アウディA4アバント3.0クワトロ・スポーツ(5AT)【試乗記】
A4アバントに見る「高級」と「上質」 2002.07.18 試乗記 アウディA4アバント3.0クワトロ・スポーツ(5AT) ……634.5万円 “スタイリッシュなワゴン”の代名詞「アウディA4アバント」。フォーリングスが“スポーツプレミアムワゴン”を謳う同モデルのなかで、最も豪華でスポーティな「3.0クワトロ・スポーツ」に、自動車ジャーナリストの金子浩久が乗った。ナゾを解くカギ
クルマにおける“高級”とか“上質”って、何だろう。
大はプラットフォームやエンジンに始まって、小は細かな部品にいたるまで、現代のクルマたちはさまざまなものを共用化しているから、運転したり乗った感じが似通ってしまうのはいたし方ない。そこで、どうやって“高級”や“上質”を感じさせるか。それが問題だ。
デザインやブランドイメージで独自性を高めていくのに始まって、専用エンジンやサスペンションを使ったり、チューニングを変えたり、そこはモチはモチ屋。ま、方法はいろいろとあるのだけど、では何をもってして、“高級”や“上質”と感じさせるのか。
数字に置き換えられる「速さ」とか「スペック」ではないだろう。動力性能を売り物とするスポーツカーやGTでなければ。では、いったい何なのか。
そのナゾを解くカギのひとつは「スムーズネス」だと思う。
「発進停止」「加減速」「操舵」等々の動きのプロセスで、どれだけクルマが滑らかに動くか。滑らかに動いて、運転者には喜びを、同乗者には快感をもたらしてくれるか。その「滑らかさ」こそが、“高級”とか“上質”の根拠なのではないか。ゴロゴロ、ザワザワ、ギコギコしながら走るクルマでは、高いおアシは取れないザンスよ、というわけだ。
「ジワーッ」としていて好ましい
前置きがちょっと長くなってしまったが、アウディ「A4アバント3.0クワトロ」、一番高い3リッターV6搭載モデルに乗って感じたのは、そういったことだった。
クルマに乗るところからそれは始まっていて、ドアの開き具合、シフトレバーの動かしやすさ、ウインカーレバーのクリック感など、実にスムーズなのだ。
肝腎のクルマの動きに関しても、アクセルペダルの微妙な踏み込みにも忠実に反応してくる。ふだん、ガサツな反応しかしないクルマに乗っているドライバーだと、アクセルペダルを踏み過ぎてしまうだろう。かくいう私もそういうクルマに乗っているので、乗り始めはそうだったのだが……。
走りだしてからのエンジンの力の出方も、「ジワーッ」としていて、好ましい。踏み込みを一旦止めて、ひと呼吸おいてからの加速にも瞬時に応えてくれる。それを可能にしているのは、太いトルクがあらゆる回転数で沸き出てくることだろう。シフトダウンしなくても、グイグイと加速していく。どこで踏んでも太いトルクを発生し続けるから、速い。
トルクが太いので一定のペースを維持しながら右に左にノーズを向けることができる。スポーツカー顔負けのコーナリングをしながらも、乗り心地がいいのがさすがで、これなら長距離を走っても不当に疲れることが少ないだろう。
タイヤサイズに難あり
そして、ついに採用された「ティプトロニック」は、名前こそ従来と同じながら、内容はポルシェと同等の「S」で、この種のセミATの中では抜群だ。“S”に進化してからは、「D」ポジションで走っていて変速が必要な場合に、従来ではシフトレバーを横のゲイトに移動してモードを切り替えなければならなかったが、これはステアリングホイール上のボタンを捺すだけで済む。そのうえ、約10秒後には自動的に「D」に戻るという優等生ぶりだ。A4アバントの、“スポーツプレミアム”ぶりに、大いに貢献している。
ニューアバントの特筆事項をもうひとつ挙げるなら、ラゲッジスペースの拡大がある。旧型は、スタイリングを優先しているために積載量が少ないと批判されたが、新型では52リッター増やして377リッターに拡大された。
さて、3.0スポーツに関してひとつ要望を言わせてもらうならば、タイヤをもうワンサイズ細くしてみてはどうだろうか。試乗車には、コンチネンタルの235/45R17の「SportContact」が装着されていた。前述の通り、総体的なドライブフィールは文句ないものだが、ときに路面の大きな凹凸を越えるときに「ドタバタ」が感じられ、高級、上質感をスポイルする。タイヤの幅を細くすれば、すこしは緩和されると思うのだが……。ちなみに、「スポーツ」でないA4アバント3.0クワトロは、「215/55R16」を履いている。
アウディA4アバントには、5モデルが設定される。2リッター直4のFFモデル「2.0」「2.0SE」、1.8リッターターボの4WD「1.8Tクワトロ」、そして3リッターV6の「3.0クワトロ」と「3.0クワトロスポーツ」。今回『webCG』で試乗した「3.0クワトロスポーツ」は、最も豪華なもので、性能、装備ともにいうことはない。ただ、こういうクルマは、500kmを一気に走り切るような乗り方を頻繁に繰り返さないと、本当のありがたみはわからないのかもしれない。
蛇足ながら、以前、プレス向け試乗会に参加して各モデルを乗り較べたときは、運転感覚がスポーティな「1.8Tクワトロ」が一番個性的で、個人的には好ましいと思った。
(文=金子浩久/写真=清水健太/2002年6月)

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