ランボルギーニ・ガヤルド(6MT)【海外試乗記(前編)】
冷たい猛牛(前編) 2003.07.01 試乗記 ランボルギーニ・ガヤルド(6MT) 2003年のジュネーブショーでデビューした“ベイビィ”ランボこと「ガヤルド」。「ムルシエラゴ」に続く新生ランボルギーニの第2弾に『webCG』記者が乗った。イタリアはローマの北、バレルンガ・サーキットからの報告。新世代ランボ、1770.0万円
2003年6月23日から約1週間、ローマの北にあるバレルンガ・サーキットは、最も贅沢なドライビングスクールの会場となった。ランボルギーニのニューモデル「ガヤルド」のプレス&ディーラー向け試乗会が開催されたのだ。
「“ベイビィ”ランボ開発中!」と、ウワサになって久しかったイタリアン・エグゾチックのV10モデルは、2003年ジュネーブショーでデビューを果たした。闘牛のブリーダーの名前から、ガヤルド(Gallardo/発音は「ga:yardo」)とネーミングされて。
“ベイビィ”の愛称とは裏腹に、ガヤルドは横幅1900mmという立派な体格をもつ。といったそばからナンだが、全長4300mm、全高1165mm、ホイールベース=2560mmだから、ライバルを目する「フェラーリ360モデナ」よりは、じゃっかん小さい。いまや親会社となったアウディ由来のアルミスペースフレーム・ボディ(アルミ合金の骨格に、アルミのボディパネルを貼る)に、360より2気筒多い10発をミドに積み、かつ(相対的に)コンパクトに収めたというのが、ランボルギーニのジマンだ。1430kgのドライウェイト。500psの5リッターV10。パワー・トゥ・ウェイト・レシオは、2.86kg/psとなる。フェラーリのスペシャルモデル「チャレンジストラダーレ」(2.78)にはわずかに届かないが、直接の相手となる“ノーマル”モデナは軽く凌駕する。
10気筒エンジンに組み合わされるギアボックスは、6段MT。コンベンショナルなフロアシフトタイプと、ステアリングコラムから左右に生えるパドルでギアを変える「e-ギア」仕様が用意される。
日本での前者の価格は、1770.0万円。2シリンダー多いパワープラントをもつにもかかわらず、フェラーリ360モデナとの価格差は95.0万円に抑えられた。オートマ免許でも乗れる(!)e-ギアは、約100万円のオプション設定となる予定だ。
閉塞感が強い
バレルンガ・サーキットのピット裏には、黒と黄色のニューモデルが交互に、ズラリと並んでいた。試乗会が開催されたラッツィオ州は、連日、気温が30度を超える異常気象。しかし強い日差しの下でも、ガヤルドのエッヂが利いたスタイルは、クールだ。
新設されたランボルギーニ・チェントロ・スティーレ(デザインセンター)のルーク・ドンカーヴォルケ氏は、「モノフォルム」「フォワーディッド・コクピット」「強い傾斜をもつノーズ」と、不世出の傑作「カウンタック」のデザインキーを、新世代ランボのなかに、みごとに翻訳し直した。これらをひとくくりに「ランボルギーニ・トラデッション」と謳う広報資料にへそ曲がりなリポーターはちょっとひっかかるが、しかし、ムルシエラゴの下位モデルであるからと、ガヤルドにかつてのエントリーブル「ウラッコ」の面影を探るのは、亡き子の歳を数えるようなものだろう。
V10ガヤルドに、衆目を驚かすガルウィングタイプではなく、コンベンショナルな前ヒンジ式のドアが採用されたのは、12気筒モデル「ムルシエラゴ」との差別化と、日常での使い勝手に配慮されたためである。「a true sports car that can be used on an every day basis(毎日使えるスポーツカー)」と、プレス資料のコンセプト欄には記される。
キャラクターラインの一部となっているオープナーを引いて、レザーのバケットシートに座る。クッションは硬く、薄く、そして低い。カバンからメジャーを出しておおまかなヒップポイントを図ってみると、地上から約30cm。シートは電動で前後上下に、またランバーサポートを動かせるが、ハイトを上げると、主にクッション前部が上昇するので、どうもポジションがしっくりこない。諦めて一番低い位置のままステアリングホイールを握る。ダッシュボード上面が、ずいぶん高く感じられる。窓枠下端も高いので、身長165cmのリポーターにとってガヤルドのドライバーズシートは、閉塞感が強い。
