ロータス・エリーゼS(MR/5MT)【ブリーフテスト】
ロータス・エリーゼS(MR/5MT) 2006.12.02 試乗記 ……501万9000円 総合評価……★★★★★ ローバー製の「K」ユニットの供給停止により、ハイパフォーマンスモデルの「R」に続いてスタンダードの「S」もトヨタ製エンジンを搭載することになった。その変更は、「エリーゼ」にプラスの要素をもたらしたのだった。
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理屈抜きに楽しく、しかも足になる
「ロータス・エリーゼ」に新しいベーシックグレード「S」が登場した。試乗記をまかされた自分は、あるテーマを勝手に課すことにした。そのテーマとは「エリーゼは足になるか?」である。
週末をまたいだ4日間500kmをエリーゼと過ごし、銀座、横浜、箱根とさまざまな場所に行った結果をひとことでいえば、「マツダ・ロードスター」並みに気軽に使えるスポーツカーだった。
ローバー製エンジンに換えて搭載されたトヨタ1ZZ型、「MR-S」や「ウィッシュ」などに搭載されている1.8リッター直列4気筒が、このメーカーの製品らしい扱いやすさと信頼性を発揮してくれたことも大きいが、それ以外にもシートの快適性、しなやかな乗り心地などのおかげで、実用性には何の不都合もなかった。
それでいて超軽量ボディは、街中を流すだけでも身のこなしの軽さが体感できるし、フルスロットルを与えれば怖ささえ感じる強烈な加速を披露する。山道でのヒラヒラ舞うような走りは、峠走りがそんなに好きではない自分をも夢中にさせてしまうほど、理屈抜きの楽しさにあふれていた。
このうえない人車一体感をもたらしてくれながら、クルマに求められるほぼすべての用途を気軽にこなせる。エリーゼSはスキニーデニムのようなスポーツカーだった。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1995年にデビューした、軽量ボディのオープン2シータースポーツ。アルミを接着して作られたシャシーとFRPで、超軽量ボディを実現している。コクピット後方に横置きされるエンジンはトヨタ製。以前搭載されていた「Kシリーズ」エンジンは、供給元のローバーの破綻によって廃止された。「S」には136psの1ZZ-FE、ハイパフォーマンスモデルの「R」には192psの2ZZ-GEが与えられ、ともに可変バルブタイミング機構を持つ。「S」は5MT、「R」は6MTが組み合わせられる。クーペモデルとして「エキシージ」がラインナップされている。
(グレード概要)
スタンダードモデルの「S」に快適装備などを追加したグレードが「ツーリング」。アルカンターラのインテリア、パワーウィンドウ、防音ソフトトップなどが装備され、価格はベーシックな「S」の36万7500円増しとなる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
インパネやフロアの一部をアルミむき出しとして先進性と軽量感を演出したグッドデザインのコクピットは、いままでと基本的に共通。簡素だが安っぽさとは無縁だ。装備はローバーエンジンのスタンダードモデルにはなかったABSが標準でつくようになった。価格は433万円から454万円と20万円の上昇に抑えられており、買い得感は強まった。ウィンドウはいまどきめずらしい手動だが、右ハンドルなので実用上不便は感じず。アルミ製のレギュレーターハンドルは鑑賞する楽しみもある。オープンカーだがリアウィンドウ周辺は固定なので、風の巻き込みは100km/hでもほとんど気にならない。
(前席)……★★★★★
エリーゼは2006年モデルから、英国NuBax社と共同開発したProBaxシートを装備している。背骨の自然な湾曲を維持し、肉体疲労を抑制するとともに、血流量を30%も向上させるという。その効果は絶大で、外観はそれまでのシートとあまり変わらないのに、1日300km乗り続けてもまったく疲れない。もちろんサポート性は見た目どおりタイトで、心地よささえ覚える。すばらしいシートだ。圧倒的な着座位置の低さも印象的で、料金所や駐車場のチケット発行機はあまりにも高く、夜の信号待ちではテールランプの赤い光に囲まれる。
(荷室)……★★★
エリーゼSを足として使う場合、唯一の欠点となるのがトランクだ。狭いうえに、直前にエンジンがあるので熱くなる。生モノは厳禁だ。エンジンフードと共通のフードが、キーを使わないと開かないのも不便。コクピットまわりの収納スペースもそれほど多くないが、このあたりは自分で工夫するのがロータス流なのだろう。唯一用意される助手席前のアルミのトレイは、500ccのペットボトルを投げ込んでおくのにちょうどいい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
エンジンはいろいろな意味で予想と違っていた。発進がしやすく、その後も1000rpmから使い物になるのはさすがトヨタ製だが、音は洗練されてはおらず、むしろ昔っぽい荒さを残していて、英国車の匂いがする。排気音もブリティッシュスポーツを思わせる低音。一方、回していくと4000rpmでサウンドに迫力が加わるとともに吹け上がりが鋭くなり、0-100km/h加速6.1秒という数字を納得させる強力なダッシュをもたらす。多くのドライバーがこの性能で十分と思うだろう。192psの「R」ほどではないが、「S」もドラマはちゃんと備えている。
試乗中、工事渋滞に1時間はまったが、デジタル式の水温計が100℃以上になることは一度もなかった。トヨタ製ならではの絶大なる信頼性が心強かった。5段MTのシフトタッチは軽く確実なだけでなく、変速のたびにガコガコとメカニカルな音を響かせるのがレーシングカーっぽい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
乗り心地はRよりマイルドで、ローバー・エンジンを積んでいたスタンダードモデルに近いしなやかさを持つ。すばらしいシートのおかげもあって、「VWゴルフGTI」や「ミニ・クーパーS」といったホットハッチより快適だ。ステアリングにパワーアシストはつかないが、少しでも動いていれば重くない。レスポンスは街なかではクイックに感じないが、その後の身のこなしの軽さは並のクルマとは別次元。ペダルに足をかけた瞬間に速度を落とすブレーキも感動的だ。高速道路はややノイジーだが、直進性そのものは良好だった。
ハンドリングはスタビリティを重視したRと、軽快きわまるローバーエンジンのモデルの中間に思えた。ブレーキで荷重を前に移してから舵を入れれば、おもしろいようにノーズがインを向き、路面をなめるようにコーナーをトレースしたあと、ミドシップならではの確実なトラクションで脱出していく。すべての動きに遅れがなく、乗り手の意思どおりに走ってくれる。こういうシーンでのエリーゼに敵はいないことをあらためて思い知った。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2006年10月13〜16日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:2254km
タイヤ:(前)175/55R16(後)225/45R17(いずれもヨコハマ・アドバン・ネオヴァ)
オプション装備:メタリックカラー(12万6000円)/トラクションコントロール(9万4500円)/エアコン(26万2500円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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