ポルシェ911カレラカブリオレ(RR/7AT)【試乗記】
硬派なマニアも振り返る 2012.09.13 試乗記 ポルシェ911カレラカブリオレ(RR/7AT)……1571万5000円
新型「ポルシェ911」がバリエーションを拡大。新たにリリースされた「カブリオレ」の走りを、3.4リッターエンジン搭載のベースグレードで試した。
新型のカブリオレはクール
いきなりで恐縮ですが、実はまだポルシェを諦めていないのである。こんなことを言うと、すかさずもうひとりの自分が「そんな稼ぎはどこにある?」と突っ込んでくる。
確かに、新車で買うには宝くじやtotoに頼る必要がある。けれども、さらにもうひとりの自分が、「リサーチしましたところ、認定中古車は超ざっくり言って7〜8年で新車時の半額以下になるであります」と耳元でささやく。
ほぼ間違いなく人生最初で最後のポルシェになるはずなので、狙うは「911」だ。「ボクスター」のほうが軽快だとか、「ケイマン」のほうがシャープだとか、そういう理屈の問題じゃない。早瀬左近(『サーキットの狼』ですね)の911が刷り込まれているのだ。
というわけで、「素のクーペでMT(マニュアルトランスミッション)」という条件での検索を地道に続けている。PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)のほうが速くて燃費がいいとかタマ数が多いとか、これまた理屈の問題じゃない。
こうした強い信念と弱い財政基盤をもってポルシェ911、しかもクーペのMTの相場動向をうかがっているわけですが、目の前に現れた新しい「ポルシェ911カレラカブリオレ」(7段PDK仕様)を見て、おおっと思う。
気温30度を超えていたから幌(ほろ)を閉じて登場したのだけれど、新しいカブリオレにはこの状態でもカタマリ感があるのだ。以前のカブリオレにあったような、「私、汗臭いクーペとは違いますので」というエレガントさはない。
資料によれば、新型カブリオレのルーフラインはクーペと寸分たがわず同じなのだという。早瀬左近のクールな男らしさに憧れた身としては、新型のたたずまいが好ましい。「最新のポルシェは最良のポルシェ」というのは、デザインにもあてはまる。もしかすると、カブリオレもアリなのかと、強い信念が揺らぐ。でも、カブリオレは高い。弱い財政基盤がさらに大きく揺らぐ。
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高回転域で魅力を増すエンジン
3.4リッターの水平対向6気筒エンジンは、先代カブリオレから60kgの軽量化を果たしたとはいえ1470kgあるボディーを、発進加速でぐいと押し出す。
低回転域でも力強さを感じさせるものの、「このエンジンじゃなきゃダメ!」と思わせる魅力を発揮するのは5500〜6000rpmから上だ。なぜこのエンジンじゃなきゃダメだと思わせるかというと、ある程度の重みがあるものが回転しているという重厚感と突き抜けるような軽快感の両立は、他には得難(がた)いからだ。
みっちり中身の詰まったものが正確に動いているこの感覚は、ポルシェならではのフィーリング。特に6000rpmを超えてからの「コーン!」というソリッド感は、腹に響く。
試乗車にはオプションのPASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)が装着されていた。センターコンソールのスイッチでモードを切り替えてあれこれ試した結果、「60〜70km/h程度までの一般道ならシャシー標準」「110km/h以上のスピードならシャシースポーツ」という、ごく当たり前の結論にたどり着く。
まずシャシー標準では、タウンスピードでもしなやかにサスペンションが伸縮して路面からのショックをやわらげてくれる。
ただし、もう少し高い速度域のコーナリングでは、ボディーの動きが大きくなりすぎる。そこでシャシースポーツにセットすると、ピリッと抑制の利いた乗り味になる。
いずれのモードでも乗り心地に野蛮なところは一切ない。
試乗車にはスポーツクロノパッケージのオプションも装着されていたので、スポーツプラスモードも選択できる。するとPASMはダンピングを固め、7段PDKのシフトプログラムはレーシーになる。
確かにアクセル操作に対してエンジンがかみつくような反応になるけれど、一方でシフトショックが大きくなったり、微低速だとアクセルの微妙な踏み加減によってぎくしゃくしたりすることもあるから、TPOをわきまえて。
“クーペ命”の信念が揺らぐ
カメラマン氏が「じゃ、撮影するんで屋根を降ろして」と声をかける。カブリオレだということをすっかり忘れていたけれど、それだけ幌がしっかりできているということでもある。
クーペの屋根のようにしっかりした幌は、センターコンソールのスイッチひとつで13秒で開閉する。
屋根を開けて、撮影用にワインディングロードを行ったり来たりしながら、これはヤバイと思った。“クーペ命”だった信念が揺らぐ……。
屋根を開け放っていると、右足のアクセルペダルの踏み加減によって変化するエンジンの表情が、ダイレクトに鼓膜に伝わってくるのだ。アクセルペダルを踏み込めば高まり、アクセルを戻せば鎮まる、というのをいつまでも続けたくなる。福耳アワーだ。
従来のカブリオレでも同じ経験をしたはずなのに、タイプ991でこんなにグッときたのは、新しい3.4リッターエンジンの性格によるところが大きい。
従来型カレラの3.6リッターエンジンが6500rpmで最高出力345psを発生していたのに対して、新しいエンジンは7400rpmで350psを生み、しかも7800rpmまで回る。パワーが出ているのはもちろん、高回転域での音やフィーリングで楽しませるエンターテインメント性能がはっきりと向上しているのだ。
というわけで、「タイプ991以降はカブリオレもアリ」と日記に書こうと思ったけれど、日本仕様のカブリオレは7段PDKのみの設定でMTがない。これはキビシイ……。ま、どちらにせよまだまだ先の話、早くても10年後なので、じっくり考えたい。カネはないけど時間はある。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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