フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/6AT)
二重の進化 2013.05.26 試乗記 基本骨格に「MQB」を採用した新型「フォルクスワーゲン・ゴルフ」は、実用車作りを一から覆す存在。ならば、それをベースに作られる7代目「ゴルフGTI」は、ホットハッチを再定義するモデルといえるかもしれない。「土台」と「上屋」はどう進化した? ドイツ・ミュンヘンからの第一報。「ゴルフ」あっての「GTI」
フルモデルチェンジされて7代目となった「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に早くも「GTI」が追加された。
ゴルフGTIは広範なバリエーションモデルが存在するゴルフシリーズの頂点に立つスポーツモデルであり、もはやそれ自体でひとつのアイコンと化しているほどだ。
1976年に登場した初代GTIは画期的だった。一般的なコンパクトカーと純然たるスポーツカーとの間に、まだ深く大きな隔たりがあった時代に、ゴルフに手を加えることでスポーティーなゴルフを新たに生み出してしまったわけだから。
「ミニ・クーパー」のように、そうした高性能版はGTI以前にもなかったわけではないが、GTIがGTIであるゆえんは本体のゴルフの基本性能や快適性などを何ら損なうことなく高性能とスポーツ性を実現しているところにあった。当たり前のように聞こえるかもしれないが、ゴルフあってのゴルフGTIなのである。
そのための方法としてフォルクスワーゲンが採ったのは、ゴルフよりもひと足先に先進的なデバイスをGTIに装備したことだった。
初代が登場した当時まだ希少で高級車や高性能車にしか用いられることのなかったインジェクションの頭文字を車名に加えたことに、それは表れている。
その後37年間、ゴルフが進化するのに歩調を合わせながら、ゴルフGTIも進化してきた。その7代目と対面したのはミュンヘン空港。すでにヨーロッパの路上をたくさん走っている7代目ゴルフのシルエットを持ちながら、近づいていくとGTIならではのディテールが目に入ってくる。
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最高出力は220psへ
初代GTIでは、ゴルフの長方形のフロントグリルを細い赤のラインがぐるりと取り囲み、その中に“GTI”というエンブレムが配されていた。歴代GTIはそのモチーフを展開してきたが、7代目GTIはといえばフロントグリルの下を左右に走る赤いラインがそのままヘッドライトユニットの下まで伸びているのが新しい。同時に、ヘッドライトユニット下部の3本のフィンもGTIだけのものだ。
ボディー寸法は6代目GTIと比較して大きく低くなった。ホイールベースが53mm、全長が55mm伸び、全幅は13mm広くなった。車高は27mmも低くなり、フロントオーバーハングは反対に12mm短くなった。2ドアモデルで見比べるとわかりやすいが、グリーンハウスが薄く見え、キャビン全体の視覚的な重心が後ろにあるように感じる。2ドアも4ドアもCピラーが太く力強く見えるようになったのも7代目GTIの外観上の特徴だ。
先を急ごう。タータンチェックのシート表皮やゴルフボールを模したシフトレバーなども予定調和的に装備されている。あいにくと日本仕様はDSGのみの予定らしい。装着されていたヨーロッパ仕様のカーナビが見やすく使いやすい。5.8インチの大型画面で、なんと近接センサーを備えたタッチスクリーン式で、スマートフォンのように画面を指でワイプするとズームする。
目的地をオーストリアのヴェルター湖にセットし、エンジンを掛けて出発だ。エンジンは2リッターガソリン直噴ターボ。シリンダーヘッドの冷却方式が改まり、燃料噴射方式がこれまでの直噴に加えてマルチポイント噴射も備えるデュアルインジェクションシステムが採用された。最高出力が220ps/4500-6200rpm、最大トルクが35.7kgm/1500-4400rpm。それぞれ、6代目GTIから10psと7.1kgmのパワー&トルクアップである。
フットワークを磨き込む
サスペンションとシャシーに関する改変点のうち、主なものとしてはプログレッシブレートのステアリングと「XDS+(プラス)」が挙げられる。
ステアリングは“累進的”なギア比と強力なモーターの採用によってロック・トゥ・ロックが2回転余りと少なくなり、中高速域ではダイレクトな操舵(そうだ)感を確保しながら、低速域でも忙しく回す必要を減らすことを狙っている。
一方、XDS+は6代目GTIで装着されたXDSの進化版である。XDSは電子制御式ディファレンシャルロックで、ESP(電子制御スタビリゼーションプログラム)に統合された機能となる。コーナリング中に内側タイヤのブレーキを瞬間的に掛けることによってアンダーステアを減らそうというものだ。XDS+に進化することによって、より正確性と敏しょう性を向上させた。
