第140回:郷さんおめでとう!超ラッキー&感動、ルマンで「君が代」を聴く!
2004.06.17 小沢コージの勢いまかせ!第140回:郷さんおめでとう!超ラッキー&感動、ルマンで「君が代」を聴く!
■気さくなクルマバカ
つくづく俺って幸運な男だと思いました。生まれて初めて行った「ルマン24時間」レース本番。ラッキーにも日本人チーム&(一部)日本人レーサーによる、総合優勝に立ち会えたのだ。日本じゃ、トーチュー以外の新聞ではほとんど報道されてないけどさ。コレって相当な偉業よ。
1991 年にはマツダが、1995年には関谷正徳さんが、日本ワークスチーム、あるいは日本人ドライバーとして初めて総合優勝を遂げてるけど、こと日本人プライベーターとしては今回が初! そう、例のナゾの日本人、郷和道さんのチーム、「アウディ・ジャパン・チーム郷」による勝利であーる。
もちろんマシンは2003年優勝の「アウディR8」。ドライバーも去年どころか今回で驚異のルマン6連勝(!)のスーパードライバー、トム・クリステンセンを起用しての偉業ではあるが、凄いことはスゴい! なんつっても、他に同じような体制のチームが3つあったし、個人的にも郷さんは、俺が某誌で連載中の「クルマバカ列伝」にも出ていただいた方だからね。親近感が違うのよ、親近感が。
郷さんってのは前にもいったけど、ブリヂストンの創業者一族の末裔で、たしかに超が何個もつくぐらいのお金持ちなんだけど、俺はこの、正々堂々自分の名前でルマンに出る姿勢が好きです。いいじゃないのさ、好きな人ができることをやるくらい。だいたいああいう立場で、自ら「バカ」と呼ばれることをいとわない、その姿勢が好きです。もちろんその気さくな人柄もね。
■ホント感激
郷さんはレース直前、俺のくーだらない素人質問にもまたまた気楽に答えていただきました。
小沢:一言“ルマンでしか味わえないもの”ってなんでしょう?
郷:“本物感”ですね。世界最古の80年分のレースフォーマットでしか味わえない“独特の重み”みたいなものですよ。小沢:F1とも違いますか?
郷:F1ももちろん本物ですけど、ルマンの方がお祭り気分かもしれません。夜、遊園地行きました? お父さんはレース見れてもちろん楽しいけど、子供たちも普段より夜遅くまで遊べて楽しいし、おじいちゃんはおじいちゃんで孫と遊べて楽しい。つまり、みんな楽しい。まさにお祭りじゃないですか。
小沢:なるほど。
郷:それから映画ですよね。いるだけで映画の中の主人公になれる。ここまで凄いレースはほかにないです。
小沢:ふーん。ところで郷さんはレース中、普段なにやってるんですか?
郷:心配、ただひたすら心配(笑)。
でね、ゴール2時間半ほど前、最後の荒聖治選手にドライバーチェンジする瞬間を見に行ったのね。そしたら郷さん、ほとんど子供が生まれる前のパパみたいな心配顔。なにも声かけられなかったけど、こっちまで緊張しちゃうほどの顔付きがたまらなかったです。勝利者インタビューでは「BEST OF IN MY LIFE」とのお答え。苦節6年(でしたっけ?)。ホント感激です。
一方、その喜びに便乗したおのぼりさんの俺としては、突然流れ出した「君が代」に妙に感動。サッカー日本代表選手の気持ちがわかったような感じよ。まわりに日本人はすくなかったし、正直、あんまり期待してなかったしね。ナショナリズムってつくづく、体内に埋め込まれてるものなんだなぁ。改めてそれにビックリしました。
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ちなみに余談だけどさ。今回総合2位と5位に入った同じくアウディR8を擁する「ベロックス」というチーム、実はサム・リーという弱冠34歳の香港人がオーナーで、父親は香港のHSBCという巨大銀行の頭取。本人もヤリ手の実業家なんだって。ついでに同じくR8で3 位に入った「チャンピオン」ってチームも、オーナーはインド人。
つまり、今回のルマンは、アジア系の富裕層が中心になっていたのだ。いまやヨーロッパのサッカー界はロシアンマネーが凄いし、みたいなもんか。妙なところに社会の縮図が垣間見えます。面白いもんだよね。レースって。
(文=小沢コージ/2004年6月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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