レクサスSC430(FR/6AT)/GS350(FR/6AT)/GS430(FR/6AT)【試乗速報(後編)】
日本プレミアムの華と誇り(後編) 2005.09.05 試乗記 レクサスSC430(FR/6AT)/GS350(FR/6AT)/GS430(FR/6AT) ……680万円/595万/814万2750円 日本に上陸した「レクサス」が放つブランニューカーが「トヨタ・アリスト」の後継たる「GS」。Eセグメントに果敢に挑むプレミアムセダンの実力を探る。コンパクトなのは立派
「IS」が約一か月遅れの導入となるため、「レクサス」開業当初のブランニューカーは「GS」のみということになる。「トヨタ・アリスト」の後継という位置づけになるわけだが、これからは日本でも「メルセデス・ベンツEクラス」「BMW5シリーズ」「アウディA6」といった欧州プレミアムセダンと真っ向から対決していく使命を負っていくことになるのだ。
これまでにも発表会などでスタイルは目にしていたのだが、日の光の下で改めて見てみると、カタマリ感のある彫刻的なフォルムは、都会的な雰囲気を醸し出していて、どこか泥臭さのあったアリストとは明らかに一線を画している。エッジと曲面が精妙に組み合わされた面には、趣のある陰影が映し出される。
Eセグメントのセダンとしては小さく見えるのはデザインの効用かと思ったら、実際にコンパクトなサイズである。巨大化したA6はもちろん5シリーズよりも小さく、モデルチェンジから3年を経たEクラスと全長、全幅はほぼ同寸である。新しくなればなるほど大きくなるのが通例である中で、このサイズに抑えたのは立派と言っていい。
実は骨太な走り
「華」担当のSCに対し、GSが主張するのは「ダイナミズム」だ。「走り」では定評のあるライバルに対抗するのに、どんな方法で立ち向かっていくのか興味深い。はじめに乗ったGS430は、ほぼフル装備と言えそうなモデルだった。AVS(アダプティブバリアブルサスペンションシステム)に加えてアクティブスタビライザーサスペンションシステムが装備され、コーナリング時の姿勢の安定とハンドリングの向上を図っているという。このほかにもプリクラッシュセイフティシステムやレーンキーピングアシストが付き、電子制御がてんこ盛りだ。
おかげでオプションだけで180万円以上というすごいことになっていたが、公道試乗ではもちろんそれらのディバイスがフルに働く局面は訪れない。このクラスのプレミアムカーでは、電子制御で運転性能と快適性を高めることは必須となっており、この手の技術を得意とする日本車が負けるわけにはいかないのは理解できる。
しかし、実はこのクルマの価値はもっと骨太である。たとえば30〜40km/hくらいで緩いコーナーを走っていて、何気なく気分がいいのだ。しっかりとしたボディと一体となった自分が感じられ、タイヤがはっきりと路面をとらえていることが手のひらを通じて伝わってくる。ごく日常的な場面で、このような感覚をもたらすクルマにはなかなか出会うことがない。ワインディングロードを攻めたり、アウトバーンで思いっきりスピードを出したりすることで喜びを感じるクルマももちろん素晴らしいが、生活の中で普通に走るだけで快を与えられるのはもっと希有な経験なのだ。
コストよりもクォリティ
GSのウリのひとつは、新しく搭載された3.5リッターエンジンである。「GS350」のスペックを見ると、最高出力は315psだ。「自主規制値」の280psを引きずったGS430よりも、パワー面では勝っている。それでいて車重は軽いわけだから、当然ながらこちらのほうがスポーティな走りの感覚をもたらす。430に比べて明らかに軽快な動きを示し、魅力的なエンジン音とあいまって若々しさが演出されている。細かいことを言えば振動などで不利だったりと弱点はあるものの、110万円の価格差を考えると相当にお買い得だと言えそうだ。
あとでエンジンの開発者に話を聞く機会があった。「10年間トップでいられるエンジンを作れ!」と厳命されたそうだ。それはハードな課題ではあったけれど、大いなる楽しみでもあったという。「レクサスなんだから最高のものでなくてはダメだ」と言われるのは辛いことでもあったが、コストよりもクォリティを優先することを求められれば、エンジニアとしては奮い立たずにはいられまい。ブランドの効果がこういう形で現れるならば、レクサスという物語をポジティブに評価するのは正当なことなんだと思う。
(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2005年9月)
・レクサスSC430(FR/6AT)/GS350(FR/6AT)/GS430(FR/6AT)(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017117.html
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。