スバル・インプレッサS203(6MT)【試乗記】
まだ見えぬプレミアム 2004.12.29 試乗記 スバル・インプレッサS203(6MT) ……474万4215円 STiの手になるインプレッサのコンプリートカー「S203」。ワークスチューンで最高出力320psを誇るそれは、従来のスポーティ一辺倒ではなく、プレミアム路線を目指してつくられたという。『webCG』記者のリポート。インプレッサがプレミアム?
「インプレッサS203」は、「インプレッサWRX STi」をスバルワークスたるSTiがチューニングしたコンプリートカー「Sシリーズ」の最新モデルだ。最高出力320ps/6400rpm、最大トルク43.0kgm/4400rpmという、日本車ばなれしたスペックを誇り、価格は460万9500円。555台の限定販売である。
数値を見ると、2002年に400台限定で販売した「インプレッサS202 STi version」(320ps、39.2kgm)に近いが、しかし、スポーツ一辺倒のクルマではない。高性能であることに加え、見て乗って味わえる高い質感などの“プレミアム”を付与した「グローバルスポーツセダン」というのがSTiの主張である。
いきなりプレミアムとかグローバルスポーツといわれても、元がインプレッサだけにピンとこないのが正直なトコロ。スペックから想像される化け物じみた速さと、上質感を両立できるのか疑問だったが、乗ってみて「ナルホド」と思わせるプレミアムが与えられていた。
実のあるモディファイ
エクステリアの変更はすくなく、高速性能に配慮してフロントアンダースポイラーやリアスポイラー(2段調節式)を装着するのみ。ニブく光る鍛造ホイールに組み合わされるのは、ノーマルより一回り大きい、235/40ZR18インチのピレリ「P ZERO CORSA」である。見た目は地味だが、エアロパーツは軽量&高剛性のドライカーボン製で、フロントゼロリフトを実現。ホイールとタイヤは、ノーマルに比べて1本あたり約1.5kg軽いなど、実のあるモディファイが行われた。
グレートーンの落ち着いたインテリアで目を引くのは、レカロと共同開発したバケットシート。座面と背面にドライカーボン製シェルを採用したバケットシートに、ダイヤル式のリクライニング機構を与えたものである。シェルはモータースポーツ用というだけあってホールド性は高く、おしりと背中にヒタっとフィットして接触面で体を支えてくれ、疲れ知らずで座り心地はよい。ショルダーの張り出しが大きく乗り降りに不便だし、一部カーボン剥きだしの見た目はやや無骨だが、機能的にはドライバーズカーのシートとして最高位にあると思った。ちなみに、レカロ社はインプレッサ専用品として、シート単体を55脚限定で発売。価格は55.5万円である。
足もエンジンも別モノ
走り出すと、スペックに表れないS203のプレミアムが理解できる。まずエンジンが別モノだ。吸排気系やECUの変更に加え、軸受けにボールベアリングをもつ大径ターボチャージャーを採用。低回転からトルクが滑らかに立ち上がり、パワーが衰えることなく8000rpmまであっという間に吹けあがる様は、まるで4リッター級の多気筒エンジン。絶対的な速さはいうまでもないが、たとえば暴力的なspec.Cの加速感とは一線を画す。
乗り心地もイイ。スプリングは強化品、ダンパーに「タイプRA」と同タイプの、減衰力4段可変式のストラットを装着するが、足がしなやかに動くダンピング設定により突き上げに鋭さはなく、ボディはフラットに保たれる。車重が重いせいか、軽量なspec.Cのように波状路でユサユサ揺すぶられることもない。
まさにオンザレールのハンドリングにも驚く。リアスタビライザー径を拡大して回頭性を上げたS203は、ステアリングホイールの動きにピッタリ反応。しかし、安定感を失うことがない。ノーマルのインプレッサはアンダーステア傾向である一方、前後の荷重移動に敏感で、特に高速域でちょっと緊張するが、S203は安心して曲がりを楽しめた。
まぁ、いろいろ書きつらねたけれど、S203のプレミアムは、運転時の感覚に依存する傾向が強く、文字でお伝えするのはムズカシイ。STiは、試乗車で全国のディーラーを行脚するそうなので、機会があったら是非乗っていただきたい。S203には、乗ってはじめてわかるプレミアムがあると思う。
(文=webCGオオサワ/写真=峰昌宏/2004年12月)
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|

大澤 俊博
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】
2025.12.6試乗記マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。

































