アルファロメオ・アルファ159 2.2 JTS(FF/6MT)/3.2 V6 Q4(4WD/6MT)【海外試乗記】
ドイツ車の客がOK出せる! 2005.07.08 試乗記 アルファロメオ・アルファ159 2.2 JTS(FF/6MT)/3.2 V6 Q4(4WD/6MT) アルファロメオのスポーティサルーン「アルファ156」の後継となるのは、数字が三つ増えて「159」。栄光のグランプリカーの名前を受け継ぎながらGMとの提携という大技を繰り出したこのモデルの海外試乗会は、ドイツ・ミュンヘンが舞台となった。自動車ライター渡辺敏史とNAVI編集委員鈴木真人が、ファーストインプレッションをお届けする。GMの骨格で「プレミアム」を狙う
鈴木:159はGMとの提携で生まれたプラットフォームを使い、エンジンもブロックはGM製です。それで、はたしてアルファらしさを保つことができているのか、というのが注目されていました。
渡辺:今回のクルマは、平たく言えばドイツ車の客が乗ってOK出せるブツになっているということです。それはアルファ・ロメオにとってはすごい前進だと思います。長期的な信頼性なんかはまだわかりませんが。なるほどなと思ったのは、これからは浮動票というか、部外者をとりにいかなきゃならないってことを社長が明言していたんで、その目標に対してはすごくぴったりきているクルマだなって。
鈴木:彼らの話を聞いていると、これは進化だ、っていう自負が強くありますね。それを普通とかグローバルスタンダードなんて言っちゃうと、つまらない話になってしまいますが。
渡辺:GMのソリューションを使うという大前提で、彼らの作業としては、その中でどうやってアルファ・ロメオらしさを表現するかっていうのが中心だったんじゃないでしょうか。
鈴木:見せかけでなく、ちゃんとやろうとしていますよね。ハンドリングでも、以前は切れ込んでいく感じをかなりあざとく味付けしていましたが、それがかなり影を潜めました。
渡辺:骨格自体はちゃんとしていると思うんですよ。ベクトラに乗った経験からすれば、恐ろしくちゃんとしているものを使っているから、出発点がいいところにあったという点はあると思います。それでもちょっと曲がっているところで乗った感じでは、アルファっぽい動きしてんなあって思いました。BMWみたいな鬼ダイレクト感ではなく、ユラッと入ってシュパッと抜けていくところなんか。
鈴木:それにしても、とうとうアルファ・ロメオまで「プレミアム」を使い始めましたね。プレミアムを標榜して、ベンツ、BMW、アウディのお客さんをもらうぞ! というつもりなんでしょうか。
渡辺:その辺は額面通り素直に受け取っちゃいけないと思うんです。彼らのいうプレミアムのコアにあるのは、精緻な作り込みとか絶対的な安定性とか信頼性とかというのではなくて、第一にエモーショナルであることだと思うんです。乗って楽しいとか、「うわ、すげえ!」と直感的に感動させるとか、そういうところでプレミアムブランドになろうとしているという点ではBMWに近いと思うんですね。アルファは彼らなりの「駆けぬける歓び」を表現しようとしているんじゃあないですかね。
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アウディ、BMWの客を取りにいく
鈴木:音はかなり作り込んできましたね。これは譲れない部分でしょうか。外で聞いていて、「おおっ!」て思いましたもん。
渡辺:端から聞いている音は、なんかBMWっぽくなりましたね。今まで長いこと使っていたV6から「ガ行の音」を取り除いた感じというか。昔はガシャゲロ唸っているところも含めてアルファ・ロメオだったのが取り除かれて、ザ行が強調されるようになりました。
鈴木:甲高い金属音がよく聞こえて、結構うれしかったですよ。プレミアムを目指すというところでいうと、内装外装でまだまだでしたが、チリ合わせとかのレベルは許容されるんですかね。
渡辺:たぶん僕らはアウディ基準の小姑目線になっているんです、普段。で、アウディみたいな内装の作り込みに喜びを求めるのは、走るというクルマの本質とは違うわけです。アルファ・ロメオは乗って楽しいというところにプレミアムのプライオリティがあって、だからほかはダメでもいいということではないけれど、そこはまあいいか、っていう感じにはなる。でも、目くじら立てるほどでもないかという程度にはできてると思います。
鈴木:エアコンの吹き出し口が無駄に三つ並んでいるところとか、トランクのオープナーが天井にあったりとか、そのあたりはいかにもアルファだなあ、と思いました。結局ドリンクホルダーは1個しかないし。
渡辺:イタリアとEUを合わせて90パーセントという商売をしているわけです、彼らは。だからアメリカでも商売をしていきたいなんて口では言っていても、カップホルダーに気を使う以前にやることがあったんでしょう。
鈴木:実際にはどこのお客さんをとりにいくんでしょう。
渡辺:本筋はアウディとBMWのラインだと思います。ベンツのお客さんとは対極的ですけど、なかにはちょっと遊んでみようとか思う浮動的な人もいるでしょうし。
鈴木:ニューモデルの常……というか、ボディサイズはBMWの3よりも少し幅が広いんですね。
渡辺:車格はひとまわり大きいでしょう。個人的には最大の不満点です。アルファに限ったことではありませんが、最近の欧州車は身頃感を無視しまくってますよね。
鈴木:日本ではマイナス要因かもしれません。
渡辺:高速道路とか山の中とか、狭い道でも、幅の広さは感じさせます。ただ、舵は切れるようになりました。前のアルファは絶望的でしたから。トレッドが広がった分切れ角が出ているんで、小回りは利くようになっていると思います。
「めっちゃアルファ」はGTAに期待
鈴木:日本に入るのはガソリンの3.2リッターQ4(4WD)と2.2リッターのFFで、今回はMTしかありませんでしたが、セレスピードがついてから来年の早い時期に導入されるようです。
渡辺:3.2リッターはATが付くようですね。
鈴木:どちらにしても2ペダルなわけで、3.2なんて特に2ペダルで乗るべきクルマなんでしょう。それで、値段もわからない段階なんですが、どちらを推しますか。
渡辺:なんだかんだいっても、2.2ですね。よく回ってちゃんと仕事しているというか、効率が高い感じがします。きっちり走らせるじゃないですか、あのデカい図体を。めちゃめちゃフレキシブルで、振動も少ないしオールマイティに使える。どういうシーンでもじれったさがない。3〜6速でクロスしまくるギア比は日本ではどうかなと思いますが。
鈴木:3.2はかなり重々しい感じでした。
渡辺:個人的には3.2の手応えくらいがアルファっぽいかなとは思います。ただ、159というクルマを素直に表しているのが2.2なんじゃないでしょうか。高効率で、クォリティも享受できて、価格は適正かどうかわかりませんが、買いやすいのは間違いないだろうし……。
鈴木:それは、アルファらしさなんていう観念的な話ではなくて、クルマとしてちゃんとしているという……。
渡辺:それがプライオリティとしてあって、その中でアルファらしさをできる限り表現してるということでしょう。「めっちゃアルファしてんなあ」というのは、GTAとかの派生モデルに期待しろということじゃないでしょうか。常日頃使うプレミアムカーとしての最低限のところは押さえつつ、アルファ感をできる限り盛り込んだというところで、159は総じていいクルマだと思いましたね。
(文=NAVI鈴木真人&渡辺敏史/写真=フィアットオートジャパン/2005年7月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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