スバルXVハイブリッド プロトタイプ(4WD/CVT)
ハイブリッドでもやっぱり“スバル” 2013.05.28 試乗記 スバル初のハイブリッドモデルがいよいよデビュー秒読み段階に。プロトタイプの試乗を通して、スバルが思い描くハイブリッド戦略を確かめた。初物に見る2つの「なぜ?」
スバル初となるハイブリッド車「スバルXVハイブリッド」のプロトタイプの試乗会が開催された。試乗会会場である富士スピードウェイへ向かう道すがら、前日に予習した事前説明会の資料を思い出す。すると、頭の中には2つの「?」が浮かんだ。
(1)なぜ、初めてのハイブリッド車が「XV」なのか? 日本シリーズの第1戦にエース投手を先発させるように、最新テクノロジーはまず「レガシィ」に積むのがスバルの流儀ではなかったか。
(2)なぜ、わざわざ手間暇かけて自社開発したのか。ここでトヨタの力を借りるのが、提携する“うまみ”ではないか。例えば「トヨタ86」がスバルの水平対向エンジンを積んだように。
会場に到着して、XVハイブリッドの外観をチェック。ノーマル仕様との外観の違いは3つ。前後のコンビネーションランプにブルーが入り、左右のドアミラーの下とテールゲートに「HYBRID」のエンブレムが光る。ホイールのデザインは、少しおとなしいものになった。特に驚くべき点はない。
けれども、「外周路」で試乗をスタートして驚いた。「外周路」とは富士スピードウェイの敷地内を移動するための道で、あまり路面の状態がよくない部分もある。そこでの乗り心地が、ノーマル仕様より落ち着きがあって上品なのだ。
スバルXVハイブリッドは、ハイブリッドの制御システムやバッテリー、モーターなどの付属品が増えることで、ノーマル仕様より約120kg重くなっている。重量増に対応するために、スプリングやショックアブソーバーを見直したのはもちろん、リアにサブフレームを追加したりスタビライザーの径を太くしたりしている。
乗り心地だけでなく、静かになったことも大人っぽくなったと感じる理由だ。エンジンに専用のカバーを用意したり助手席グローブボックス下に遮音材を貼ったりするなど、きめ細やかなノイズ対策が施されているのだ。
ここで、「(1)なぜ、初めてのハイブリッド車がXVなのか?」の答えが見えてきた。
ハイブリッドは最上位のグレード
普通のセダンやSUVをハイブリッドにしても、後発なので話題にならない。そこでニッチなクロスオーバーのXVを最初のハイブリッド車にしたのではないか、とニラんでいた。
でもスバルによれば、「ハイブリッド車が最上位グレードになるという、新しいラインナップのあり方を提案したかった。けれども高出力のターボモデルが最上位グレードにあるモデルではそれができない。そこでXVに白羽(しらは)の矢が立った」とのことだ。
その理由付けはちょっと苦しいんじゃないの、と4割ほど思いながら、6割は納得した。静かな車内に快適な乗り心地、スバルXVハイブリッドは確かに一番上等なXVに仕上がっている。
外周路での試乗を終え、ショートサーキットでアクセルペダルとブレーキペダルを交互に踏んづけ、ステアリングを切ったり戻したりすると、快適性だけでなく運動性能も“一番上等なXV”になっていることがわかる。
ノーマルのXVは、150psを発生する2リッター水平対向4気筒ユニットを搭載する。ハイブリッド仕様ではこれに13.6psを生むモーターを追加する。ハイブリッドの作動状況を表すモニター画面を見ていると、エンジンとモーターは合唱したかと思うと、次の瞬間に独唱になり、また合唱に戻るということを繰り返す。
ショートサーキット内で最も深くアクセルペダルを踏み込む登りの右コーナーではエンジンとモーターが同時に歌い始めるが、その時の加速フィールは力強い。
停止時のアイドルストップからのエンジン始動、エンジンをモーターがアシストしての加速、減速時にエンジンを切り離して効率よくエネルギー回生、といったエンジンとモーターの連携プレーは滑らか。ブレーキのフィーリングも、外周路での穏やかな制動からショートサーキットでの急ブレーキまで、安定している。
ただし、資料には「S(スポーツ)モードとI(インテリジェント)モードを選べる『SI-DRIVE』をIモードにして低速で走るとEV走行する」とあるけれど、EVのモードにはほとんど入らなかった。相当意識してアクセルペダルをそろっと踏み込むとインパネに「EV」のランプがともるが、それも一瞬ですぐに消えてしまう。
エンジニアの方々に話をうかがうと異口同音に、ドライバビリティーを犠牲にすればEV走行の頻度や燃費も上がるけれど、あえてそれはしなかったと答えた。サーキットで走りながら、「(2)なぜ、わざわざ手間暇かけて自社開発したのか」の答えが見えてきた。
スバルの強みはそのままに
ショートサーキットの大小のコーナーをクリアしながらどうもステアリングのレスポンスがいいと思ったら、ステアリングのギア比がノーマルの16:1から14:1へとクイックに変更されていたのだ。
さまざまな変更を受けたサスペンションとの相乗効果で、気持ちよく曲がることができる。
冒頭に書いたように、このハイブリッドシステムはトヨタの「THS」とは無関係で、スバルの独自開発だ。日産やホンダに似たトランスミッションにモーターを組み込む1モーター式ではあるけれど、決定的に違うところがある。よそはトルクコンバーターの部分にモーターを入れる方式で、エンジン→モーター→ギアボックスという配置になる。対してXVハイブリッドは、エンジン→トルクコンバーター→ギアボックスに内蔵したモーターというレイアウトになる。
どうしてこうなるかというと、水平対向エンジンを縦置きする4WDという独自のメカニズムの強みを最大限に発揮するためだ。エンジンとギアボックスの間にモーターを入れると、パワーユニット全体の全長が長くなってしまう。長くなると重量配分がフロント先端部分に片寄るし、スバルのもうひとつのウリである高い衝突安全性能にも影響が出る。
つまり、重心が低くて左右対称の水平対向エンジンとシンメトリカルな4WDの組み合わせという黄金律を崩さないために、あえて独自のハイブリッドシステムを開発したのだ。バッテリーは「ホンダ・インサイト」と同じ旧三洋電機製だが、特殊な位置に配置するモーターは自社設計だという。
質の高い走りが堪能できる、いかにもスバルらしいハイブリッド車だというのが試乗後の感想だ。燃費は計測できなかったけれど、JC08モード燃費を見るとノーマルの15.8km/リッターに対してハイブリッドは20.0km/リッター。国産ハイブリッド車の燃費を見慣れた目には大したことないように映る。けれど、燃費に特化したハイブリッド車とスバルXVハイブリッドは性格を異にする。
モデルのラインナップの中で最高のパフォーマンスを発揮しながら燃費も悪くないという、例えばアウディやBMWのハイブリッドモデルのようなポジションなのだ。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
スバルXVハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4450×1780×1550mm
ホイールベース:2635mm
車重:1590kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:150ps(110kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:20.0kgm(196Nm)/4200rpm
モーター最高出力:13.6ps(10kW)
モーター最大トルク:6.6kgm(65Nm)
タイヤ:(前)225/55R17 97V/(後)225/55R17 97V(ヨコハマ・ブルーアースE70)
燃費:20.0km/リッター(JC08モード)
価格:--/テスト車=--
オプション装備:なし
※プロトタイプ
テスト車の年式:--年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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