日産スカイラインクーペ350GTプレミアム(6MT)【ブリーフテスト】
日産スカイラインクーペ350GTプレミアム(6MT) 2003.03.21 試乗記 ……380.0万円 総合評価……★★★★![]() |
ドライマティーニ
深夜の帰宅。「日産スカイラインクーペ」のステアリングホイールを握る。何気なしにオーディオのモードを「CD」にすると、前の洒落モノが抜き忘れたか、日産広報部の陰謀か、おそらく後者なのだろうが、女性のジャズボーカルが車内に響いた。350GTプレミアムは、8スピーカーの「BOSEのサウンドシステム」を標準で装備する。3.5リッターV6の野太い音を通奏低音に、今宵ジャジーな夜はふけてゆく。しばらくすると、ルーフを打つ雨音が伴奏に加わって……。
豊かなトルクを誇るV6エンジン、細かく刻まれた6段MT、そしてどっしりした乗り心地。いざ鞭を入れれば、4ドアセダンをして「あまりにラグジュアリーに流れたのでは?」と心配するスカイラインファンを納得させるスポーティさをもあわせもつ。オトコらしい! 昔取ったナントカで、「こういうクルマは、ホントはオートマの方がいいんだけど……」なんて言いながらシフトをキメたりすると、渋い。たとえ独り言でも。
スカイラインクーペは、北米に軸足を置いた“大人の2枚ドア”。ハードボイルドな情景がよく似合う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
日本では、2003年1月16日に発売されたスカイラインクーペ。「Stylish and Performance」を商品のコンセプトにした、日産いうところの“プレミアムスポーツクーペ”である。北米では、上級ブランド「インフィニティ G35スポーツクーペ」として、先行販売された。
V6をフロントバルクヘッド直前に置くFM(フロントミドシップ)レイアウトをとるFR(後輪駆動)モデルとして、「スカイラインセダン」「フェアレディZ」につづく第3弾。エンジンは280psを発生する3.5リッターV6。クーペ専用チューンである。トランスミッションには、6段MTまたはシーケンシャルモード付き5段ATが用意される。
(グレード概要)
スカイラインクーペは、基本的に「350GT」のモノグレード。ただし、装備を奢った「プレミアム」仕様あり。装備の違いは、「革内装」「オーディオコントローラー付きステアリングホイール」「エアコン左右独立温度調整機能」「BOSEサウンドシステム」など。なお、スカイラインクーペは、オートマよりマニュアルモデルの方が14.0万円高い。MT車のホイールは18インチとなり、対向ピストンをもつブレンボ社製ブレーキが奢られる。また、リアにはビスカスLSDが標準装備される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
基本的にセダンのそれを踏襲するインパネまわり。機能面での不満はないが、革シボ調、ドット、アルカンタラ、ファブリック、メタル調パネルと、素材感、デザインの面からの統一感に欠けるのが残念。センターコンソール、ドアハンドル、スピーカーまわりに、チタン調の“加飾”処理が施されるのが、セダンとの違い。
オーディオのコントローラーを備えるステアリングホイールは、チルト(上下)調整が可能。その際、メータークラスターも一緒に動いて、計器類の視認性を確保する。ナビゲーションディスプレイが収納式なのは、おそらく防犯目的だろうが、運転中はたいてい武骨に飛び出したままとなる。あまりスマートとは思えないのだが……。
(前席)……★★★★★
本革とアルカンタラを用いた贅沢なスポーツシート。たっぷりとしたクッション、わざわざオシリと太股の部分を凹状にして、Uの字型にアルカンタラを使って、フィット感に留意する。上体のサポートもじゅうぶん。他社のパテントに触れるのを嫌ったか、電動スイッチは一般的なL型でなく、機能ごとにスイッチがわりふられる。ドライバーズシートは、スライドほか、シートごと前後2種類を基軸に角度調整可能。リクライニング、ランバーサポートは手動だ。
(後席)……★★
ふたりのためのクーペゆえ、後席は狭い。低く落とし込まれた座面、頭髪がリアガラスに触れるヘッドクリアランスのなさ。それでも大人がなんとか座れるだけのスペースは確保される。2人用の3点式シートベルトが備わる。助手席側のドアが開いていれば、助手席シートバックのレバーを引くだけで、背もたれを前に倒した助手席が前方にスライドするので、後席の乗降性がよくなる。
(荷室)……★★
ゴルフセットを2つ積めるというトランクだが、「“スポーツ”と“スタイル”を優先した」という日産の主張通り、狭い。床面最大幅は146cmとなかなかだが、かさばるマルチリンクサスを納めるためのホイールハウスがすぐに左右から大きく浸食、幅は95cmに縮まる。奥行きも95cm。オーディオ類が上部空間を食うため、実際に使える上下幅は30cmに満たない。荷室内にあるレバーをひくと、後席バックレストを一体に倒してのトランクスルーが実現する。ただ、ボディ剛性確保のためのブレーズ(補強材)が開口部を囲うため、開口部そのものが狭い。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ドロンとした回転フィールが排気量を感じさせるVQ35DEユニット。と書くと、いかにも鈍いエンジンのようだが、さにあらず。重々しいフィールとは裏腹に、スロットル操作に合わせてタコメーターの針はキレイに回り、シフトダウン時の回転合わせでは、「ズロン!」と迫力あるブリッピングを楽しめる。市販車もテスト車と同じフィールをもつならば、そうとうにいいエンジンだ。6MTは、3.5リッターにはもったいないほど細かく刻まれる。大トルクゆえ、タイムアタックをしているのでなければ、多少ずぼらなギアチェンジでも十分対応してくれる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
タイヤの一転がりめから、ボディの高い剛性感をアピールするスポーツクーペ。低音を響かせるV6と合わせ、「ただ者でない」威圧感をもつ。乗り心地は重厚で、フラット。鍛えられた足まわりは、18インチホイールをもてあますことがない。
リアタイヤの直前に座るカタチになるフェアレディと比較して、ホイールベースが200mm長いスカイラインクーペは、乗員がセンター付近に位置する。ダイレクト感では譲るが、比較的穏やかな挙動で、“スポーティ”を堪能することができる。ステアリングフィールもいい。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年3月18日-19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式: 2003年型
テスト車の走行距離 :7301km
タイヤ :(前)225/45R18 91W(後)245/45R18 96W(いずれもブリヂストンPotenza RE040)
オプション装備 :TV/ナビゲーションシステム(DVD)+ETCユニット(ビルトイン)(24.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態 :市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離 :567.7km
使用燃料:78.0リッター
参考燃費:7.3km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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