ホンダ・アコード ハイブリッド EX(FF)
“ほぼ”電気自動車 2013.07.11 試乗記 ホンダがHV市場での捲土(けんど)重来を期して送り込んだ「アコード ハイブリッド」。自慢のハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」の走りの特徴とは。運転感覚はEVそのもの
車速が70km/hに達しない範囲で走らせるかぎり、「アコード ハイブリッド」はほぼ電気自動車(EV)であり、少なくとも、エンジンが直接、駆動の仕事をおこなうことはない。クルマを前進または後退させるにあたっては、もっぱら電気モーターの動力が使われる。「ほぼ」なのは、バッテリーに蓄えられた電気だけで走るわけではない状況、つまりエンジンで発電機を回し、発電機が発電した電気で駆動用モーターを回して走る状況もフツーにあるから。その際のアコード ハイブリッドはシリーズハイブリッドということになる。
ダッシュボード中央パネルのカドにある「POWER」のボタンを押してオンの状態にしても、フツーの状況ではエンジンは始動しない。ブレーキペダルを踏んだまま、セレクターレバーを「D」へ。でブレーキペダルから足を離すと、アコード ハイブリッドは発進する。アクセルペダルを踏み込むと、さらに速度が上がる。この状況では“EVドライブモード”。つまり、バッテリーに蓄えられた電気のみで駆動用モーターを回している。運転した感じは、アタリマエだがまんまEV。
“EVドライブモード”で走れる距離というか時間というかは、あまり長くない。駆動のために使える電気がバッテリー内にあるかぎりは極力“EVドライブモード”で、というふうにはアコード ハイブリッド、なっていない。速度や負荷(要求される駆動力)にも応じて、わりとあっさりエンジンが始動する。
回り始めたエンジンは、発電機を回す仕事をする。エンジンによって回された発電機が発電した電気で駆動用モーターを回して走る、“ハイブリッドドライブモード”。このモードでは、アクセルペダルの踏み込みに応じてエンジンの回転数が変わる。タコメーターはついていなかったけれど、少なくともエンジンの音の調子は。その音と速度や加速の関係ができるだけ「リニア」になるようにした、とは技術者の弁。なるほど。
状況に応じてこまめに充電
エンジンで発電機を回して発電した電気だけでは足りない場合は、それにくわえてバッテリーに蓄えられた電気をも駆動用モーターへ送り込む……こともある。また、バッテリーの満タン度が低くなった場合は、車両が停止していてもエンジンは回り続ける。もちろん、発電機を回して発電した電気をバッテリーに蓄えるために。エンジンで発電機を回して発電した電気を、駆動用モーターを回すだけではなくバッテリーへも振り分けて……という状況もあるはずだ。
リチウムイオンバッテリーの満タン度を教えてくれるメーターは合計8個のLED。点灯しているLEDの数が減っていって残り3個になった時点で、エンジンは車両停止中も回りつづけるようになった。
なお、8個のLEDがバッテリー容量=1.3kWhの0kWhから1.3kWhまでに対応しているわけではない。この種のクルマの常として、バッテリーに優しくあるために、上限付近のいくらかは常に空っぽのままだし、下限側のいくらかは常に電気がたまりっぱなし。普段の使用状況のなかで充放電のいったりきたりに使われるのは、総電力容量のうちのおそらく半分強。その範囲が、いわゆるSOC(ステイト・オブ・チャージ=充電状態の頭文字)のウィンドウ。
巡航状態からアクセルペダルを離すと、エンジンは停止する。回生ブレーキ。さらに、ブレーキペダルを踏み込む。さらに回生。バーグラフのバッテリー残量計の点灯状態の変化(この場合は点灯状態のLEDの数の増加)は速い。ちょっと長めの下り坂ではどんどん……といっても1つか2つだけれど、増える。
ブレーキペダルの踏み応えの「違和感」は、このテ(回生ブレーキと摩擦ブレーキの、いわゆる協調制御モノ)のなかではウスいほう。スッと立ち上げて制動Gを一定に……のところをキレイにやるにあたって、エンジン車と比べると少し余計に気をつかうかもしれない。あるいは、難しいかもしれない。
高速よりも市街地が得意
今回、試乗中に車速が70km/hを超えることはなかった。よって、エンジンが直接駆動の仕事をするモードは体験していない。ホンダによると、100km/hで巡航しているうちのおよそ3分の1の時間はEVモード、つまりバッテリーに蓄えられた電気のみで駆動用モーターを回して走るという。残りの3分の2の時間は、エンジンで直接車輪を駆動して走っている状態(さらに発電機も回してそこで作った電気をバッテリーへ、という状況も当然あるはず)。
