トヨタ・エスティマ2.4G 8人乗り(FF/CVT)/3.5アエラス “Sパッケージ”7人乗り(FF/6AT)【試乗記】
見た目も走りもシャープに 2006.02.01 試乗記 トヨタ・エスティマ2.4G 8人乗り(FF/CVT)/3.5アエラス“Sパッケージ”7人乗り(FF/6AT) ……407万9250円/420万8400円 トヨタ人気のミニバン「エスティマ」がフルモデルチェンジされた。シャープな印象に生まれ変わった3代目新型に試乗し、デザインと走りには満足だが、気になるところも……。![]() |
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磨き抜かれたフォルム
試乗会場で目の当たりにした新しいエスティマ。そのエクステリアデザイン、私はいいと思う。銃弾を半分に割ったような「ワンモーションフォルム」が特徴だった2代目エスティマ。3代目の新型もそのイメージを色濃く残していて、あまり新鮮に見えないかもしれない。しかし、よく観察するとフロントフェンダーからリアフェンダーにかけてのデザインが、すっきりしていることに気づくはずだ。先代はフロントフェンダーから前ドア、また後ドアからリアフェンダーにかけて、かなり目立つキャラクターラインを与えてシャープさを演出していたが、私は最後までこのわざとらしさや煩雑さが好きになれなかった。
ところが新型はどうだろう。余計なラインが排されてすっきりしているのに、先代よりもシャープで洗練された印象に変身している。相変わらずエグいフロントマスクには多少戸惑うものの、これなら私でも抵抗なく受け入れられそうだ。
すっきりしたといえば、インパネのデザインも旧型とはだいぶ違う雰囲気である。たとえばデザイン上のアクセントとなるセンタークラスターは、旧型が円をモチーフとしたデザインだったのに対し、新型では直線や四角が強調されている。ダッシュボード自体も水平基調のデザインとなった。運転中に視線移動が多いセンターメーターを個人的には好きにはなれないが、スポーツカーと違ってレブカウンターと睨めっこしながら走るタイプのクルマじゃないから、そう目くじらを立てるほどではない。
2.4リッター直4で十分だが……
新型エスティマのデザインに好感を持ったところでさっそく試乗に移ろう。まずは最量販モデルと予想される、2.4リッター直列4気筒エンジン搭載のG(前輪駆動)だ。
運転席に収まると、相変わらずまったくノーズが見えないが、広いグラスエリアと低いベルトラインのおかげで開放感は抜群である。
例によってセンタークラスター脇のスイッチを押してエンジンを始動。装備満載のこの試乗車は車両重量が1800kg近いが、それを感じさせることなくスムーズで力強く発進した。4000rpmで22.8kgmの最大トルクを発揮する2AZ-FE型のエンジンだが、2000rpm以下でもトルクは十分豊か。組み合わされるトランスミッションはCVTで、ドライバーがアクセルペダルに載せた右足に力をこめた瞬間にギア比を変えながらエンジン回転数を高めるから、もたつく感じもない。
それは高速でも同じことがいえて、追い越しの際にアクセルペダルを大きく踏み込めばスッとエンジン回転が跳ね上がり即座に加速が始まる。加速中、エンジンやトランスミッションが発するノイズがやや大きめなのが気になるが、それは巡航時の静粛性が高いことの裏返しともいえる。
その点、最高出力280ps/6200rpmを誇る3.5リッターV6の2GR-FEエンジンはより力強く、より静かだ。それは走り出した瞬間からわかるほどの差で、常用する3000rpm以下の頼もしさは歴然。また、エンジン回転が4000rpmを超えたあたりから勢いを増す加速もなかなかのもの。ただし、そういった状況ではエンジンルームから勇ましいサウンドがキャビンに流れ込んでくる。耳障りな音質ではないが、“V6=静かでスムーズ”というイメージを抱いていると、期待は外れるかもしれない。
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ロングドライブも苦にならない
新型エスティマの走りっぷりも文句のない出来だ。2.4リッターのGには215/55R17サイズのタイヤが装着されていたが、乗り心地はマイルドで街中でも快適。一方、高速ではもう少し上下動を抑えてシャキッとしたほうが個人的には好みだが、まずまずのフラット感だ。また、段差を越えるような場面でもショックをうまく遮断してくれる。
高速の直進性も優れていて、新採用の電動パワーステアリングの手応えも実に自然である。レーンチェンジではそれなりにロールを伴うが、決して不安を感じることはないし、ロールの収まりもいい。
225/50R18を履くアエラス“Sパッケージ”の3.5リッターは、ステアリングのフィーリングがさらにしっかりしていて、直進性も一段上のレベルだ。試乗車にはエスティマ仕様にチューニングがされたミシュランMXV8が装着されていたが、ロードノイズの低さや真円度の高さ、そして、優れたショックの遮断性により、インチアップのデメリットはさほど感じられなかった。
気になったのは2列目の快適性だ。17インチ、18インチともに、リアタイヤが発するロードノイズや、リアタイヤから伝わってくる振動が無視できないのだ。とくに今回の目玉ともいえる7人乗りモデルで、2列目ロングスライドシートを後方に下げてしまうと、さらに顕著になってくる。走行中はなるべく2列目を前の位置に、というのはなんとも皮肉である。そうはいっても、2列目、3列目ともにゴツゴツした乗り心地だったり、突き上げが感じられたりすることはなく、十分快適なレベルに収まっている。
ということで、いくつか気になるところはあったものの、総合的には実によくできたミニバンの新型エスティマ。直接乗り比べると当然3.5リッターがより魅力的だが、2.4リッターでも十分な性能で、私なら2.4リッターの前輪駆動、使い勝手を考えて7人乗りというモデルを選びたい。唯一残念なのは、最もベーシックなXでは“サイドリフトアップシート装着車”以外の普通の7人乗りが選べない。装備充実のGを売りたいのはわかるが、ぜひ安価な7人乗りモデルを用意してほしいものだ。(文=生方聡/写真=郡大二郎/2006年2月)
【Movie】サードシートが床下に格納されるさまが見られます。

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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