アウディA6アバントシリーズ【海外試乗記】
「攻め」のスタイル、「受け」の実用性 2005.03.08 試乗記 アウディA6アバントシリーズ 昨年9月に日本上陸したアウディ「A6」に、ワゴンバージョンたる「アバント」が追加される。スペインで行われた海外試乗会から、自動車ジャーナリストの島下泰久が報告する。 拡大 |
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美しくあることへの強い思い
今になって振り返ってみると、美しいスタイリングこそを何より重視するアウディの「アバント」としては、先代「A6アバント」は物足りない部分もあったような気がする。いや、美しくなかったというわけではない。けれど、アーチ状のルーフラインや丸みを帯びたトランクリッドなどを用いて、前衛的ですらあった「サルーン」からすれば、良くも悪くもフツウだったと思うのだ。
それに較べると、「新型A6アバント」は、より攻めている。スペインはバルセロナ近郊、地中海を望む景勝地タラゴナをベースに開かれた国際試乗会で対面した新型A6アバントは、先代で提示したモチーフの磨き上げ、マイルド化に終始した感のあるサルーンとは逆に、美しくあることへの強い思いをひしひしと感じさせるものに仕上がっていた。
サルーンと同時に開発されていたというアバントのボディサイズは、全長4933mm×全幅1855mm×全高1463mmと、全長と全高がやや大きくなっている。このセグメントの中では、やはり相当な巨体ではあるのだが、後方に向かってなだらかに傾斜していくルーフラインや、そこに一体化されたルーフレール、そしてキュッと絞り込まれたリアエンドによって、そこにはサルーン以上の情緒、あるいは緊張感がもたらされており、さほど間延びしたような印象はない。
斬新ではないが、有用
ラゲッジ容量は、通常時で565リッター、最大で1660リッターとされている。これは先代よりそれぞれ110リッター、70リッターの大幅増ということになるが、その大柄なサイズからすれば、十分というほどでもない。何しろ全長が80mm短い「メルセデス・ベンツEクラス・ステーションワゴン」のラゲッジは、最大1910リッターにもなる。容量の面でむしろ近いところにいるのは、「BMW5シリーズ・ツーリング」のほうなのだ。でも、おそらくはそれに不満を言う人などいないのだろう。アウディのアバントは、美しさで勝負。それはもう誰もがわかっていることなのだ。
とは言いつつ、使い勝手のための工夫は色々と盛り込まれている。ラゲッジフロアの左右には、自由な位置にカーゴネットや間仕切りなどのアタッチメントを固定できるレールが敷かれ、やはり立てて自由な位置に固定できるフロアボードは、裏がウォッシャブルな素材となっており、汚れを気にせず物を放り込むことができる。電動式のテールゲートも用意された。どれも斬新なものではないが、せっかくのスタイリッシュなワゴンを、スマートに使いこなすのに有用なものばかりではある。
今回の試乗では、日本導入予定のもの、「TDI」など予定のないもの含め、多くのモデルを試すことができたのだが、基本的な走りの味は、A6サルーンと同じと言っていい。ステアリングのキレ味もエンジンレスポンスも、最近のアウディに共通の軽やかなタッチ。反面、路面のザラつきや凸凹に対する反応が、やや過敏な傾向も受け継いでしまっている。しかし、嬉しい驚きもあった。A6シリーズとしては初めて用意された「アダプティブ・エアサスペンション」が、なかなかの出来の良さで、そうしたネガを消してくれていたのだ。
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automaticで十分
車高だけでなく減衰力の調整機構まで備えたこのアダプティブ・エアサスペンション、普段は「automatic」にしておけば、低〜中速域での乗り心地は明らかに改善され、特に上屋の揺すられ感が大幅に減っていることを体感できる。それでいて速度が高まってくると、路面に吸い付くかのような抜群の安定感を見せつけてくれるのだ。ステージによっては、「comfort」や「dyanamic」、車高を高くする「lift」を選ぶこともできるが、今回試した限りでは、ほとんどの場面を「automatic」だけでこなせるのではと感じた。
最初に書いた通り、アウディのアバントはスタイリッシュであることこそが身上。となれば、率直に言って無駄に大きいこのサイズも、サルーンよりは説得力があると言えるかもしれない。ただ、特に使い勝手においてEクラス・ステーションワゴンを明らかに凌ぐという部分は多くないし、スタイルの良さでもラゲッジの容量でも5シリーズ・ツーリングに肉迫されている現状からすると、新規ユーザーを獲得するのはそう簡単ではないかなとも思う。
日本仕様のラインナップは、サルーンと同じく前輪駆動の「2.4リッター」と、「クワトロの3.2リッターFSI」、「4.2リッターV8」の3種類となる予定。本国仕様ではグレードを問わずオプション装着可能というアダプティブ・エアサスペンションだが、どのモデルに装備されるかは、オプションか標準装備かも含めて未定だという。この出来の良さなら、できる限り多くのモデルで選択可能となることを望みたい。なお、導入時期は今年の夏以降とのことである。
(文=島下泰久/写真=アウディジャパン/2005年3月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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