フォード・モンデオセダン/モンデオワゴン (4AT)【試乗記】
『ブランドの上場間近……?』 2001.04.07 試乗記 フォード・モンデオセダン/モンデオワゴン(4AT) 「イチキュッパ!」の価格で驚かせたのはいつのこと? いまや欧州フォードのフラッグシップとして、2代目モンデオが、ニュー2リッターユニットをひっさげ再上陸。すっかり立派になったセダンとワゴンのステアリングホイールを、webCG記者が握った。熟成されたボディデザイン
デフレーションに陥ったか否かが取りざたされる平成日本とはまるで関係なく、ますますインフレが加速する自動車業界であるなぁ、と思ったフォード・モンデオの試乗会である。2001年4月6日、山梨県は山中湖周辺で、ブルーオーバルのニューモデルに乗った。
1994年6月9日に初代が日本上陸を果たした際、「(ガイシャなのに)イチキュッパ!」の価格で極東の人々を驚かせたのも、99年のリスタイリングを機に、女流写真家を起用して「オシャレ路線」に走ったのも、今は昔。2000年にデビューした新型モンデオは、スコルピオにかわる欧州フォードのフラッグシップとして、まことに立派になった。試乗会場にズラリと並んだ新型を見るに、品格、立ち振る舞いのほどはともかく、明らかにガタイが、……失礼、車体が大きくなった。
セダンの場合、全長×全幅×全高=4730×1810×1420mm。先代より170mm長く、60mm幅広く、一方ハイトは15mm低くなった。やはり車格インフレ(?)を起こしてグッと上等になったフォルクスワーゲン・パサートより、さらに半まわりほど大きい。
拡大されたボディは、曲面をシャープなラインでつなぐ「ニューエッヂデザイン」で引き締められる。まだ「ナマ」な印象があったプーマやクーガーと較べ、ターゲットユーザーの年齢層が高いためもあって、モンデオのそれは熟成された感がある。エッヂが丸くなった、とでもいいましょうか。
わが国に導入されるのは、新型2リッター直4「デュラテックHE」ユニットと4段ATを組み合わせたセダンとワゴン。いずれもノーマルグレードのほか、本革とウッドのインテリアが奢られる上級版「GHIA」が用意される。
価格は、200万円台後半から300万円前後になる予定だ。
デュラテックのよさ
まず乗ったのは、セダンのノーマルグレード。シルバーのセンターコンソールがスポーティ。
55mmストレッチされて2755mmになったホイールベースを活かして、室内は広い。ゲルマン系の体格に合わせたのか、座面がやたらと長いのが足の短いリポーターにはカチンときたが、個人的な感情はさておき、樹脂類のシボまでデザインされたインテリアはたしかにクールだ。品質感も高い。また、見た目だけでなく、「従来より15mm高くなった座面ゆえ、高齢者や妊娠後期の女性でも、乗り降りが楽」なのだそうだ。
新開発の「デュラテックHE」オールアルミユニットは、先代より15psと1.3kgm大きい、145ps/6000rpmの最高出力と、19.4kgm/4500rpmの最大トルクを発生する。静かで滑らかだ。車外で撮影していた難波カメラマンは、助手席に戻ると開口一番、「ファンの音がうるさいクルマですねぇ」と驚いてみせたが、クルマから出ないドライバーには関係のないことである。
ブロックの高剛性化、サイレントチェーンの採用、マウント方法の工夫ほか、ボンネットを開けてもさっぱりエンジン本体が見えない大きなエンジンカバー、ボンネット裏に設けられたレゾネーターが、ノイズのキャビンへの侵入を効果的に防いでいるのだろう。
惜しむらくは、ギアが高めに切られた4段ATで、急な登り坂では、セカンドに入れてもクルマの走りはニブい。
内なる敵
短いドライブの後、富士スピードウェイで、上級グレード「GHIA」のセダンで簡単なパイロンスラロームを行った。革シートと暗いウッド調パネルがラグジュアリー。電動シートがありがたい。カッチリしたブレーキフィール、ロールの少ないサスペンションを確認して、同じく「GHIA」のワゴンで帰路につく。
モンデオワゴンの荷室の広さにはビックリする。セダンとまったく別構造の、ダンパー、スプリングを別体にして床下に収める「ショート&ロングアーム式」サスペンションを採る。サスペンションタワーが上方に伸びないので、荷室床面幅を広くとれるのが特徴だ。容量540リッター。夜逃げは、モンデオワゴンに限る。
「リアサス、意外に硬い」とメモを取りながら、実利があるワゴンはともかく、セダンはどんなヒトが買うのだろう、と考える。フォードのプレス担当によると「30代の“自分”をもち、家族のことも考える都市生活者」が仮想ユーザーだそうだが、誰だそれ?
モンデオセダンのセグメントには、VWパサート、オペル・ベクトラなどライバルが多い。そのうえ、不況下でもあるところにはあるのがお金だから、プラットフォームを共有するジャガーXが、内にして最大の敵になる可能性がある。デフレニッポン。ブランドの一部上場はなかなか楽じゃない。
(webCGアオキ/写真=難波ケンジ/2001年4月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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