もう一皮……
公道のテストドライブに供されたのは、パドルシフトのe-ギア仕様。キーを捻ると、500psの10気筒にアッサリ火が入る。駐車されていた場所の関係で、いきなりバックする必要に迫られたのだが、オシリをシートから浮かせて、中腰になってリアガラスを覗くと、まずまずの後方視界が確保される。
直径36cmの小径ながら太めのリムをもつステアリングホイールを握って走りはじめたとたん、アウトモビリ・ランボルギーニは「やけに舗装の悪いコースを選んだもんだなァ」と感心(?)する。道は、2台のクルマがすれ違う余裕はあるけれど、2m弱の横幅をもつクルマには狭く、そのうえ小さなブラインドコーナーが続くので気が抜けない。
前235/35ZR19、後295/30ZR19というアグレッシブなタイヤ(ピレリ Pzero)を履くベイビィランボは、路面の荒れ具合を正直にドライバーに伝える。しかしボディはしっかりしていて−−ドイツはネッカースウルムでつくられるアルミスペースフレーム・ボディという予備知識があったためかもしれないが−−「ビィィン!」という一種独特の反発を感じさせて、サスペンションからのぶしつけな入力を跳ね返す。
ガヤルドの4輪ダブルウィッシュボーンには、Koni社の開発になる「FSD」と呼ばれる減衰力自動調整タイプのダンパーが採用された。これは、メカニカルにダンピングを「ハイ」と「ロウ」に切り替えるもので、道路からの入力が細かいと柔らかく、大らかなときには硬めに設定される。街なかでの乗り心地と、高速での安定性の両立を図ったわけだ。バレルンガ周辺の公道テストでは、明らかに前者のモードだったはずだが、それでも乗り心地はむしろハードで、すくなくとも“ソフト”という印象は受けなかった。
もちろん新しいランボにラクシャリーな安楽さは求めないけれど、少々バネ下の動きが“ナマ”な感じで、エクスクルーシブなスポーツカーに乗り慣れた目の肥えたお客様を唸らせるには「もう一皮むける必要があるんじゃないか」と思った。テスト車は、まったくのニューモデルの、しかもファーストロットだから、まだまだブラッシュアップの途上なのだろう。
……と、そんなことを、ICレコーダーにブツブツつぶやきながら運転していると、「ビュン!」と、撮影中のガヤルドが反対車線を駆けぬけた。「オッ!」と息をつめるカッコよさである。即座に自分も同型のクルマに乗っていることを思い出し、さっそくICレコーダーを放り出すと、ペースを上げて走りはじめた。(中編に続く)
(文=webCGアオキ/2003年6月)
・ ランボルギーニ・ガヤルド(6MT)【海外試乗記(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013528.html
・ ランボルギーニ・ガヤルド(6MT)【海外試乗記(中編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013521.html
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
フェラーリ849テスタロッサ(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.2.3 フェラーリの新型スーパースポーツ「849テスタロッサ」は、スペシャルモデル「F80」に通じるデザインをまとい、歴史的な車名が与えられている。期待高まる、その走りは? スペインで試乗した西川 淳の第一報。
-
レクサスRZ550e“Fスポーツ”(4WD)【試乗記】 2026.1.31 レクサスの電気自動車「RZ」が大型アップデートを敢行。特に今回連れ出した「RZ550e“Fスポーツ”」は「ステアバイワイヤ」と「インタラクティブマニュアルドライブ」の2大新機軸を採用し、性能とともに個性も強化している。ワインディングロードでの印象を報告する。
