アルファ・ロメオ・アルファGT 3.2 V6 24V(FF/6MT)【ブリーフテスト】
アルファ・ロメオ・アルファGT 3.2 V6 24V(FF/6MT) 2006.09.30 試乗記 ……543万9000円 総合評価……★★★★ 「アルファ・ブレラ」の登場ですっかり影が薄くなってしまった「アルファGT」。改めて、3.2リッターV6モデルに試乗して、ブレラが失ったアルファGTにしかない魅力を探る。
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その存在価値はまだ高い
アルファが投入したスタイリッシュな新型クーペ、「アルファ・ブレラ」ばかりが話題にのぼり、なんとなく影が薄い「アルファGT」だが、ブレラが登場してもなお販売が継続されていることからも明らかなように、その存在価値はまだまだ高い。
確かにブレラに比べて古臭い部分はあるし、洗練不足の点も見受けられるが、その一方で、ブレラが進化の途上で失ったものが残されていて、それがアルファGTの魅力を際だたせているように思えたのも事実だ。
アルファのクーペに何を求めるかにもよるが、もしドライバーを刺激するドライビングを手に入れたいのなら、アルファGTを選ぶ意義はいまも十分にある。
今回は3.2 V6を試乗したが、2リッター直4モデルもまた魅力的。低価格モデルや特別限定車なども用意されているから、実はいまが狙い目のアルファGTなのだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「快適さとエレガンスが共存するスポーティカー」をコンセプトにつくられた、「アルファ156」ベースの2ドアクーペ。日本には2004年6月から導入された。カロッツェリア・ベルトーネが手がけた流麗なボディラインと、大人4人(定員は5人)が快適に過ごせるという居住空間が自慢である。
エンジンは、直噴「JTS」2リッター直4 DOHC16バルブ(166ps/6400rpm、21.0kgm/3250rpm)と、3.2リッターV6 DOHC24バルブ(240ps/6200rpm、29.4kgm/4800rpm)の2種類。トランスミッションは、前者に2ペダル5MT「セレスピード」、後者には6段MTが組み合わされる。セレスピードには、従来のマニュアルモードに加え、シフトタイミングやラグのすくない「スポーツモード」が追加された。フルオートの「シティモード」も備わる。
(グレード概要)
2リッターは、ベーシックな「2.0JTSセレスピード」と、キセノンヘッドランプや前席シートヒーターなどを奢った上級「2.0JTSセレスピード エクスクルーシブ」の2グレードを設定。3.2リッターV6モデルとあわせ、全3車種が用意される。
テスト車「3.2 V6 24V」ならではの装備は、18インチアロイホイール、スポーツサスペンション、アルミ製ペダルがあげられる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ダッシュボード、ドアトリム、そして、レザーシートがすべてブラックで統一された室内。ドライバーを包むようデザインされたコクピットや誘い込むような三連メーターとあいまって、スポーティでタイトな空間をつくり上げている。いまの基準で見ると、ダッシュボードの質感など決して高くはないが、雰囲気づくりという点では、なかなかの出来といえる。
(前席)……★★★
標準装着のレザーシートは、シートバック部に大きなサイドサポートがあるスポーツタイプだ。シートヒーターは標準だが、スライド、リクラインといった調整はすべて手動になる。座り心地は見た目以上にタイトで、脇が落ち着くのはいいとしても、腰のまわりが窮屈で収まりが悪い。そのせいか、試乗の翌日は背中から腰にかけて、どんよりとした疲れが残ってしまった。ステアリングコラムにはテレスコピック調節がつくが、チルト機構がないのが残念。
(後席)……★★★★
このクラスのクーペでは、リアシートは“プラス2”、すなわち、短距離用の補助席として用意されるのがほとんど。ところがアルファGTのリアシートは、足が組めるほどの余裕こそないものの、爪先が前席下に楽に収まり、膝とシートバックの間に拳ひとつぶんのスペースが確保されている。頭上にも拳一個ほどの余裕があり、リアウィンドウは離れた位置にあるから、圧迫感もない。乗り心地も、覚悟していたほど辛くなく、クーペとしては期待以上である。
(荷室)……★★★★
一見ノッチバックに思えるフォルムだが、アルファGTのリアセクションは、リアウィンドウごと開閉するハッチバックを採用している。おかげで大きな開口部を持つが、その奥に隠れる荷室も、外観から想像する以上に広い。リアシートを起こした状態でも奥行きは90cmほどで、ダブルフォールディングタイプの分割可倒式シートを倒せば約160cmまで拡大。2ボックスのハッチバック並みの使い勝手を誇る。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ボンネットを開けると、シルバーに輝くインテークマニフォールドが視界に飛びこんでくる。最近のエンジンルームは、そのほとんどがカバーで隠され、見る楽しみが失せているだけに、こういった演出はうれしいかぎりだ。
3.2リッターV6には6段マニュアルが組み合わされ、駆動方式としてはFFが採用されている。比較的ストロークが大きなシフトレバーを操作し、軽めのクラッチを繋いでやると、ボトムエンドこそブレラに積まれる同じ排気量のV6よりやや頼りないと感じられるが、それでも低回転域で十分余裕のトルクを発揮し、高いギアのままシフトをサボったとしてもそれを受け止める柔軟さを持つ。
もちろん、アクセルペダルを大きく煽ってやれば、4000rpmを超えたあたりからエンジンは勢いづき、さらに5000rpmから6500rpmあたりで一気に力強さを増す印象だ。回転を上げる途上、エンジンからは勇ましいサウンドが発せられることもあり、ワインディングロードではついひとつ下のギアを使いたくなってしまう。6500rpmからレブリミットの7000rpmの領域ではやや頭打ちの感があるのが少し残念。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
アルファGTの楽しさは、なんといってもその機敏なハンドリングにある。それは、わざわざワインディングロードまで足を伸ばさなくてもすぐにわかる。ちょっとしたコーナーでステアリングを切ってやると、わずかにロールを伴いながら即座にノーズが向きを変えていくのだ。2リッター直4に比べるとノーズの重い感じは否めないが、それでも十分に軽快さを味わうことができるはずだ。
一方、そのハンドリングのために、やや硬めの乗り心地を強いられたり、前輪駆動としては高速走行時の直進性が頼りなかったり……。また、低いギアで高回転まで引っ張るとトルクステアに見舞われるなど、弱点もたくさんあるが、その割り切りのよさは、これはこれでありだと思う。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2006年9月11日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:4570km
タイヤ:(前)225/40R18(後)同じ(いずれも ミシュラン・パイロットスポーツ)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:381km
使用燃料:57リッター
参考燃費:6.68km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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