面積は、たしかに広いですけどね。四角いながらも空力は考えられていて、最高速200km/h以上というのが、欧州の開発チームからの要求だったそうです。
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コ:意外といったら何やけど、乗り心地がすごくいいね。独ザックス製のダンパーが効いてるとみた。開発の人、ザックスの話するとき、嬉しそうやったもんなぁ。車速感応式の電動ステアリングは、まったく不自然さがなくていい感じや。
せ:同じサスを使ってる兄弟車のデュアリスともども、コーナリング中のロール感が上質。でも、乗り心地はずいぶん違う。デュアリスのほうがゴツゴツ……エクストレイルはずっとソフトです。
コ:コンセプトはもちろん、モデルの価格差も考えた味付けの違いらしいね。いうなら、“デュアリスはシャッキリ”、“エクストレイルはしっとり”ていうとこかな。
せ:でも、舗装路フツーに流してたって……
コ:オフロード走るの? 大丈夫かぁ?(後編につづく)
(文=webCG近藤俊&関顕也/写真=峰昌宏/2007年9月)

近藤 俊

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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