第143回:EVこれからどうなるの? 沖縄に見る、電気自動車「未来予想図」
2012.04.06 エディターから一言第143回:EVこれからどうなるの?沖縄に見る、電気自動車「未来予想図」
「日産リーフ」などの登場で注目を集める電気自動車(EV)は、この先どんな展開を見せるのだろうか? 肝心のインフラは?
その流れを先取りしているという沖縄で、『webCG』のコンドーと関がEV事情をチェックしてみた。
沖縄めぐりはEVで?
コンドー(以下「コ」):さすがに沖縄、暖かい! 本州はまだ雪降ってるとこもあるのに、Tシャツ1枚で大丈夫なん違う?
関(以下「せ」):海水浴は無理だけれど、見どころはいっぱいですよ! てびちにじゅーしぃ、沖縄そば。A&Wにも寄りたいし、あとは――
コ:全部“食べどころ”やん。ま、どこ行くにしても、沖縄着いたら、まずはレンタカー。クルマどれにしよっか?
せ:今日はコレに決まり! 電気自動車の「日産リーフ」で出掛けましょう。
コ:そこらへん走ってる「わ」ナンバーは、コンパクトカーばっかりやん。「ホンダ・フィット」とか「マツダ・デミオ」とか。EVは「操作に慣れるのが面倒や」って、レンタカーとしてはあんまり人気ないって聞くけどな……。
せ:むしろ、特別な感じが旅行なんかにはいいじゃないですか。それに、南の島とエコカーって、イメージ合ってるし。室内広いから、お土産もいっぱい積める。
コ:そない言うてもバッテリーの残量がなぁ……。急速充電器の場所ばっかり気になって、観光どころやなくなってまうやろ!
せ:と思いきや、沖縄はいつの間にか、EVが使いやすい地域になってるらしいんですよ。2012年2月現在、沖縄県内に登録されているレンタカーの「リーフ」は、220台。一般ユーザーの登録分まで含めると、全部で350台なんだとか。
対する急速充電ポイントは、一般開放されてるものと登録会員向けを合わせて、県内に24カ所あるから、電池切れの心配は要らないってわけです。
コ:日本全国で見ると、いまリーフの販売台数は1万1000台強。急速充電ポイントは730カ所くらいらしいから、だいたい「14〜15台に1カ所」。ということは……、他県も沖縄も変わらへんやん。
せ:沖縄には「南北100kmほどの“島”だから、一日の移動範囲がある程度限られる」という特異性があるんです。出発時は、たいてい満充電なわけですし。
コ:“継ぎ足し”の頻度は少ないし、あったとしてもたかが知れてるいうわけか。
せ:沖縄の充電ポイントは適度にバラけているし、車両のほうにもその場所を検索する機能があるから、それほど心配しなくても。
コ:いままで首都圏で乗った経験やと、電池残量がず〜っと気になって仕方なかったけどなぁ。せやけどそこまで言うんなら、だまされた思て、行ってみるか?
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いまだ新鮮
コ:鳴り物入りでデビューして、早いもんで1年半。それでも、このデザインはまだまだ未来感あるなぁ。他にはない。
せ:かといって、飛躍し過ぎてないのもリーフのいいところ。モーターをわざわざエンジンっぽい形にしているのだって、保守的なユーザーの“食わず嫌い”をなくすためだと聞きます。
コ:この加速感は、誰が乗っても満足するやろ。めちゃくちゃスムーズ。それに静か。振動もない。こういう快適さをガソリン車で実現させよういうのは、ナンセンスに思えてくるな。
せ:運転中、「キーン!」って機械音がつきまとうのが、ちょっと気になりますけど……。
コ:あとは、ブレーキのフィーリングが、好き嫌いの分かれるとこやろね。何かが間に挟まってるような、妙な感覚があるねん。
せ:高級セダンの「フーガハイブリッド」もそうですけれど、回生ブレーキの感触については、量産にこぎつけるまでに相当試行錯誤をされたそうですよ。
コ:一転、インテリアは極めて常識的やな。パッと見、変わっているところといえば、上下2段のデジタルメーターくらいかな。
せ:センターコンソールの情報画面は、特別大きいわけじゃない。今は、iPadなどのタブレット型PCを車内で使うひとも多いし。通信機能が多彩なリーフなら、10インチくらいあってもいいですね。
コ:肝心の機能は特別なんやろ? 何ができるんやったっけ?