-
スズキ・ワゴンR ZL(FF/5MT)【試乗記】 2026.1.28 スズキの「ワゴンR」がマイナーチェンジ。デザインを変更しただけでなく、予防安全装備もアップデート。工場設備を刷新してドライバビリティーまで強化しているというから見逃せない。今や希少な5段MTモデルを試す。
-
スバル・ソルテラET-HS(4WD)【試乗記】 2026.1.27 “マイナーチェンジ”と呼ぶにはいささか大きすぎる改良を受けた、スバルの電気自動車(BEV)「ソルテラ」。試乗を通して、劇的に改善した“BEVとしての性能”に触れていると、あまりに速いクルマの進化がもたらす、さまざまな弊害にも気づかされるのだった。
-
ホンダ・シビック タイプR/ヴェゼルe:HEV RS 純正アクセサリー装着車【試乗記】 2026.1.26 ホンダアクセスが手がける純正パーツを装着した最新ラインナップのなかから、「シビック タイプR」と「ヴェゼルe:HEV RS」に試乗。独自のコンセプトとマニアックなこだわりでつくられたカスタマイズパーツの特徴と、その印象を報告する。
-
NEW
ライバルはGR? ホンダが発表したHRCのモデルラインナップとその狙いに迫る
2026.2.5デイリーコラムホンダが東京オートサロン2026で、HRC(ホンダ・レーシング)の名を冠したコンセプトモデルを6台同時に発表した。ホンダのカスタマイズカーとして知られるモデューロや無限との違い、そしてHRCをメジャーシーンに押し上げる真の狙いを解説する。 -
NEW
スズキeビターラZ(4WD)/eビターラZ(FWD)【試乗記】
2026.2.5試乗記スズキから初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」がいよいよ登場! 全長4.3mで、航続距離433~520km(WLTCモード)、そして何よりこのお値段! 「By Your Side」を標榜(ひょうぼう)するスズキ入魂のBEVは、日本のユーザーにも喜ばれそうな一台に仕上がっていた。 -
NEW
第947回:秒殺で当確? 新型「ルノー・クリオ」が販売店にやってきた!
2026.2.5マッキナ あらモーダ!欧州で圧巻の人気を誇る「ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)」がついにフルモデルチェンジ! 待望の新型は市場でどう受け止められているのか? イタリア在住の大矢アキオが、地元のディーラーにやってきた一台をつぶさにチェック。その印象を語った。 -
第101回:コンパクトSUV百花繚乱(後編) ―理由は“見た目”だけにあらず! 天下を制した人気者の秘密と課題―
2026.2.4カーデザイン曼荼羅今や世界的にマーケットの主役となっているコンパクトSUV。なかでも日本は、軽にもモデルが存在するほどの“コンパクトSUV天国”だ。ちょっと前までニッチだった存在が、これほどの地位を得た理由とは? カーデザインの識者と考えた。 -
社長が明言! 三菱自動車が2026年に発売する新型「クロスカントリーSUV」とは?
2026.2.4デイリーコラム三菱自動車が2026年に新型クロスカントリーSUVの導入を明言した。かねてうわさになっている次期型「パジェロ」であることに疑いはないが、まだ見ぬ新型は果たしてどんなクルマになるのだろうか。状況証拠から割り出してみた。 -
日産エクストレイル ロッククリークe-4ORCE(4WD)【試乗記】
2026.2.4試乗記「日産エクストレイル」に新たなカスタマイズモデル「ロッククリーク」が登場。専用のボディーカラーや外装パーツが与えられ、いかにもタフに使い倒せそうな雰囲気をまとっているのが特徴だ。高速道路とワインディングロードを中心に400km余りをドライブした。






























