日本でも“中国車”が当たり前になる!? 中国製「ホンダ・オデッセイ」の誕生が示す現実
2023.04.21 デイリーコラム奮闘していたホンダ製高級ミニバンの危機
ジャパンオリジナルな低床ミニバンの元祖「ホンダ・オデッセイ」が、今冬に復活する(参照)。それも中国生産の輸入車となって。
かんかんがくがくの議論を呼んでいるこのニュースだが、昨今のホンダは収益率改善のために車種のリストラを断行しており、国内のラインナップは寂しい状況となっている。まずは数少ない上級車であるオデッセイの再登板を、素直に歓迎したい。
現行にあたる5代目オデッセイは、2013年11月にデビュー。全高の低さが特徴だった従来型から一転して、歴代モデルで最も背の高いボディーを獲得し、ミニバンの必須アイテムであるスライドドアも初採用するなど、次世代のオデッセイの姿を提案した意欲作だった。
しかし、上級ミニバン市場の戦況は、とうにトヨタの「アルファード/ヴェルファイア」の一人(二人?)勝ち状態。広々としたキャビンを武器に、セダンを脅かす国産高級車としての地位も固めつつあった。もちろんオデッセイも手をこまねいていたわけではない。先述の改革に臨むことで従来型からある程度の巻き返しは図れたものの、他社ミニバンと比較するとやはり全高は低く、人気の大幅な回復にはいたらなかったのだ。
ただオデッセイを擁護すると、「日産エルグランド」が全高1815mmで室内高を1300mmとしているのに対し、同車は全高1685mmのなかで室内高1325mmを実現している。ライバルより全高は低いが、決して室内空間を無視していなかったことがうかがえる。
しかし、今日のミニバンユーザーに訴えるには、低全高が生む走りのよさより、キャビンの広さと存在感をアピールすべきだったのだろう。それはホンダも分かっていたようで、2020年11月のマイナ―チェンジでは大胆なフェイスリフトを実施。上級ミニバンにふさわしい厚みのあるボンネットフードと大型のフロントグリルを与え、力強い上級サルーンの風格をオデッセイに与えた。なんと、これがファンに大ウケ。登録台数を振り返ると、2020年の1万2759台に対して、2021年は約1.7倍の2万1148台を記録したのだ。
しかし、オデッセイにはタイムリミットが迫っていた。生産工場である狭山工場の閉鎖だ。
ホンダに決断を促した販売店の窮地
2017年10月、当時の八郷隆弘社長は、緊急記者会見で国内四輪車生産体制の集約を発表。計画のなかには埼玉県の四輪生産拠点を寄居工場に集約することも含まれていた。そのため、狭山工場でつくられる「ステップワゴン」や「フリード」などの人気車種は生産が移管されることに。一方で、フラッグシップセダンの「レジェンド」や、燃料電池車とプラグインハイブリッド車をラインナップする「クラリティ」、そしてオデッセイの生産終了が決断されたのだ。
しかし、それではなぜオデッセイは今になって復活することとなったのか?
残酷な言い方だが、少なくとも現行世代では、オデッセイの再登板などまったく考えられていなかった。確かに復調の兆しはあったものの、リストラ計画を覆すほどではなかったのだ。ビックマイナーチェンジを行いながら、たった1年ほどで生産終了となった事実も、オデッセイを取り巻く状況の厳しさを物語っている。
恐らくホンダも、日本におけるオデッセイの穴はステップワゴンで埋めるつもりだったのだろう。2022年5月に登場した6代目ステップワゴンでは、ボディーサイズの全長と全幅を拡大し、全車3ナンバー車にステップアップ。ラインナップにカスタムスタイルの新たな上級グレード「スパーダ プレミアムライン」を追加している。これは、「オデッセイ不在となった日本のミニバンラインナップをカバーする」という使命が課せられていたと考えるべきではないか。
しかし、当然ながらステップワゴンとオデッセイではクルマの世界観が異なり、客層も異なる。加えて、ホンダのラインナップから上級車が一掃された今、このクラスのモデルを選んでいた顧客の受け皿がなくなったことは、販売店にとって大きな打撃だったに違いない。そのため顧客からだけでなく、販売現場からの声もあり、ホンダはオデッセイ復活の決断を迫られたのだ。
実は当然の決断だった中国での生産と輸入
もうひとつ、今回のオデッセイの復活劇で多くの人が疑問に思っているのが「なぜ日本製ではなく中国製なのか?」ということだろう。この答えは明確で、近年のホンダの戦略により、生産拠点の最適化が図られているためだ。