XDSについては鮮やかな印象を持っている。6代目GTIがデビューした時に南フランス・キャステレの山道を、それまでの基準を大きく上回る速度と加速をもってハイペースで操縦することができたのはXDSの効果にほかならなかった。アップダウンがキツく、さまざまな大きさの径を持つコーナーを6代目GTIで、ほぼニュートラルステアを維持しながら駆け抜けていくのは痛快極まりなかった。XDS+はそれをさらに洗練させたというのだから、期待が大きくなる。
そのほかにも、7代目ゴルフには多くのドライバー支援システムやコンビニエンスシステムが装備されており、ほとんどすべてがGTIにも装備されている。名前を列挙するだけでもいたずらに文字数を費やしてしまうだけなのでとても全部を書き切れない。
その中でも、アダプティブシャシーコントロールシステムのDCCも第2世代となったが、標準型ゴルフと同じようにノーマルとスポーツの走行モードが選べるのに加えて、特別にGTI用としてコンフォートモードが追加された。
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明確な進化の跡
さて、ミュンヘン空港からそのまま高速道路に乗り、走りだしての最初の驚きは静粛性の高さだった。130km/hの速度制限区間を過ぎ、無制限区間に入って200km/h前後で巡航しても助手席の同乗者と普通に会話ができるのである。風切り音とロードノイズが徹底的に抑え込まれている。試みに窓ガラスを下げてみると、モノすごい勢いで空気が流れていて、タイヤが路面にたたき付けられうなりを上げていた。
100km/h走行時のエンジン回転数は6速2200rpm。多少の上り勾配であっても、6速のまま力強く加速していく。6段MT版にはメーターパネルに推奨ギアが表示されるが、燃費を稼ぐために、すぐに「シフトアップせよ」と指示される。
それは“空手形”ではなく、何らかの理由で減速し、その後加速していくような場合でも、シフトダウンの指示は運転している自分の判断よりも少なかった。つまり、それほどフレキシビリティーに優れるエンジンなのだ。スポーツカーのように回して面白いエンジンでは決してないが、このフレキシビリティーの高さは日常的な使いやすさと燃費に大いに貢献することだろう。
また、DSG版ではエンジンのフレキシビリティーに加え、変速そのものが自動化されているおかげで、さらに完璧な変速マネジメントを行っていた。フォルクスワーゲンは7代目のGTIの、DSGそのものの進化点には言及しなかったが、あらためてその賢さに感心させられた。ノーマルモードでは燃費のためにスキあらば「ポポポンッ」とシフトアップし、変速もショックも小さいからこちらは気付かない。スポーツモードではエンジン回転を上まで引っ張り、多少のショックを許しながらも素早く変速する。アップもダウンもパドルを用いれば自由自在だ。
DCCも3つのモードをいろいろと試してみたが、そのマナーはどれも常識の範囲内で納得のいく設定だった。DCCをオプション注文しなかった場合のダンパーの設定は「ノーマルモードにごく近いもの」(乗用車開発部門シャシーチューニングマネジャーのマンフレッド・ウルリッヒ氏)だそうだから、予算と使い途(みち)で決めて構わないだろう。
肝心のXDS+の進化具合は、試乗ルートの関係上、確認できなかったのが残念だったが、その片りんを伺うことはできた。交通の流れをリードする動力性能を持ち、シャープなハンドリングとキビキビとした身のこなしはGTIの身上だ。それらが6代目からレベルアップしているのが明瞭に感じられた。
どこも突出した部分がなく、代わりにとてもバランスが取れたスポーツ万能で成績も良い優等生のようなクルマであることには7代目も変わりはない。
「GTIとは日常の中で使えるスポーティーなクルマです。エクストリームなスポーツカーではありません。パフォーマンスのために犠牲にしているものはありません」(技術開発部プロジェクトマネジメント責任者のアルベルト・メルツォ氏)
シャシーが一新された7代目ゴルフの実力があって、その優れた土台の上に最新デバイスを伴って構築されたのが7代目GTIとなる。6代目とは違って、ゴルフのフルモデルチェンジからあまり時間を経ないで登場した7代目GTIには「二重の進化」を強く感じた。
(文=金子浩久/写真=フォルクスワーゲン)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4268×1790×1442mm
ホイールベース:2631mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:220ps(162kW)/4500-6200rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1500-4400rpm
タイヤ:(前)225/45R17/(後)225/45R17
燃費:15.6km/リッター(6.4リッター/100km)(1999/100/EC 複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:なし
※欧州仕様
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

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