スバル・インプレッサ WRX STi/WRX STi spec C 17インチ仕様(6MT/6MT)【試乗記】
300万円の驚異 2002.11.02 試乗記 スバル・インプレッサ WRX STi/WRX STi spec C 17インチ仕様(6MT/6MT) ……295.8万円/320.5万円 2002年11月1日に改良された、スバル「インプレッサ」。デザインの変更に加え、最強グレード「WRX STi」のエンジンは、最大トルク40kgmの大台を突破! ガラリと顔つきを変えた新型に、自動車ジャーナリストの河村康彦が富士スピードウェイで乗った。
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復讐の“FISCO”
富士スピードウェイ(FISCO)で、2002年11月1日に“ビッグマイナーチェンジ”が施された、スバル「インプレッサ」に乗った。だが、何ゆえにサーキットでの試乗会なのだろうか? それは、スバルがこの地を“リベンジ試乗会”の場所に選んだからだ。
「走りの質感」、「ドライビングプレジャーの高さ」で定評のあるインプレッサ。しかし、開発陣のココロには、「絶対的な速さで、ライバルの三菱『ランサー・エボリューション』に勝てなかったこと」が、トラウマのようにのしかかっていたといわれる。1995年から3年連続でメイクスタイトルを獲得したWRC(世界ラリー選手権)の舞台でも、ここ数年はプジョーの後塵を拝することが多い。というワケで、そんなこんなに対するリベンジを日本屈指のサーキットであるFISCOで果たそう、という目論見なのである。
すでに頂上付近が雪化粧を始めた富士山を間近に、冷たい空気が心地良い秋晴れのピットに最新のインプレッサが並ぶ。モデルは「WRX STi」が3台と、競技車両のベースになることを考慮して軽量化などを施した「WRX spec C 17インチ仕様」が3台の、計6台だ。
心臓部は、トルクがついに40kgmの大台を突破。40.2kgm/4400rpm(!)の最大トルクを発する、最新のツインスクロールターボ付き2リッターフラット4を搭載する。ただし、STiとSTi spec Cでターボチャージャーの仕様が微妙に異なり、スペックCにのみボールベアリングターボが採用された。これを“ノーマル”のSTiに用いなかったのは、「ノイズの点で若干不利になるため」とのこと。ボールベアリング式の方がスロットルに対するレスポンスに優れるが、「最大過給圧などは共通で、ピークパワーも変わらない」と、エンジン担当エンジニアは説明する。
とんでもない速さ
前述のトルクアップに対応して強化された6段MTは、シフトリンケージなどが改良されたおかげか、以前にもまして好フィールの持ち主。ピットロードからターボパワーを炸裂させて加速すれば、シフトする手も忙しく、1速、2速、3速……と、まさに「アッという間」。4速にバトンタッチしたところで、速度計の針は130km/hをオーバー。相変わらずとんでもない速さだ。しかし、こうしたスピード領域になっても3600rpm付近からググッと盛り上がる、強力なトルク感に陰りは見られない。
ちなみに、8000rpmという高いレブリミットへの接近を、3連メーター中央のタコメーター上部にある赤ライトとブザーで警告する「REVインジケーター」は、なぜかノーマルSTiにしか備わらない。これは単なるアクセサリーに留まらず、タコメーターに目を落とすのが難しいシビアな運転条件下で、とても有効な“実用品”。スポーツ走行の機会がより多いであろう、スペックCにこそ欲しいアイテムだと思うのだが……。
シートとブレーキに不満
マイナーチェンジを機に、大きく変化したのがハンドリング特性だ。電制クラッチをもつプラネタリー式センターデフのリファインによって、前後のトルク配分を従来の45:55から35:65に変更。さらに、シャシーセッティングが見直されたことにより、今まではターンイン後にアンダーステアが顔を出しがちだったが、新型は「アクセルを踏むとアンダーステアが消える」方向へとリセッティングされたのだ。
サーキットを攻め込むと、その効果はてきめんに感じられた。ターンイン時に荷重を前へ移動するのに失敗してアンダーステアさえ出さなければ、積極的にアクセルペダルを踏むことで、わずかにテールを張り出した理想的なファイティングポーズを保ちつつ、コーナー出口に向かって力強く立ち上がることができるようになったのである。ちなみにこのあたりの動きの軽やかさは、ノーマルSTiより車重が90kgも軽いスペックCに軍配が上がる。よりダイレクト感の強い走りを味わうことができた。
エンジン、足まわりともに素晴らしい進化を遂げたが、シートとブレーキに不満を感じた。シートは立派なバケット型に見えるものの、ぼくの身体にはかなり大き過ぎ、「大きなバケツの中でコロコロと転がるような印象」だったのがその理由。ブレーキはブレンボ製4ポッドを備えるが、一発目の効きは強力であるものの、連続走行では比較的早期にペダルタッチが変化し、“エンジンの速さにブレーキの持久力が追い付いていない”ような物足りなさを感じた。
とはいえ、“わずか”300万円ほどでこれほどの運動&動力性能が手に入るのだ。長らく自動車に関わってきたぼくから見れば、まさに驚異である。久々に、「日本人に生まれて良かった」と実感できる(?)テストデイであった。
(文=河村康彦/写真=高橋信宏/2002年11月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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