レクサスLS600h(4WD/CVT)【海外試乗記(前編)】
こたえられないLS(前編) 2007.04.23 試乗記 レクサスLS600h(4WD/CVT)トップ・オブ・レクサスである「LS」の目玉、世界が注目するハイブリッドカー「LS600h」。国内発表に先駆け、ドイツはフランクフルトでのプレス試乗会に小沢コージが参加した。
夢の合法ドラッグか?
クオリティは文句なしだが、スタイリング的に若干「トヨタ・セルシオ」のイメージが強すぎて新鮮みに欠けた「LS」に、ハイブリッドエンジン搭載モデルが加わった。発表当初からハイブリッドの搭載をリリースしていただけに、この本命モデルを待ち望んでいた声は多い。
期待されたのは最上級モデルとして搭載するハイブリッドシステム。はたしてそれは“味は濃いけど太らない”的な、夢の合法ドラッグ的加速をもつのか? はたまた、メルセデス、BMWを凌駕する新たなる快楽を提供してくれるのか?
株式時価総額30兆円のトヨタが、プライドをかけて世に送り出した、逆襲のハイブリッド高級車の魅力を探ってみたい。
注目のパワーユニットは、2006年末にリリースされたLS460用の新型直噴4.6リッターV8のストロークを伸ばし、5リッターにまで拡大された。それだけでも394psを発生する上に、最大224psを生み出す電気モーターまでをも与えられた。現時点では文句なしに世界最強のハイブリッド車である。
システム全体では445psの出力を発生。これは6リッターV12に匹敵するパフォーマンスだという。それでいて燃費は4.6リッターより3割はよく、CO2排出量が1kmの走行でわずか219gと環境にも優しい。
シームレスなエンジン始動
実際に乗ってみると、加速はホントにとんでもない。“味があるうえ、疲れず太らない”的な新世代のフィーリングだった。
発進時はモーターを使い、異様に滑らかかつ静かに発進するが、いつの間にやら軽快かつおごそかに回るV8が加わって、ターボともスーパーチャージャーともつかない爆発的加速をみせる。
その味わいはV8ともV10ともV12とも違う。エンジン振動のテイストはV8だが、回転の軽さはV6みたいというように、なんとも不思議な印象。
“いつの間にやら”と書いたように、気がついたらモーターに加えてエンジンが始動してるというところがポイント。そのナチュラルぶりがたまらない。しかも普通にゆっくり走ってる限りは、なかなかエンジンが始動せず、電気自動車ぶりは過去のどのハイブリッド車をも上まわる。初代、2代目のプリウス&エスティマ・ハイブリッド、ハリアー・ハイブリッド、レクサスGSハイブリッドときて、システムが確実に進化していることが感じられる。
気がついたら
意外なのは発進時にモーターのトルク感が前面に出てないこと。以前に「GS450h」に乗った時は、その大出力モーター+2段変速リダクションギアによる首にガツンとくる加速にびっくりした記憶がある。それがさらに研ぎ澄まされていると考えていたが、実際はそうではない。単純にトルクが分散されるフルタイム4WD車、さらにどデカいエンジン出力と比べるとモーター出力が相対的に低くなることもあり、まさに最初の一歩でグンと行くGSハイブリッドのストライド走法的加速感はない。
しかし“気がついたら速かった”感はより増している。普通にアクセルを踏み、気がついたら100km/hということはざら。それもやけに静かに。そのうえ、その感覚は200km/hぐらいまで続く。つまり気づいたら「あっ、200km/hだ!」ということもありえる話なのだ。
(後編へつづく)
(文=小沢コージ/写真=小沢コージ(O)、トヨタ自動車(T)/2007年4月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。


































