レクサスSC430(FR/6AT)/GS350(FR/6AT)/GS430(FR/6AT)【試乗速報(前編)】
日本プレミアムの華と誇り(前編) 2005.09.03 試乗記 レクサスSC430(FR/6AT)/GS350(FR/6AT)/GS430(FR/6AT) ついに日本に上陸した「レクサス」は、まず「GS」と「SC」の2車種のラインナップから出発する。「レクサスカレッジ」で行われた試乗会から、2回にわたって速報する。意外な人気
富士スピードウェイの中に設けられた「レクサスカレッジ」で行われた試乗会で、朝一番に乗ったのは「SC430」である。2005年8月30日に「レクサス」が開業し、ブランニューカーとして注目を集めているのは「GS」なのだが、「トヨタ・ソアラ」のマイナーチェンジ版であるSCを敢えて選んだのには理由がある。新たに設定された「プレミアムイエローグリーン」という外装色が気になっていて、どうしてもその色のSCに乗りたかったのだ。
ソアラは1981年に初代がデビューした「高級パーソナルカー」だが、メタルトップを備えたオープンカーとして2001年に登場した4代目は、それまでとはまったくイメージを異にしていた。それどころかトヨタのほかのどのクルマとも共通性のないデザインで、実用性などいっさい顧慮しない潔さに拍手を送ったものである。華やかさということでは、トヨタの歴史の中で特筆されるべきモデルだったのだ。
日本でのレクサス開業にあたり、「アリスト」後継たるGSと「アルテッツァ」を継ぐ「IS」に加えSCが用意されたわけだが、細部をリデザインしたとはいえ、ソアラと変わらない姿をしたモデルでは「正直キビシいかな」と心配していた。しかし、開業当日に年内分を売り切ってしまうディーラーが続出するという人気ぶりなのである(月販目標は合計100台なので、1ディーラーあたりの割り当ては月1〜2台ではあるが)。
うれしい色がいっぱい
それもわかるのだ。デビューから4年を経ても、存在感は色あせていない。「走り」にフォーカスしたGS、ISに対し、SCは「レクサスの華」と位置づけられているのもむべなるかな、である。こういうどこか浮世離れしたクルマは、思い切りスカして乗らなくちゃいけない。無難な色とか流行色なんて選ばずに、ちょっと気恥ずかしくなるぐらいの派手なカラーをまとうのがいい。プレミアムイエローグリーンのほかにも、ライトブルーメタリックとかブラキッシュレッドマイカとかのとんがった色がそろっていて、うれしくなる。贅沢な「8コート塗装」のコスモシルバーにド派手な赤の内装を組み合わせるのもいい。
内装といえば、シートに使われる「セミアニリンレザー」が素晴らしい。しっとりとした風合いで柔らかく身体を包み込まれるのは、この上ない快感だ。「厳選した皮革を丁寧になめした」というだけあって繊細な感触だが、いかにも耐久性は低そうだ。しかも、試乗車に設定されていた「エクリュ」が汚れに弱いのは明白だから、神経を使うことになるだろうと心配になる。もちろん、泥のついた服で乗るようなクルマではないのだから、大きなお世話なのである。
足まわりより、大切なことがある
ソアラの弱点は、なんといっても貧弱な足まわりだった。ブレーキングでは大きくダイブし、コーナーでは本当にクリアしていけるのか確信を持てない。シャシーの剛性は決して低いとは感じないが、どうもボディの上下が別々に動くように思えた。SCでは新たに高性能なダンパーを採用し、「フラットな乗り心地」「高い路面追従性」を実現したという。大きな期待を胸に、試乗を開始した……が、基本構造を変えずに劇的に性能が向上するなんて甘いことを考えてはいけないのだった。特に、GSのピシッとした走りっぷりを試してしまうと、どうにも古さは否めない。
イヂワルを言って申し訳ない。そんなことはSCの価値を下げたりはしない。遠くから姿を眺めて、美しさにうっとりする。シートに収まって、プレミアムな空間に包まれていることに陶酔する。トップを開け放って、自分がクルマと一体となって都市の風景となっていることを自覚する。あとは風を感じながら、ゆったりとドライブを楽しめばいい。
だから、日本のレクサス開業にあたってSCがラインナップされたことは寿ぐべきことなのだ。高性能は確かに喜ばしいが、それだけではあまりに寂しい。「華」とともに新たなブランドが誕生したことは、これからのレクサスにとって小さくない意味があると思う。(後編につづく)
(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2005年9月)
・レクサスSC430(FR/6AT)/GS350(FR/6AT)/GS430(FR/6AT)(後編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017118.html

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。