せ:充電やエアコンのタイマー設定。それから、充電ポイントの検索。あとは、走行可能なエリアを地図上で確認したり……
コ:それや。走行可能距離、もう70kmをきってしもたで!
せ:首都圏ならにわかに緊張する場面ですけど、沖縄の充電環境だと、それほど不安になりませんよ。逆にいうと、どこでもそれくらい安心できるインフラが準備できないと、EVを社会に根付かせるのは難しいでしょうね。
コ:本州でも、急速充電器がもっともっと増えていったら……って、一体どこまで増えるんやろか?
せ:日産では、2015年までに5000基を販売する計画だそうです。他社のものまで含めると、国内の急速充電器は3年後、7000基程度になる見通し。いまの10倍に近づきますね。
コ:すると今度はEVの普及も進んできて、充電ポイントに行列ができるん違うかな?
せ:EVの実際の稼働率など、総合的な試算の結果、5000〜7000基あれば、そうした“いたちごっこ”は避けられるという判断だそうですよ。
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カンタンがイチバン!
コ:急速充電器の価格も当初の半値くらいまで下がったみたいやし、けっこう現実味のある話やなぁ。
せ:設置形態も多様ですからね。ガソリン車は専門のガソリンスタンドしか頼れないけれど、EVだったら家庭はもちろん、コンビニやスーパー、サービスエリアで“止めたついで”に“少し継ぎ足す”という方法もイケるわけで。
コ:それで社会全体としては、無理なく無駄なく回していけるというわけやな。ちょうど、そこのコンビニでも急速充電できるらしい。ためしに給電してみよか。
せ:前向きで止めて、給電口を開ける……と。雨よけの大きなひさしが付いてたり、ずいぶん配慮が行き届いてますね。
コ:ただ、充電ソケット挿すまでの機械の操作とか、手続きが面倒くさいなぁ。充電そのものにも、えらい時間かかるし。それにこれ、充電料金を精算するのに、店内入って別の端末使わんとあかんらしい。めちゃめちゃ面倒や。
せ:聞けば、サービス開始当初、お客さまの入店を促したいというお店側の意向もあって、こういう仕組みになったらしいですけれど……。
コ:ほかに時間つぶす場所もないし、たいていのユーザーは、充電の待ち時間に自発的に入店すると思うけどな?
せ:ええ。そういう傾向が明らかになった今では、すべての手続きは店外の機械に1本化されていく流れだそうですよ。
コ:こういうインフラはとことん分かりやすく、使いやすくないとなぁ。いろんな年齢のひとが簡単に使われへんかったらあかんやろ。福祉車両もあるリーフなんやから、なおさらや。
せ:設置数だけじゃなしに、こうしたプロセスをどこまで簡素化できるかも、EV普及のカギになるでしょうね。リーフには、スマートフォンを使ったサービスなど、利便性の高い機能が盛りだくさん用意されてますが、使う側に「面倒くさい」と思われたら、元も子もありません。
コ:そういう気分的な問題、すごい大事やで。逆に上手にやったら、敬遠されてしまってるリーフのレンタカーも、引っ張りダコになると思う。だってクルマとしてはようできてるし、面白いもん。
せ:EVのレンタカーが継続的に支持されるようになれば、退役した中古リーフが沖縄の一般家庭に出回って島内のEV普及率がどんどん高まる、ということも期待されてるんですよ。
コ:そんなことまで考えてるんか。リゾートにEV、相性としてはバッチリやと思うし、普及のための環境も整ってきてる。EVの未来はどうなるか? しばらく沖縄から目が離されへんな。
(文=webCG近藤俊&関顕也/写真=webCG)

近藤 俊

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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