キャディラックSRX(5AT)【ブリーフテスト】
キャディラックSRX(5AT) 2004.02.18 試乗記 ……765.0万円 総合評価……★★★★ 本場アメリカで人気のフルサイズSUV「エスカレード」を擁するキャディラックが開発した、ミドルサイズSUV「SRX」。「CTS」以降のシャープなデザインを持つニューモデルを、自動車ジャーナリストの笹目二朗はどう評価するのか?真打ち登場
ミドルサイズの高級SUV市場に登場した、キャディラックブランドのニューモデル「SRX」。アメリカに向けた、欧州、日本からの輸入車攻勢に対して、本家が重い腰を上げた恰好だが、後から出ただけにいろいろと研究しつくされた感がある。
たとえば4WDシステムは、いろいろと凝ったスペックを持ち、ズリッとスリップしてから出ていくような消極的なものではない。キチンと前後回転差を補正するディファレンシャルを入れただけでなく、トルク配分も潔い4輪均等。そのうえで、前後のタイヤサイズを微妙に変えてバックラッシュを取り除くなど、豪快な部分だけでなく繊細さもかいまみせる。フルタイム4WDゆえ、インパネにスイッチ類が一切ないというのも、自信を感じさせるところだ。
「ポルシェ・カイエン」や「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」が登場しただけに、重量級のブレーキ性能も高次元を要求されるだろう。しかし、ニュルブルクリンクでテストしたというコメントは、信用してよさそうだ。SUVの本場であり、大型の「エスカレード」などで実績もあるキャディラックのニューフェイスSRXは、“真打ち登場”の感がある。それだけの内容を備えているように感じた。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アメリカを代表する高級ブランド、キャディラックが、ミディアムSUVに初参入するクルマが「SRX」。プラットフォームに、新生キャディラックの第1弾「CTS」と同じ「シグマアーキテクチャー」を採用。2列シート5人乗りのワゴンボディを載せる。オプションで、電動格納式3列シートを備えた7人乗りも可能だ。
エンジンは、新開発の3.6リッターV6と、大幅に手を入れた4.6リッター「ノーススターV8」を搭載する。当面、日本に入るのは後者。トランスミッションは、シーケンシャルモード「DSC」(ドライバーシフトコントロール)付き5段ATが組み合わされる。駆動方式は、センターデフを備えたフルタイム4WDを設定(本国にはFRもあり)。ABSやトラクションコントロール、磁気を利用したアクティブサスペンション「マグネティックライドコントロール」などを組み合わせたシャシー制御技術と合わせ、高いアクティブセーフティの実現を謳う。
(グレード概要)
日本に導入されるのは、4.6リッターV8搭載の4WDモデルのみ。シートレイアウトは2列、3列、いずれも用意されるが、電動格納式3列シートは、リアシートDVDとウルトラビュー電動スライディングルーフのパッケージオプションとして設定される。オプション価格は55.0万円。
高級ブランドらしく、パワーシートやクルーズコントロール、DVDナビゲーションシステムやBOSE製オーディオ+8スピーカーのアメニティ、前席SRS&サイド、カーテンエアバッグなどの安全装備を標準で備える。ジマンの電子制御システムも、もちろん搭載する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
FRセダン「CTS」と同意匠のセンターコンソールなどを使うインテリアは、普通の乗用車感覚ですっきりまとめられている。メーター類も中身はCTSと共通で、黒地に白文字、そして赤い針のコンビネーションは、すでに確立された安心感があり、読みやすい。そのうえで、放射状にレタリングされた数字などに、新しい感覚の試みも見られる。一般的なSUVは、4駆のロックアップ操作板など仰々しい装備もあるが、SRXには皆無。シンプルさが一層の高級感を演出する。木目パネルも真目で厭味がない。
(前席)……★★★★★
革シートは滑りやすい例が多いが、SRXのそれは適度な柔かみと温かさが感じられる。サイズがたっぷりで、サイドサポートの盛り上がりが、身体を包み込む感覚を与えるせいかもしれない。電動パワー調整も完備しており、自分に合ったポジションが得られる。ペダルの位置までアジャストできる例はめったにない。高めに座るポジションからの眺めも上々だ。左ハンドルのみだが、この手の大きなSUVにとっては、かえって狭い場所でのすれ違いがしやすい。
(2列目シート)……★★★★
短時間の試乗ゆえ座って試しただけであるが、たっぷりしたサイズのシートと足元やルーフの余裕など、リッチな感覚につつまれることはたしか。横3人がけも余裕である。テスト車には、オプションのリアシートDVDが装備されており、ラクシャリーな雰囲気を味わうことができた。
(3列目シート)……★★
3列目は電動で繰り出すが、作動は遅め。スペース的には子供用で、いわゆる7人乗りのホモロゲーションシートである。とはいえ、緊急用には便利な設定。オプションの広いサンルーフを開け放てば、解放感も抜群だ。
(荷室)……★★★
乗車人員によってスペースは大きく変化するが、3列目を畳んだだけの状態でも、フラットなフロアは十分な面積がある。ホイールハウスの壁で規制された四角い空間は使いやすそう。バンパー高から開くゲートは、重い荷物を出し入れするにはやや高いだろう。荷室の内装処理は、キャディラックを名乗るだけのクォリティが保たれていた。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
4.6リッターV8は“フルサイズ・キャディラック用”ユニットであり、2トンを超す大きなSUVであっても身軽に加速させる実力がある。この楽チンさが、アメリカ車本来の静かで優雅な生活感を演出する。5ATもCTSと同様、1〜3速のクロースしたギアレシオが有効で、シフトショックが軽いことはもちろん繋がりが非常に滑らか。2、3速が連携する加速の守備範囲は広く、活発な走りを見せる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
フロアの下では、「マグネティックライドコントロール」と呼ばれる電子制御の磁気感応流体ダンパーが忙しく働いているはず。だが、乗せられている乗員はまったく知らぬが仏、いつもフラットで快適なだけだ。サスペンションは剛性感があり、ラフロードでも頼もしい走破性を見せる。
4WDシステムは、オープンデフによる50対50のトルク配分とあるだけで、ロック機構やトルク制限などは一切なし。あとは、スタビリトラックやABSのブレーキ制御で対処する。4輪のいずれかがスリップしてから対処するような間がなく、低ミュー路でもスッと出るフルタイム4WDは、駆動系の滑らかさこそ日常での恩恵となる。
(写真=清水健太/荒川正幸)
|
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2004年1月23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)235/60R18(後)255/55R18(いずれもミシュラン PilotHX MXM4 M+S)
オプション装備:リアリートDVD+ウルトラビューサンルーフ=55.0万円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(2):山岳路(7)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

笹目 二朗
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。

























