フォルクスワーゲン・ニュービートルEZ(4AT)【試乗記】
もうちょっと、お高くてもイイ 2005.09.09 試乗記 フォルクスワーゲン・ニュービートルEZ(4AT) ……229万9500 「VWニュービートル」でもっとも手の届きやすい1.6リッターモデル「EZ」。国産モデルと争える、手頃なおシャレグルマの、それ自体に不満はないが……。30万円安いワケ
日本に入ってきてもう6年になるというのに、ニュービートルは相変わらず多くの人達から愛され続けている。もちろんそれには、ターボ、カブリオレと、どんどんバリエーションを増やし、常に新鮮な話題を提供してきたことが貢献しているのは間違いないところ。おかげで2005年上半期のセールスは輸入車の中で12位と、まだまだ新しいファンをどんどん増やしているのだ。
そんなニュービートルに、04年末に加わった一番新しい仲間。それがこの「EZ(イージィ)」である。その位置付けは、言わばラインナップの末弟。車両価格は229万9500円と、主力モデルである2リッターの「ニュービートル」より30万円近く安い設定だ。では、その価格はどのように実現されているのか。
まず一番大きいのは、エンジンが1.6リッターとされたことだ。これは最新の直噴「FSI」ユニットではなく、現在では「ゴルフワゴンE」に積まれる従来型。最高出力は102psで、4段ATとの組み合わせになる。一方、装備の面では、2リッターモデルとの比較ではアルミホイールがスチール+キャップになり、リモコンドアロック、パークディスタンスコントロール、フォグランプが省かれる程度。違いはたったそれだけなのである。
抜きたいヒトはどうぞ
ということで、気になるのは走りっぷりにどれほどの差があるのかということになるが、結論から言えばこのEZ、その点で物足りなさを感じる部分は、まーったく見当たらなかった。たしかに兄貴分と較べれば余裕は小さい。ニュービートルの2リッターユニットは、やはりFSIではない最高出力116psの、しかもSOHC2バルブなのだが、こちらも扱いやすさは抜群なのだ。けれど、EZの1.6リッターエンジンは吹け上がりの軽さでそれを十分補っている。むしろカラッと乾いた手応えは、クルマのキャラにぴったり合っているという気もしないではない。
だいいち、こういうクルマでは“速い遅い”は二の次でいい。抜きたいヒトはどうぞお先にいってもらい、自分なりに、クルマなりに心地よいペースで流す。ニュービートルは、それが仮にターボであっても、乗る人を自然とそんなユル〜い気分にさせてくれるクルマである。そう考えると、乗り手を無用に鼓舞することなく、逆にもどかしさも感じさせない1.6リッターエンジン、ますます不足など感じない。反応穏やかで乗り心地やさしいフットワークも、やはりそんな味わいを醸し出すのに一役買っていると言えるだろう。
一輪挿しはあるのに
導入初期のモデルでは時代遅れのカセット対応だったオーディオも、今ではちゃんとMP3対応のCD付きとなっている。しかもiPodなどを繋いで楽しめる外部入力端子まで備わった。とても広いとはいえないラゲッジにはネットが標準装備とされて、使い勝手も高まっている。コレ以上、一体何が要るっていうんだ?
いや、あるのだ、足りないものが。それは、あろうことか省かれてしまったリモコンドアロック。ニュービートルは、オシャレに小粋に乗りたいクルマである。それが今どき、キーを差し込んで「カシャッ」だなんて……いかがなもんだろうか。価格がたとえ5千円、1万円上がったとしても、これは絶対標準装備にするべきだ。じゃなければ、せめてオプションとしてでも用意してくれればいいのだが。
ちなみに例の一輪挿し。あれはEZでも標準装備なので、くれぐれもご心配なく。
(文=島下泰久/写真=峰昌宏/2005年9月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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