ルノー・メガーヌ・グラスルーフカブリオレ【試乗速報】
もっと(前席に)光を! 2005.01.07 試乗記 ルノー・メガーヌ・グラスルーフカブリオレ ……388万5000円 ルノー・メガーヌのオープンモデルは、「グラスルーフカブリオレ」。人気のクーペカブリオレの屋根をガラスとし、クローズ時にも開放感を持たせようというアイディアを盛り込んだモデルに『NAVI』編集委員鈴木真人が乗った。飽和状態の中に参入
「トヨタ・ソアラ」や「プジョー206CC」が登場した時には、「電動メタルトップのオープンカー」というコンセプトそのものが新鮮に思えたものだ。でも、今や軽自動車の「ダイハツ・コペン」から「メルセデス・ベンツSL」や「キャデラックXLR」のような超プレミアムモデルまで、ラインナップが豊富で選び放題だ。
そんな飽和状態の中に参入するには、何か目玉がなくてはならない。そこでルノーが考えたのが、屋根を閉じている時も開放感を感じさせるという仕掛けだ。
電動メタルトップならぬ電動格納式グラスルーフの採用は世界初で、ここに新味がある。このアイディアが功を奏するか否かが、後発であることを強みにできるかどうかの分かれ道だ。プジョー206、307CCが「クーペカブリオレ」だったのに対し、メガーヌは「グラスルーフカブリオレ」を名乗っている。
ルノーデザインとしてはおとなしい
オープンカーの気持ちよさは格別なものだが、気候天候に加え、都市の交通環境という大敵が待ち構えていて、いつも快適に乗れるとは限らない。だから、普段はクーペと変わらない堅牢なボディで覆われることは、現代のユーザーにとって福音である。しかも、2シーターではなく、曲がりなりにも4人乗車が可能というのはありがたい。
1台のクルマを幾通りにも使えることを「貧乏くさい」と感じる向きもあるだろうが、複数所有が叶わない状況が普通なのだから、「変身するクルマ」は歓迎すべきものだ。
スタイリングは、メガーヌハッチバックとはあまり共通性がない。屋根を上げている姿には、奇を衒ったりデザイン上の遊びに走ったりしたところはなく、きれいでスッキリとしたプロポーションだ。後ろにいくにつれて緩やかにのぼっていくショルダーラインと、わずかに曲率を変化させる円弧が形作る小さな空間は、シンプルな面で構成された側面ボディといい感じのリズムを作り出している。昨今のルノーのデザイン傾向からみると、おとなしく感じられるほどだ。
ルーフの開閉はサイドブレーキ横にあるスイッチによって行われ、どちらの操作も22秒で完了する。ガラス素材なので、タイミングがちょっとずれただけでも大変なことになりそうだが、絶妙な仕掛けが魔法のように作動して、何事もなくメタモルフォーゼが進行する。開閉のアクションの巧みさが、この種のクルマにはエンターテインメントの要素でもある。
オープンモデルで5つ星
運転してみれば、まぎれもなくメガーヌである。初めての人は戸惑うであろうカードキー&ボタンでエンジンをスタートさせ、最大トルクの90%を2000rpmから発生する実用エンジンを4段ATで操作する。特にスポーティということはないが、エンジンやトランスミッションはこの種のクルマでは存在感を消したほうがいいのかもしれない。ステアリングは、ハッチバックよりも重い設定になっているようだが、中心付近に少し曖昧な感覚が残るのは同じ。新しいステアリングシステムになってからの症状だが、文句を言うのは日本人だけで、本国フランスでは好評なのだという。
折りたたみ式格納ルーフの常で、ウィンドスクリーンは低く長く延び、シートを前方のポジションにすると頭の上にまで達する。ただ、ハッチバックに比べ24mmシートが下げられているということもあるのか、窮屈さは感じない。肝心のグラスルーフは……運転席からは天井を見上げなくては見えない。構造から考えれば、当然だ。
恩恵を受けるのは、後席である。自然な姿勢のままで、大きな視界を得ることができる。それでいて、紫外線を95%カットするというから、日焼けに敏感な女性も安心だ。ただし、やや立ち気味の後席シートに合わせ、礼儀正しい姿勢を保つことは覚悟しなければならない。
特筆すべきは、安全性能である。オープン状態でユーロNCAPの衝突安全試験に臨み、見事にオープンモデルとしてCセグメント唯一の5つ星を獲得している。横転時にはリアシートの自動アンチロールオーバーバーが立ち上がり、乗員保護の空間を確保する。現代のクルマに不可欠の要素が、この安全性能である。その代わり、オープンカーといえども、昔のようなむき出しの開放感を満喫するのは難しい。それでも、光と風を感じたい、という欲求を少しでも満たすために、グラスルーフカブリオレという発想が生まれたのだ。開放感を求める技術的挑戦には、心から敬意を表したい。
(文=NAVI鈴木真人/写真=高橋信宏/2005年1月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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