ホンダ・オデッセイアブソルート(FF/5AT)【試乗記】
ハードウェアに魂は宿る 2006.06.20 試乗記 ホンダ・オデッセイアブソルート(FF/5AT) ……340万7250円 2006年4月、内外装を変更するなどのマイナーチェンジを受けた3代目「オデッセイ」。いわゆるミニバンとは一線を画すホンダ・ミニバンのスポーティ版「アブソルート」には、ハードウェアの進化などには“ホンダらしさ”を感じたが……。もっとも“ホンダらしい”
これを「シビック」として売ればいいのに……いまのオデッセイを見るたびに思うことだ。
歴代シビックでいちばん印象に残っているのは、ロー&ロングルーフの3代目、「ワンダー・シビック」の3ドアだ。ホンダ自慢の低床フロアを採用して、ミニバンなのに立体駐車場に入れるオデッセイのシルエットは、それを思い出させる。4ドアセダンだけになったいまの日本仕様シビックよりも、全然シビックっぽい。
デザインだけじゃない。ミニバンなのに背が低いというパッケージングや、低床フロアを実現するために、扁平燃料タンクやコンパクトなリアサスペンションを与えたことなど、独創的な発想の数々が、自分がイメージする“ホンダらしさ”と一致するのだ。
そしてアブソルートの存在である。ボディにはエアロパーツを与え、サスペンションを固めただけのスポーティミニバンなら、それまでもあった。ところがアブソルートは、エンジンまで専用にしてしまった。シビックが忘れかけた、走りへの飽くなき想いが、オデッセイからは伝わってくる。このクルマにこそ、ホンダスピリットが宿っているというべきじゃないだろうか。
そんなオデッセイがマイナーチェンジしたというので、アブソルートに乗ってみた。
群を抜くスポーティ感
ニッポンのミニバンシーンは、高度経済成長期のセダン並みに流れが速い。2003年10月にフルモデルチェンジしたときは、自然吸気2.4リッター4気筒で200psを出すアブソルートは“大台”に思えた。しかし、いまはそうではない。「トヨタ・エスティマ」は280psの3.5リッターV6を積み、「マツダMPV」は2.3リッター4気筒ターボで245psをマークする。
今回のマイナーチェンジでは、アブソルートはエンジンは200psのままだ。そのため、もはや加速そのものに感動はしない。でもミニバンのエンジンとしては、おそろしくスムーズに回るし、サウンドは緻密で硬質。ここだけ取り出すとスポーツカーみたいだ。感覚的な速さは、依然としてナンバーワンミニバンだと思った。
さらに驚いたのは乗り心地だ。アブソルートは今回のマイナーチェンジで、サスペンションはスプリング、スタイビライザー、ブッシュを強化し、ホイール/タイヤを17インチから18インチにサイズアップした。ところが同時にダンパーの減衰力特性を見直したことが効いていて、全然ビシビシこないのである。硬めながら鋭いショックはうまくかわす。旧型よりもしなやかにさえ感じる。“売れているクルマはお金がかかっている”という、資本主義経済の常識を痛感した。
マイナーチェンジではステアリングのギア比も最適化されている。クイックなのに唐突ではなく、しっとり感さえ味わえる、心地よいフィーリングだ。コーナーに入ってからの、背の高さをまったく感じない安定感はいままでどおり。攻め込むとフロントの重さを感じることもあるが、ミニバンにふさわしいペースで走る限りは、ドライバーの意のままに曲がっていく。
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デザインに、異議アリ
ホンダらしさを受け継ぎつつ、ハードウェアのレベルも第一級にある。オデッセイ・アブソルートの走りからは、好印象を受けた。それだけに、気になる部分がある。デザインだ。
マイナーチェンジではフロントグリルのバーの太さが変わった。これはそんなに目立たないが、今まではシンプルだったリアは、ランプの間にメッキで縁どった帯を入れたことで、一気にゴテゴテした。
これで驚いてはいけない。赤と青の照明をちりばめたインパネは、テレビゲームのディスプレイみたいだ。シフトレバーやダイヤルスイッチは、ガンダムのパーツを思わせる。大理石風のデコラティブパネルやシートのファブリックは、妙にテカテカしていて子供っぽい。
旧型も赤一色の照明などで、うるさい印象だったが、いま思えばまだおとなしかった。マイナーチェンジでこうなったということは、ユーザーがこのテイストを望んでいるのかもしれないが、他のメーカーのミニバンで、ここまでオモチャっぽい仕立てはないのも、また事実である。
かつてのホンダは日本車では群を抜く、センスのいいメーカーだったという記憶がある。それがいまは、このとおりだ。ホンダと並び称される戦後の星、ソニーの製品にも同じことがいえる。ホンダもソニーも、どこへ進もうとしているのだろうか?
(文=森口将之/写真=峰昌宏/2006年6月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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