フォルクスワーゲン・ポロ ブルーGT(FF/7AT)
タフで、優しく 2013.09.10 試乗記 気筒休止システムとスポーツサスペンションを採用した「フォルクスワーゲン・ポロ」の新グレード「ブルーGT」。エコと走りの両立をうたう、その仕上がりは?見た目はGT、中身はブルー
エコのイメージカラーとしては緑が優勢だが、フォルクスワーゲンではブルーを採用している。「Think Blue.」をキーワードにしてさまざまなエコ活動を展開しているし、環境性能を追求した製品には「ブルーモーション」の名が与えられる。
ややこしいのだが、ブルーモーションというモデル名はドイツ本国で販売されている「TDI」すなわちディーゼルエンジン版で、日本で選べるのはガソリンエンジン車の「ブルーモーション テクノロジー」だ。「ゴルフ」のラインナップにはすべてこのバッジが付けられている。
「ポロ」にも4月から「TSIコンフォートライン ブルーモーション テクノロジー」が登場した。もともとあった1.2リッターターボエンジンを搭載したモデルにアイドリングストップとブレーキエネルギー回生システムを追加し、燃費向上を図ったのだ。ポロのラインナップは、このほかに「TSIハイライン」と「GTI」がある。今回加わった「ブルーGT」は、この中間に位置するモデルだ。ブルーとGT、つまりエコと走りを両立させていることをアピールしたネーミングである。
「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」かつて男の条件とされた言葉は、クルマにも当てはまるのだ。
見た目は、はっきりとGT寄りだ。青い色のGTエンブレムが付いているのはもちろん、空力を考慮したフロントバンパーやリアスポイラーを備え、車高もTSIハイラインより15mm低い。テールパイプは2本出しで、スポーツモデルであることを強調している。やる気満々なスタイルで、とても低燃費モデルには見えない。
しかし、公表されている燃費(JC08モード)を見ると、GTIの16.6km/リッター、TSIハイラインの19.4km/リッターに対して21.3km/リッターをたたき出している。これは、驚いたことにTSIコンフォートライン ブルーモーション テクノロジーの21.2km/リッターをも上回る数値なのだ。
2気筒を止めてガソリンを節約
低燃費の決め手は、ACT(アクティブシリンダーマネジメント)である。フォルクスワーゲン初の気筒休止システムのことだ。4気筒の1.4リッターターボエンジンのうち、ある条件のもとで内側の2番と3番を休止させる。これにより燃料消費とポンピングロスを軽減し、100kmあたり0.4リッターのガソリンが節約できるのだという。
運転席に座りエンジンを始動させても、ACTのことは一切意識にのぼらない。いつものポロであり、静かなアイドリングが続いている。ただ、内装はやはりGTIライクに仕立ててあり、下端部をカットしたスポーティーな形状のステアリングホイールが装備されている。シートは座面と背もたれの左右にブルーの素材があしらわれ、グレード名を体現している。座ってしまえば見えないので、過剰な演出感はない。機能的で快適なインテリアは、このクルマの大きな美質のひとつだ。
105psのTSIハイラインでも不足を感じなかったのだから、140psのパワーは十分すぎるほどだ。右足と加速との関係はナチュラルで、間然するところがない。GTを名乗る資格は間違いなく持っていると言っていいだろう。粘りのきいた軽やかな乗り心地も健在だ。それなりに硬いのだが、絶妙ないなし感がある。
高速道路を飛ばしていて、エコカー然とした感触はまったくない。料金所からの加速でもどかしさを覚えたり、思ったよりレスポンスが遅れたりということが一切なかった。最大トルクを見ると、パワーでは39ps上回るGTIとまったく同じ25.5kgmなのだ。燃費はどうなのかというと、メーターに示される数字は20km/リッターを維持している。高速道路を降りて一般道を走るとさすがに燃費は悪化したが、それでも16km/リッターを下回ることは一度もなかった。
「アクア」「フィット」に対抗
目玉の機能である気筒休止は、高速道路でも働いていた。100km/hでも、巡航していれば2気筒走行になる。切り替わる瞬間を感知することはできなかった。2→4も、4→2も、まったくもってスムーズである。資料によれば、エンジン回転数が1250~4000rpmでトルクが25Nm(2.5kgm)から85Nm(8.7kgm)の範囲内で作動するという。日本の交通事情では、高速道路で流れに乗って走っていればその状態が保たれる時間は長いはずだ。
一般道でも、気筒休止の出番は多かった。40km/hほどで走っていた時にごくわずかにアクセルに力を込めると、2気筒のまま加速していった。上り坂に行き当たった時に、アクセルをそのままにしてみた。すると、2気筒のままギアを落として速度を保って上っていったのだ。かなり積極的に2気筒状態を保とうとする設定になっているようだ。
極低速の場合、2気筒で加速するとほんの少しバイブレーションが感じられたこともある。かなり意地悪な目線で試したのであり、普通に運転している限り気づくことはないだろう。せっかくの機構が体感できずに、もったいなく思えるほどだ。メーターには「2 Cylinder mode」という文字が示されるだけで、とても奥ゆかしい。エコ運転にはげむドライバーを気持ちよくさせるためには、ビジュアライズしてわかりやすくしてもよさそうなものだ。
フォルクスワーゲンとしては、「トヨタ・アクア」や「ホンダ・フィット」を強く意識しているらしい。このクラスは2011年までは55~60万台だったのが、2012年には80万台へと大幅にマーケットが広がっている。ダウンサイジングの流れと、ハイブリッド機構による低燃費が好感されたことが原因なのだろう。そこに正面から対抗しようというわけだが、日本のハイブリッド勢は35km/リッター前後の燃費で170万円を切るプライスタグをつけている。数字だけ見ればとても戦えそうにないが、タフで優しいクルマに大きな魅力を感じる人も少なからずいるはずだ。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ポロ ブルーGT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1685×1485mm
ホイールベース:2470mm
車重:1170kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:140ps(103kW)/4500-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1200-3500rpm
タイヤ:(前)215/40R17 87V/(後)215/40R17
87V(ダンロップ SP SPORT MAXX)
燃費:21.3km/リッター(JC08モード)
価格:263万円/テスト車=297万6500円
オプション装備:Volkswagen純正ナビゲーションシステム712SDCW+DSRC車載器+VTRケーブル及びUSBデバイス接続装置(22万500円)/バイキセノンヘッドライト(12万6000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:2106km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:310.9km
使用燃料:19.3リッター
参考燃費:16.1km/リッター(満タン法)/17.1km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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