ホンダ・アコード プラグインハイブリッド(FF)
ここから反撃が始まる 2013.11.06 試乗記 充電機能を備えた「ホンダ・アコード プラグインハイブリッド」に試乗。プラグインハイブリッドならではの可能性と、今後の課題を探る。システムの核はハイブリッドと一緒
ハイブリッド車(HV)の戦略で、長らくトヨタの後塵(こうじん)を拝してきたホンダが、怒濤(どとう)の反撃を開始した。その大将が新型「アコード」、特にプラグインハイブリッド車(PHV)だ。現時点で選べば、新時代ビッグセダンの最高峰かもしれない。そのうえで、先代アコードの大きさだったら理想的というのは、無いものねだりだろうか。
全長4.9m以上まで大型化してしまったのは、「インスパイア」(生産終了)と一本化したため。北米市場での高い人気を考えれば仕方ないかもしれない。そんな新型アコード、取りあえず基本は「ハイブリッド」(365~390万円)だが、今回ここでは「プラグインハイブリッド」に注目。500万円と高価だし、まだ一部の法人向けリース販売のみだが、これから訪れる時代を見据え、ホンダの志が濃~く表れているからだ(年末までには一般向けのリース市販も始まるといううわさあり)。
HVもPHVも、シリーズハイブリッドという方式は共通。もっぱらモーターが車輪を駆動し、エンジンは基本的に発電に専念する。さらに外部のコンセントから充電できるPHVは実用走行でエンジンを働かせない場面が多く、実質的にはレンジエクステンダーEVともいえる。高速巡航などではエンジンも楽々と仕事ができるし、モーターの高回転トルクも細くなるため、裏で直結クラッチがつながって臨時のエンジン車にもなるが、あくまで例外。変速機がない、つまりエンジンとファイナル(デフ)が直結ということは、普通の5速か6速のレシオしかないわけで、だいたい70km/h以下では役に立たないのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
街乗りだけならほぼ電気自動車
そんな電気アコードの走りの良さや快適さはすでに広く伝えられているが、それに輪をかけるのがPHVの超々々々低燃費。あらかじめ外部から満充電して走りだし、バッテリー残量が20%ほどまで低下してから普通のHV走行に移るパターン(国交省が特に定めるPHV燃費算出法)では、なんと70.4km/リッター(!)まで伸びる。普通のHV走行(基本的にモーター、時々エンジンが気付いて発電)でも29.0km/リッター。まったく燃費など意識せずバンバン乗り回して試したら、渋滞でも郊外でも高速道路でも、だいたい25~27km/リッターが普通だった。
JC08モードでの電力消費率は9.26km/kWhだから、計算上は車載のリチウムイオン電池(基本のHVより大きい6.7kWh)だけで60km以上は走れ(JC08モードでのEV走行距離は37.6km)、普通の実用でも30kmは純EVとして行ける。ちょっと駅まで来客を迎えに行く、ショッピングセンターに立ち寄る、子供を保育園に送り届けるなど地元中心の移動だけで、帰るたびにコンセントにつないでつぎ足すパターンなら、何カ月もエンジンを眠らせたままになるかもしれない。
そうするとオイル・ドライ状態が心配だから、だいたい3カ月ほどで自動的にかかるのがPHV界の常識だが、その点よほど自信があるのか、ホンダの担当者は「へえ、そうですかねえ」と平気な顔だった。
バッテリー空っぽから満充電まで、200Vなら約90分、別売りの100V用コードを使ったら260分で完了。充電状態のチェックだけでなく、夜間割引電気料金を利用するための充電時間遠隔操作もスマホ経由で可能。また、トランクに収納できる外部給電器(別売り)に接続し、エンジン発電も併用すると、AC100Vの家庭用電力を27時間も供給できる。定格出力3kWといえば、照明や炊飯器はもとより冷蔵庫も使える。災害時に診療所の救援に駆けつけるなど、社会的な意義も大きい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
乗用車としての基本ができている
ただし、外部から充電可能とはいえ、各地に増えつつある急速充電器は使えない。「バッテリー残量が低下しても、まだまだガソリンで経済的に走れます。そんなアコードPHVが堂々と急速充電器を占領するなんて、これからEVが普及しそうな世の中で、どうかなあと思いますよ」と開発責任者は語る。PHVにはPHVらしい立ち居振る舞いがあると主張しているわけだ。
こんな超々々々低燃費も絶大な特長(美点)だが、それを味わえるのも、クルマとして上出来だから。優雅な姿からは想像しにくいほど骨格感がたくましく、それと悠然たるシャシー性能がみごとに融和している。路面の小さな凹凸など柳に風と受け流し、ガツンと来そうな瞬間だけ減衰力の高まるダンパー、しっとり快く手応えの的確な電動パワーステアリング、踏み込みの深さより踏力でコントロールする電動サーボブレーキの繊細なタッチなど、乗れば乗るほど成熟を痛感させられる。質感の高いダッシュボードまわりをはじめ、インテリアの雰囲気も豊か。ボディーが大きいだけに着座スペースも余裕たっぷりなら、ウィンドウとウェストラインの兼ね合いも適切なので、柔らかく囲まれた安心感と適度な見晴らし感も両立している。運転して良く、乗せられて良しという乗用車の基本が、誰にとっても好ましいクルマとして集約されている。
ただ一つ惜しいのは、充電機構を後席の背後に搭載したため、HVにくらべてトランクスペースが限られてしまったこと。ゴルフバッグのフルセット3~4個は積めるというが、床面の奥行きが60cmほどしかなく、大きなスーツケースには向かない。こういう機器類の小型高効率化が今後の課題だろう。
日本の高級ビッグセダン界では「レクサスLS」「クラウン」「シーマ」あたりが主流を占め、ともすると日陰に甘んじてきたホンダだが、新型アコード(特にPHV)は、一気に劣勢挽回の機運を秘めていそうだ。
(文=熊倉重春/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
ホンダ・アコード プラグインハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4915×1850×1465mm
ホイールベース:2775mm
車重:1740kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:143ps(105kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:16.8kgm(165Nm)/3500-6000rpm
モーター最高出力:169ps(124kW)/3857-8000rpm
モーター最大トルク:31.3kgm(307Nm)/0-3857rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94V/(後)225/50R17 94V(ダンロップ・エナセーブ050)
燃費:70.4km/リッター(プラグインハイブリッド燃料消費率)/29.0km/リッター(ハイブリッド燃料消費率)
価格:500万円/テスト車=500万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3570km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:179.5km
使用燃料:7.9リッター
参考燃費:22.7km/リッター(満タン法)/23.0km/リッター(車載燃費計計測値)

熊倉 重春
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。





