2023年1月に販売を終えた「アコード」は、タイで生産される輸入車だった。また2代目「NSX」のように米国生産車を導入するケースもあった。これは資源の選択と集中の結果であり、主要マーケットに生産拠点を集約したほうが効率がいいからだ。日本で生産してもコストが見合わないとなれば、他のマーケットから供給するのがベターというわけだ。オデッセイの場合、メインマーケットは中国と北米となるが、ご存じのとおり“北米版”は、サイズ的にもデザイン的にも日本のものとはまったくの別物。日本仕様と同じなのは中国向けのものとなる。復活に際しての中国からの供給は、必然の答えだった。
こうした例はなにも“ホンダ”と“中国”に限った話ではなく、日本人の大好きなドイツ車だって、メキシコ生産の「BMW 2シリーズ クーペ」にポルトガル製の「フォルクスワーゲンTロック」と、海外生産車がかなり多い。
それでも、中国製オデッセイに賛否があるのは確かだ。私たちは家電や衣服などの日用品こそ中国製品に慣れてきているが、“人生で2番目に高価な買い物”であるクルマとなると、ちょっと敬遠したい……という人がいるのも事実だろう。しかし現実には、日本車に組み込まれる部品のなかにも中国製のものは多い。米国の電気自動車メーカー、テスラの製品にも中国生産のものが存在しており、例えば「モデル3」では、日本向けを中国製に切り替えることで低価格化という恩恵を生んだ。さらにボルボの最上級セダン「S90」も、日本向けの初期の500台はスウェーデン製だったが、現在では世界に供給されるすべてのS90が中国製となっており、もちろん日本向けも中国製だ。フランスの高級車、DSのフラッグシップセダン「DS 9」も、メイド・イン・チャイナである。
今や中国は、世界の名だたるメーカーが参入する世界最大の自動車市場である。かの地の新興自動車メーカーの一部は海外進出にも意欲的に取り組んでおり、自動車産業が世界で戦えるクオリティーを着実に身につけている。さらに大量生産・大量消費によるコスト低減や、国家戦略による産業支援もあり、コスト競争力も高くなる。……となれば、ライバルである海外メーカーもこの地に工場を建て、中国生産を増やすのは必然だろう。
大事なのはユーザーに新しい価値を提案できるか
はっきり言って、これは昨今の中国に限った事例ではない。米国が、国内産業支援のために海外メーカーに米国生産を促した政策とも重なる話なのだ。先にも述べたが、世界の自動車メーカーは中国にも工場を所有していることから、輸送コストや環境負荷の低減を名目に、今後、日本向けの車両を中国製とする可能性が否定できない。中国産オデッセイ輸入の話は、ホンダがどうこうではなく、今がそういうタイミングの迫った時代であるということなのだろう。
従って、私が今回のオデッセイの復活劇で注目している点は、それが中国製ということではない。日本のユーザーに対して、新たな価値を提供できるかということのほうだ。
今冬復活予定のオデッセイは現行型のマイナーチェンジモデルであり、スタイリッシュな「ブラックエディション」の投入や新装備の追加などが明かされているが、基本構造は国内生産だったころと変わらない。だからこそ、2年の期間を経たことによる磨き上げが、どのようなかたちで示されるかが大切だと思う。例えば中国製オデッセイには、「エリートエディション」という4座の豪華仕様が用意されている。これは、ぜいたくさをクルマに求める中国の顧客ニーズに応えた独自の取り組みのひとつだが、日本に導入されることはあるのだろうか?
新しいオデッセイには、できれば日本のミニバンユーザーを引きつけ、人気の偏った上級ミニバン市場に風穴を開けてほしい。初代オデッセイは、日本のミニバンの発展に大きく貢献した偉大なクルマであり、歴代モデルも超低床フロアにより、家族を大切にするクルマ好きのパパ&ママの期待に応えてきた。だからこそ、今回の復活が単なるラインナップの補完で終わってほしくない。オデッセイの公式サイトには「Re:ODYSSEY」のメッセージが掲げられている。海を越えての再会に感激できることを期待したい。
(文=大音安弘/写真=本田技研工業/編集=堀田剛資)

大音 安弘
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