ホンダ・アコード ハイブリッド プロトタイプ(FF)
ハイブリッドセダンの新基準 2013.06.20 試乗記 ホンダの次世代ハイブリッドシステムを搭載した新型「アコード ハイブリッド」が、満を持してデビュー。プロトタイプの試乗を通じて、その走りをリポートする。燃費は30.0km/リッター
ハイブリッド車(HV)というだけでは、もう誰も驚かない。これからのクルマ界では、「どんなHVか」の提案力が問われる。そこへ向けて、ホンダが勇ましく踏み出した。新型「アコード」がその第一歩。乗ってみると、優雅で豊かなトルクによる異次元感覚の加速、スラッと滑らかなコーナリング、上質感みなぎる内外装など、開発陣の意気込みが全身に突き刺さる。注目の燃費(JC08モード)は30.0km/リッター(CO2排出量は77g/km)と軽自動車並み。どんな方式だろうと、どこまでCO2排出を減らせるかの結果こそ次世代車のポイントだから、アッパーミドルセダン界の競争も、ここが新たな出発点になりそうだ。
それに加え、同時に発表された「アコード プラグインハイブリッド」は70.4km/リッター(国交省の定めるPHV専用係数による)。使い方さえうまければ実質的にレンジエクステンダーEVといえそうな水準に届いている。
EVといえば、アコード ハイブリッド自体、走行全体に占めるモーターの役割が大きく、電気で走っているという感覚が非常に濃い。エンジンとモーターが互いに補い合うというのがHVに対する一般的な認識なのに対し、あくまでモーターこそ主役、エンジンは縁の下の力持ちという組み合わせだ。これまで「インサイト」「シビック」「フィット」などのホンダHVが、意地悪く言えば電動アシスト付きガソリン車的でもあったのとは、まるで別世界だ。
主役はあくまでモーター
なぜそうなのか、長~い話を簡単にまとめると、エンジンと2基のモーターを組み合わせたHVシステム(SPORT HYBRID i-MMD)が主役。i-MMDはインテリジェント・マルチモード・ドライブの頭文字だ。
モーターの一つ(最高出力169ps/3857-8000rpm、最大トルク31.3kgm/0-3857rpm)は走行用で、ファイナルギアを介し駆動輪(前輪)と直結。吸気バルブを遅閉じするアトキンソンサイクルによる高膨張比&高効率の2リッター4気筒エンジン(最高出力143ps/6200rpm、最大トルク16.8kgm/3500~6000rpm)は、基本的には駆動に参加せず、もっぱら第2のモーターと直結して発電を担当する。つまり第2モーターは発電機なのだ。そのうえで、一定速度以上の巡航や強い加速など、メインモーターのトルクが不足しがちだったり、エンジンにとって好都合な作動環境だったりする状況では、エンジンと駆動系を直結するクラッチがつながる。ただし変速機がなく、総減速比を見ると普通のトップギア並みだから、およそ60km/h以下では出る幕がない。
こういう役割分担の考え方は、「三菱アウトランダー PHEV」にも通ずるものがある。その他、モーターの油冷方式だとかレアアースの使用量低減、電動VTC(連続可変バルブタイミング・コントロール機構)、電動ウオーターポンプなど、進化の項目は数えきれない。後席バックレストの裏に仕込まれるバッテリー(リチウムイオン)の電力量は1.3kWh。
大きくなっても走りは軽快
さて、大急ぎでインプレッション報告といこう。軽く踏むだけで、実質的に無音同然のままスウウウ~ッと強力に伸びるのは、完全にEV(電気自動車)感覚。さらに踏み続けると中速域からエンジンも駆動に加わり、定速走行に移ったり惰力で流したりするためにアクセルをゆるめると、エンジンが黙る。耳でわかる以外にはオン/オフなど体感できない。ふと気付いたら掛かっていて、知らないうちに止まってしまうような感じだ。そうやって走り続け、バッテリーの残量が2割ほどまで低下すると、今度は発電のためにエンジンが働きだすが、低回転なので、かすかにモ~ッと聞こえるだけ。がっちり強固なボディーに入念な遮音措置を施してあるので、セダンとして好ましい静粛性は折り紙付きだ。
ところで、この新型アコードのボディーはホイールベース2775mm、全長4915mm、全幅1850mmとかなり大きい。先代アコードより185mmも長く、もう少しで「インスパイア」(従来モデル)の4960mmに届く。北米では健闘してきたが、ミニバンや「フィット」の人気と比べると、ホンダのセダン系が苦戦気味だったのは事実。そこで両者を統合したのだろうが、結果として室内(特に後席)はゆったり広くなってくつろげる。一方、長年のアコード・ファンからは賛否両論やかましくなるに違いない。
それはともかく、広範囲にわたって超高張力鋼板を採用したほか、フロントサブフレームをFSW接合(素材どうしの摩擦熱で溶接)で総アルミ化するなど、涙ぐましい努力のおかげで、HV関係の機器を搭載しても1.6トン余りと軽量設計に成功したことが、軽快なハンドリングをもたらしたのはうれしい。スポーティーとうたいながらもカキカキ尖(とが)った鋭さではなく、どこでも一陣の風のように駆け抜けてしまう。素直に曲がるだけでなく、急にアクセルを放した瞬間の姿勢(軌跡)変化も最小限で、いつでも望む方向にクルマを持っていける。
特筆もののブレーキ制御
特筆したいのは、電動サーボブレーキと称するブレーキ・バイ・ワイヤ機構。ドライバーのペダル操作を電気信号に変換し、“現場”でのパッドの押し出し方を決めるものだ。もちろんエネルギー回生システムとも連動するのだが、結果として非常に自然なフィーリングを得られただけでなく、いざという瞬間の制動力が人知を超えるほど強烈なのだ。微細な調整も得意中の得意だから、ACC(ミリ波レーダーによるアダプティブ・クルーズコントロール)やCMBS(衝突被害防止&軽減システム)との組み合わせも文句なし。もちろんヒルスタートアシストも標準装備となる。
これらの走行感覚はプラグインでも変わらない。ただしバッテリー容量が増大され(6.7kWh)、充電器も搭載するため、もともと深くないトランクの奥行きが50cmそこそこになってしまうのが惜しい。最近ミニバンが好評だから、あらためて「アコードワゴン」が生まれるかどうかは疑問だが、もしワゴン化するなら、このあたりが障壁になるだろう。
そんな新型アコード ハイブリッドとアコード プラグインハイブリッド、報告しなければならない項目は山ほど残っているのだが、とても伝えきるスペースがない。何より残念なのは、ごく限られた状況での初試乗だったがために、最大の注目ポイントである実用燃費をチェックできなかったこと。そのあたりを焦点として、今後たびたびリポートを重ねなければならないだろう。
(文=熊倉重春/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
ホンダ・アコード ハイブリッド EX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4915×1850×1465mm
ホイールベース:2775mm
車重:1630kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:143ps(105kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:16.8kgm(165Nm)/3500-6000rpm
モーター最高出力:169ps(124kW)/3857-8000rpm
モーター最大トルク:31.3kgm(307Nm)/0-3857rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94V/(後)225/50R17 94V(ダンロップ・エナセーブ050)
燃費:30.0km/リッター(JC08モード)
価格:390万円/テスト車=--
オプション装備:--
※プロトタイプ
テスト車の年式:--年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

熊倉 重春
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。





























