第21回「軽自動車の進むべき道とは?」
2013.10.25 水野和敏的視点派生車種の「乱造」を見直すべき
過去数回にわたり、「ダイハツ・ミラ イース」「ホンダN BOX」「ホンダ・フィット」、そして「フォルクスワーゲンup!」と、軽自動車と小型車の代表的なモデルを取り上げてきました。最新の軽自動車に乗ってつくづく感じるのは、軽がすでに「日産マーチ」「トヨタ・ヴィッツ」といった小型車の領域と重なり始めているということです。室内空間や装備だけでなく、乗り心地とハンドリングもそうですし、価格もそう。今では法規上、高速道路を100km/hで走ることだってできる。あらゆる領域で重なってきているのです。「軽自動車だから」とか「小型車だから」といった線引きが、どんどん意味をなさなくなっています。
では、軽自動車は今後どうなるのでしょうか? 売らんがための多車種戦略を採り続けていくなら、残念ながらグローバルな商品としての進化は、本質的な意味でこれ以上「ない」と思います。
次から次へと派生車種を市場に投入するものだから、開発部門と生産部門はクルマをつくることだけで手一杯。玉成が不足していて、クルマがまるで使い捨ての消耗品になっている気がします。
これから軽自動車を世界のマーケットでグローバルに展開しようとしたら、今のままではだめでしょう。少なからず、クルマづくりを見直す必要があると思います。
新興国において、価格の安さだけで勝負しようというのなら話は違います。かの地では、まずは価格の安さと実用性、耐久性がメインで求められている状況ですから、今のままでも十分需要に合致しています。
そうではなく、ヨーロッパやアメリカできちんと収益を出して、市民権を得た商品としてやっていくのであれば、クルマづくりの見直しは避けられません。軽自動車にとって、欧米はこれからのマーケットとして非常に高い可能性を秘めているものの、商品として雑な部分がこれを阻むでしょう。
また、日本の軽自動車や、そこから派生した小型車には、いわば「エコロジーの旗手」という道があるのはすでに認知されていますが、もうひとつ、決して忘れてはならないのが、世界中が直面している「高齢者対応」です。
これは小型車を「自動車車いす」とでもいいますか、高齢者の方々のための「生活圏の中でのクルマ」として捉える考え方であり、それぞれの方々の、それぞれの状況にあった自動車を提供しようとするものです。日本の軽自動車にはハッチバックあり、ワゴンタイプあり、2WDあり、4WDありと、さまざまなバリエーションが存在しますから、この要請にはぴったりなのです。現にフォルクスワーゲンup!は、クルマのつくりなどを見ても、このマーケットを相当意識して開発されたモデルだと思います。
電車やバスなどの交通インフラ基盤が脆弱(ぜいじゃく)なヨーロッパやアメリカで、高齢者問題や環境問題に対応したクルマとして販売する道を探ってみてはどうでしょうか。
そのためにも、とにかく派生車種を乱発して、それなりの出来のクルマを店頭に並べる姿勢を見直す必要があります。欧米の市場要件、特に走りやしっかり感や質感を満たす、クルマづくりの本質の変化が必要です。
この記事は会員限定公開です。webCGプレミアムプラン会員に登録すると<月額550円(税込)>、続きを読むことができます。
登録初月無料! | クレジットカードで会員登録いただくと、ご契約いただいた日からその月の末日までが無料になります。いつでも解約可能です。 |
---|
- 毎月20本以上、新型車の試乗記が先取りで読める!
- 人気のさまざまな連載エッセイも、いち早く読める!
- 100車種超! 「谷口信輝の新車試乗」がぜんぶ読める!
- あの漫画家・池沢早人師の特集記事も堪能できる!
- 頭脳派レーシングドライバー山野哲也の車評が分かる!
- 『日刊!名車列伝』で世界の名車に毎日触れられる!
- 自動車メーカー関連グッズのプレゼントに応募できる!
- 話題のニューモデルのアツい走りが動画で見られる!
-
スズキ・ワゴンRカスタムZハイブリッドZX(FF/CVT)【試乗記】 2022.12.14 試乗記 軽ハイトワゴンの元祖「スズキ・ワゴンR」に新グレード「カスタムZ」が追加された。「え、ワゴンRにカスタムってなかったの?」という印象だが、ともあれ現行型デビューから5年目で加わった新顔である。自然吸気エンジン搭載の「ハイブリッドZX」を試す。
-
-
スズキが「アルト」「スペーシア ベース」「クロスビー」など5モデルに一部仕様変更を実施 2023.11.20 自動車ニュース スズキは2023年11月20日、「アルト」「アルトラパン」「アルトラパンLC」「スペーシア ベース」「クロスビー」の一部仕様を変更し、アルトとクロスビーを同年12月13日、その他のモデルを同年12月21日に発売すると発表した。
-
ホンダが新型コンパクトSUV「WR-V」をオフィシャルサイトで先行公開 2023.11.16 自動車ニュース 本田技研工業は2023年11月16日、同年12月に発表予定の新型コンパクトSUV「WR-V」に関する情報を、同社のオフィシャルサイトで先行公開した。WR-Vは200万円台前半からの価格設定で、2024年春に発売される予定だ。
-
マセラティ・グラントゥーリズモ トロフェオ(4WD/8AT)【試乗記】 2023.11.15 試乗記 2代目に進化したマセラティのラグジュアリー2ドアクーペ「グラントゥーリズモ」が上陸。最高出力550PSを誇る新しい3リッターV6ツインターボ搭載の高性能モデル「トロフェオ」に試乗した。伝統的なイタリアンGTカーの仕上がりやいかに。
-
米シンガーがピカピカにレストアした「ポルシェ911」が日本初上陸 2023.11.10 自動車ニュース ディーラー業を手がける永三MOTORSは2023年11月10日、Singer Vehicle Design(シンガー)がレストアした「ポルシェ911」の国内第1号車を初披露した。約8000万円からという高額な料金ながら、補修のレベルを超えた高品質な仕上がりを持ち味としている。