第25回:70年代――クルマと男が輝いていた時代のスパイ映画 − 『裏切りのサーカス』
2012.04.10 読んでますカー、観てますカー第25回:70年代――クルマと男が輝いていた時代のスパイ映画『裏切りのサーカス』
スパイが乗る優雅なクルマ
スパイにふさわしいのは、どんなクルマだろうか。どうやら、それは「シトロエンDS」であるらしい。権謀術数を駆使し、相手の懐に入り込んで情報を引き出す。裏切りと猜疑(さいぎ)が渦巻く中で、敵と仲間を見極めなくてはならない。複雑で精妙な駆け引きを生きる男は、ただばかっ速いだけの単純なクルマでは飽き足りない。優雅さと重厚さを兼ね備えたクルマこそが似つかわしいのだ。
『裏切りのサーカス』は、そんな時代のスパイの物語だ。1970年代前半、英国諜報部(ちょうほうぶ)を舞台に繰り広げられるソ連との熾烈(しれつ)な情報戦を描いている。ゲイリー・オールドマン演ずる主人公のスマイリーが乗るのが、DSである。黄土色に近いクリーム色で、もちろん右ハンドルだ。
彼はすでにスパイを引退している。しかし、MI6内部にソ連に通ずる二重スパイがいることが判明し、調査を依頼されるのだ。時は東西冷戦のまっただ中である。スパイにとっては黄金時代だ。諜報活動には、国家の存亡がかかっている。わかりやすい敵がいる。
共産圏が崩壊して久しい今、敵を見つけるのはタイヘンだ。『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』では、ワルモノは頭のおかしいニヒリストにまでスケールダウンせざるを得なくなっていた。

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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