アウディA6アバント 3.0TFSI クワトロ(4WD/7AT)【試乗記】
隙のないマルチプレーヤー 2012.05.08 試乗記 アウディA6アバント 3.0TFSI クワトロ(4WD/7AT)……1047万5000円
アウディのアッパーミディアムクラス「A6」にワゴンモデル「A6アバント」が追加された。新型ワゴンはどう進化したのか? 3リッターの上級モデルでその走りを試した。
オーナー社長のクルマ選び
クルマ好き、運転好きの中小企業オーナーにとって、たぶん一番気になるのはアッパーミディアムクラスのクルマではないか。ラグジュアリークラスじゃ取引先に行くのははばかられるし、自らステアリングを握るなら、むしろアッパーミディアムクラスのほうが“サマ”になる。ボディーが無駄にデカくないから、運転もしやすいし。
さらにそれがステーションワゴンなら、仕事の荷物も、プライベートを楽しむ道具もラクラク積み込める。しかも、セダンに乗るよりアクティブで若々しく見えるのもいいところだ。
そうなると、日本車には適当な選択肢は見あたらず、行き着く先は「メルセデス・ベンツEクラス」のステーションワゴンか「BMW 5シリーズ」のツーリング、あるいは「アウディA6」のアバントということになる。
ひと昔前はEクラスと5シリーズに水をあけられていたA6だが、近頃はヨーロッパのみならずここ日本でもライバルに迫る勢いを示している。果たして新型A6アバントはアウディ人気に拍車をかけることになるのか? A6アバントの上級グレードで確かめてみることにした。
リラックスできる移動時間
近ごろアウディが盛んにアピールしている軽量化技術が「Audi ultra(アウディ ウルトラ)」。このA6アバントの誕生にも深く関わっているのは言うまでもない。A6アバントでは、部分的にアルミを使うことで旧型よりも約20kgのダイエットに成功。同じエンジンを積むセダンに対して、重量増を40kgに抑えているのも見逃せない。
そんなA6アバントのなかから今回試乗に引っ張り出したのは、スーパーチャージャー付き3リッターV6直噴ガソリンエンジンを積む「3.0TFSI クワトロ」。エンジンの“ダウンサイジング”をいち早く進めてきたアウディは、この3.0TFSIエンジンをかつての4.2リッターV8に代わるモデルと位置づけている。組み合わされるトランスミッションは、デュアルクラッチの7段Sトロニック。車名からも分かるように、駆動方式はフルタイム4WD=クワトロである。
デザインやパッケージングに関しては、「アウディA6アバント 2.8FSI クワトロ」の試乗記をご覧いただくとして、早速その走りをチェックしてみる。3.0TFSIと7段Sトロニックの組み合わせはすでにA6セダンで体験済み。セダンよりも重くなったとはいえ、低回転から強烈なトルクを発生する3.0TFSIのおかげで、電動パノラマサンルーフ付きで1910kgのボディーを軽々と発進させる実力を備える。旧型ではやや唐突に走りだす印象があったが、新型では洗練されたマナーを手に入れている。
“V8並みの性能”をうたう3.0TFSIだけに、アイドリングを少し上回りさえすれば、どんな回転数でも力強い加速が可能。アクセルペダルを少し踏み増してやるだけで、すっとスピードを上げてくれるのは街中では特に助かる。もちろんアクセルペダルを深く踏み込めば圧倒的な加速が楽しめるのだが、ジェントルなドライビングスタイルを心がければ、ストレスだらけの都心の移動すらリラックスできる時間に変えてくれる。これこそアッパーミディアムの、なにものにも代えがたい価値だろう。
|
快適さもスポーティーさも
標準の255/40R19タイヤを履く試乗車は、路面からザラッとした感触を多少伝えてくるものの、乗り心地は穏やかで重厚感がある。うれしいのは、サスペンションが適切な硬さを示しつつ、低速から車体をフラットに保つことだ。直進性も抜群で、これなら高速の長距離ドライブも疲れ知らずだ。
だからといって、安定一辺倒ではないのが新型A6アバントの見どころである。ステアリング操作に対してすっと向きを変える軽快さは、ボディーの大きさを忘れさせてくれるほど。しかも、A6の場合、“フルタイム4WDとしては”のただし書きが要らないばかりか、FRのEクラスや、スポーティーなイメージが強い5シリーズに比べても明らかに機敏な動きを見せるのだ。これには、フロントオーバーハングを詰めたデザインや、リアにより多くのトルクを配分するクワトロなどが効いているに違いない。
|
ライバルとはモデルチェンジのタイミングがずれていて、現時点では最新のモデルだから……という有利さもあるが、イメージとは裏腹に、快適さもスポーティーさもいまやライバルをリードしているA6アバント。あとはデザインとブランドが気に入れば、社長車候補として不足はない。“零細編集プロダクション”の社長(私のことだ)にはなかなか手が届かないが、もし余裕があったら社有車としていま選びたいのは、文句なくこのA6アバントである。
(文=生方聡/写真=郡大二郎)
|

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。





