直接車輪を回す仕事をしている際のエンジンは、油圧多板クラッチによって駆動輪と「直結」。ただしもちろん、クランクシャフトの回転数と前輪の回転数がイコールというわけではない。ちゃんと(?)減速されている。カタログによると、オートマのOD(オーバードライブ)のレシオに近い一段目の0.803と、さらに最終減速比に相当する二段目の3.421、それらとタイヤの直径から計算すると、100km/h巡航時のエンジン回転数はザッと2100rpmあたり。最低の70km/hだと、かける0.7で1500rpmあたり。
“エンジンドライブモード”で発電も同時におこなうと負荷がさらに上がって燃費率ベストのエリア、いわゆる燃費のメダマにグーッと近づいていく設定であることがわかる。同じ速度で、駆動用電気モーター(こちらも直結)の回転数はエンジンのほぼ3倍。110km/hまではEV走行が可能という。
で、気になる燃費。カタログ記載のモード燃費の数字(30.0km/リッター)ではなく、実燃費。今回はイロイロ試したり写真を撮ったりでマトモに試乗時の燃費を紹介できるような状況ではなかったけれど、車載燃費計の数字を写し取った19km/リッターというのがメモに残っている。
パワートレイン担当の技術者によると、実燃費は「市街地(……がどんな感じの市街地かはツッコまなかったけれど)でリッター24kmから25km」、EVモードになる上限付近の速度で巡航して「リッター22kmから23km」。市街地のほうがイイのは、「単純に走行抵抗が小さいから」。どちらの状況でも、エンジンの効率的には「同じようなもの」だそうで。
“電気モノ”ならではの驚きが欲しい
運転した感じ、ほぼ電気自動車状態のアコード ハイブリッドはフツーだった。いま日本で圧倒的にメジャーな存在と化している他のハイブリッド車と比べて、運転はしやすい。速度管理がクルマまかせのいいかげんなものになりにくい、という印象をもった。クルマ全体としても、ちょっとかもっと大きなフツーのセダン。
「燃費の奴隷」という言葉を私はよく使うのだけど、そのモノサシにあてはめると、燃費の奴隷度は低い。いま日本でメジャーなハイブリッド車と比べてそうであるだけでなく、ガソリンエンジン+CVTのエンジン車(ということは多くのフツーの日本車)と比べても低い。パワートレイン以外のところのデキも、日本車としては真ん中より上、だったと思う。少なくとも。
しかしながら、“ほぼ”電気自動車としてはアコード ハイブリッド、正直、驚けるレベルまではいかなかった。内燃機関が逆立ちしてもかなわない、電気モノならではのダイレクト感やレスポンスがありまくったか、といわれると……。既存のガソリンエンジン+CVTのクルマから乗りかえても違和感がないように、との配慮があったかどうかはきいていないけれど、あったとするとちょっと納得できるような。
「ダメ」というつもりはない。THS(トヨタハイブリッドシステム)対抗ということなら「いいんじゃないですか」という感じ。「スバルXVハイブリッド」と比べても、パワートレインの仕事ぶりの単純明解度は確実に上。あと、「三菱アウトランダー PHEV」と比べたら、ステアリングふくめシャシー的にはたぶんアコードの勝ち。
なお、私モリケータ、「日産リーフ」を運転したことはありません。公道での純EV体験は、「スマート・フォーツー エレクトリックドライブ」の市販前バージョンと「MINI-E」の2台。それと、「フォルクスワーゲン・ゴルフVI」ベースの試作車と「アウディA3」改のレンジエクステンダーと「三菱i-MiEV」をホンのチョロッと。
(文=森 慶太/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
ホンダ・アコード ハイブリッド EX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4915×1850×1465mm
ホイールベース:2775mm
車重:1630kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:143ps(105kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:16.8kgm(165Nm)/3500-6000rpm
モーター最高出力:169ps(124kW)/3857-8000rpm
モーター最大トルク:31.3kgm(307Nm)/0-3857rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94V/(後)225/50R17 94V(ダンロップ・エナセーブ050)
燃費:30.0km/リッター(JC08モード)
価格:390万円/テスト車=414万1500円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトオーキッド・パール>(4万2000円)/レザーパッケージ(19万9500円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

森 慶太
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